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三題噺もどき2

食器洗い

作者: 狐彪

三題噺もどき―さんびゃくごじゅうご。

 


「……ねむ」

 手だけは動かしながら、漏れた本音。

 時間も遅いので、あまり音を立てないよう気を配ってはいるが。

 果たしてこれに意味はあるんだろうか……。

「……」

 狭いキッチンの中。

 1人分、2食分の食器を洗っている。

 料理をするのはそれなりに好きなうえ、食事はしっかりと、と言われて育ったので、量がある。1人分ではあるので、小皿とかで済ませはしているが。

 後は普通に皿洗いが嫌い。気にする質ではないが、手は荒れるし、におうこともあるし。

「……」

 小さく衝突音を慣らしつつ、泡にまみれていく食器たち。

 あーホントに皿洗うのめんどくさい。

 昼は外で食べるので、朝と夜の2食分。

 朝はどうしてもギリギリまで他の事をしてしまうから、洗う時間がない。……いやまぁ、それはどうにかすればいいんだけど。

 まぁ、だから単純に。皿洗いという嫌いな作業を朝からしたくないと言うだけで。

 それで、夜にこの量洗ってたら意味はない気がするが。

「……くぁ……」

 別にいいのだ、1人暮らしだし。

 明日まで溜めようとしないだけえらいと思っている。

 えらい、自分。嫌いな皿洗いしてえらいなぁ……。

 ―はぁ、ばからし。

「……」

 泡にまみれた食器が手から滑り落ちないように注意しつつ、次々と洗い重ねていく。

 水で流すのは後で、纏めてだ。

 1人暮らしを始めたての時に、流しっぱなしにしていたら阿保みたいに水道代がかかったので。

「……ぁ」

 んー。ホントにねむ。

 さっさと終わらせて寝てしまおう……。

 帰宅がそれなりに遅かったせいで、今はもう深夜近くの時間なのだ。

 そりゃ眠くもなるだろう。

「……ふぁ…」

 止まらないあくびを漏らしつつ、静かに洗っていく。

 しかし量おおいなあ。こんなに使っただろうか今日……。

 せいぜい1食、小皿を含めて5皿程度のはずなんだが。それ2食分でも10皿。

 だと言うのに、なかなか終わらない。

 眠すぎて実はたいして動いてないのか…?

 のろのろ洗っていれば、そりゃ時間はかかるだろうけど。

「……はぅぁ…」

 部屋の中はしんとしている。

 食器のぶつかる音と、時折聞こえる秒針の音。

 あいにくテレビは見ないので、そもそも設置すらしていない。

 パソコンはとじたまま、机の上で眠っている。

「……っぅ」

 何度目かのあくびを噛み殺し。

 終わらないなぁと、ぼうっと思い。

 もう面倒だし明日にでもしようかなぁと。

 ここまでしておいて、意味の分からないことを考えはじめ。


 ピンポーン


「!!!!」

 突然、チャイムが響いた。

 勢いあまって、手に持っていた食器を思いきり落とした。

 おかげで、中に人が居ることもバレたし、皿を1個失った。

 置いてあった他の皿も、1,2個欠けてしまっている。

 ……なんだこんな時間に。

「……」

 眠気すら吹き飛んだ。

 一体何なのだ、こんな夜中に。

 誰が何のようでチャイムを鳴らしたんだ。

「……」

 時計をちらりと見やると、針はどちらも真上を指していた。

 いや、ホントに、こんな時間になんだ。非常識にも程があるぞ。

 配達なんてこの時間にしていないだろうし、というか何かものを頼んだ記憶はない。デリバリーも同じに、そも自炊するので頼むことなんてない。

 隣人が間違って押しでもしたのか?


 ピンポーン


「……」

 もう一度チャイムが鳴る。

 いるのは分かっているんだから、早く出ろとでもいうように。

 こんな時間に、非常識なこの時間に。

 ……はぁ、仕方ない。

「……」

 軽く手を洗い流し、玄関へと向かう。

 ここにモニターでもあればいいのだが、あいにくボロアパートでそんなものはない。

 確認は、のぞき窓からするしかない。

「……」

 やけに悲鳴を上げる短い廊下を進む。

 数歩で玄関にはたどり着く。

 なんとなく、息を殺し、そろりと扉に近づく。

 小さな窓の蓋を持ち上げる。

「……?」

 なにもなかった。

 誰もいなかった。

 見慣れた玄関の外のコンクリートの通路があるだけ。

 ここは2階なので、柵も取り付けられている。

 ……ホントになんだ。

「……」

 そろりと玄関のカギを開け、扉を押し開く。

 頭だけを出して、周りを見渡してみるが……何もない。

 誰も、

 何も


「―――は?」


 突然、視界が。

 赤く染まった。

 建物全体が、視界全部が、赤く、熱く。

「―――」

 ぼうぼうと音を立てるその赤は。

 どこからか、炎が上がっているのだと教えていた。

「―――」

 突然のことで、悲鳴も上がらず。

 ただ茫然と立ち尽くしてしまっている。

 炎は徐々に自分の部屋まで迫ってくる。

「―――」

 それでも動けない。

 それでも動かない。

 体に。

 思考に。

 いらだちを覚え始め






「………あつ…」

 被っていた布団をはぎ取り、床に落とす。

 寒いからと引っ張り出してきた毛布のせいで、無駄に体温が上がっている。

 まるで全身燃えているような感覚だ。

 暑い……暑すぎる……。

「……」

 ぼうっと天井を見上げながら、体を冷やしていく。

 あ―今何時だこれぇ……。







 お題:チャイム・炎・非常識

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