表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/39

【アーカイブ8】 魔王を調教!!




「さぁ魔王様、まずは僕と動画を作りましょう!」


「うむ、よろしく頼むぞ!」



 ギーシュとマオは固く握手を交わした。

 次いでに逃がさんと言わんばかりに、ギーシュはマイヤとセバスニャンの2人にも声を掛ける。



「セバスニャン様とマイヤさんも手伝って貰いますので、よろしくお願いしますね?」


「ぼくは面白そうだしOKっすよ!」


「私も出来る限り尽力致しましょう」



 2人は快く受け入れた。

 協力者も得た事で、早速作業に入る。



「魔王城の居住スペースに、空き部屋ってまだありますか? 出来れば窓の無い部屋が良いです」


「私がご案内しましょう。

 条件に当てはまる空き部屋が幾つかございます」



 何と都合がいい事だろう。

 セバスニャンの案内の元、愉快な仲間達は件の部屋へ。



 ◇



 その部屋は結果的に言うと、とても良かった。

 日が差さず、近くの部屋に人も居らず、何より壁がそのまま背景に使えそうな程オシャレな物だった。

 1つ気になる点をあげると、



「くっっそ広いですね!」


「声めっちゃ響くっすよ! わー!」



 マイヤが大声をあげると、短い感覚で重なり、び〜んと震えるような『わー!』が帰ってくる。

 部屋に物が置いてないからか、声がクリアに響く。



「さて、ここを撮影スタジオに変えちゃいましょう!

 まずは部屋の一部を、配信で映すだけの空間に仕切りを設けてですね──」



 ギーシュは指示を出しながら、テキパキと物の配置を決めていく。

 広い部屋の隅に仕切りを幾つか置き、孤立した空間を作り、その空間内を覆い尽くすように緑色のカーテンを貼り付けた。



「なんでわざわざ緑色カーテンを付けるんだい?

 もっと可愛い色や柄の物もあっただろうに」


「これはですね、後から動画を編集する時に背景を後付けしたりするのに便利だからです。

 実際にやった事は無いので、今回は使用感を確かめる目的ですね」



 ギーシュが以前に何処かで聞き齧った情報で、緑の背景は幻影魔法が反映しやすいという物だ。

 確証は無いが、試す価値は有る。

 最初だからこそ色々試してみたい思いがある。



「ぼくが魔王様の動画に付けたダメポイント、その4を覚えてますよね?」


「撮影方法だったね……どうすれば良いんだろうか?」


「まずは録画媒体の水晶球ですが、これを使う時は筒の中に入れて、筒の前と後ろしか映らないようにしておきましょう。

 都合が良い筒がない時はこうやって黒い紙を巻いて、筒状にして糊付けすれば……はい完成!」



 完成した物を、先程作った空間全体を映せる場所に配置し、いよいよ準備が完了する。

 ただ、残った問題があと1つ。

 部屋が広すぎる故に起こる声の響きだ。



「そこで、実家から持ってきたコイツを使います!」


「なんっすかそれ? でこぼこした……スポンジ?」


「これは()()()です。

 これを壁のあちこちに貼り付けて、声の響きを極限まで小さくします。

 という訳で──」



 吸音材を笑顔でマイヤとセバスニャンに手渡し、言外に「やってね?」と頼む。



「セバスニャ〜ン、後輩の人使いが荒いっすよ〜!」


「良いでは無いですか。いつも暇だ暇だと言ってゴロゴロするより、よっぽど有意義ですよ?」


「わー、ぐぅの音も出ないっす……」



 ぶつくさと文句を垂らすマイヤだったが、なんだかんだで楽しそうではあった。

 部屋の4面に天井まで、ギーシュが持ってきた全ての吸音材を貼り終えた。



「わー! ……おお、『わー!』が響かないっすね!」


「効果があったようで何よりです!

 あの頃に調子に乗って買い過ぎた当時の僕を、今は褒めてあげたい気分ですね」


「これで準備が整ったのか?

 いよいよ、動画を撮るのか?」



 マオがそわそわとギーシュにを急かす。

 その紅蓮の瞳は好奇心で爛々と輝いている。



「その前に魔王様、まずはもっと()()()しませんか?

 なんて言うか、普段の魔王様が残り過ぎてるんですよ」


「そりゃ、我は我だしな……」



 腕を組んで首を捻る。

 離魂体(ドッペルゲンガー)の特性上、身体は自由に作り替えられるが、マオの心は男性寄りなので、正直どうすればいいかが分からない。



「と、言う訳で……可愛いのスペシャリストを、さっき通信魔法で呼び出しちゃいました」



 ギーシュが知る中で、暴力のような可愛さを持つ人物。



「アタシが来た!! カルルも一緒だぞ!」



 やってきたのは半獣人(ハーフビースト)の2人、クララとカルルである。



「ドラゴンのお兄ちゃん! 久しぶりー!」


「カルルちゃんお久しぶりです!

 惜しいけど、お兄さんはドラゴンじゃなくて、竜人族(ドラゴニュート)なんだよね」



 そんな事は気にせず、ギーシュ尻尾に抱き着いてよじ登ろうとするカルル。

 いつの間にこんなに懐かれたのやら。



「で、アタシは何で呼ばれたんだ?」


「クララ嬢を主軸に皆さんで、魔王様を可愛く調きょ……

 生まれ変わらせて欲しいんです!」


「ねぇ、今調教って言いかけた? 我の聞き間違い?」



 マオが痛い所を突いてくるが、実際やる事はそれに近いので華麗にスルー。

 ギーシュは事のあらましをクララに説明し、彼女もそれに納得していた。



「よし! まずは魔王様、取り敢えず可愛い仕草をしてくれねぇか?」


「うむ、任せよ! うっふん♡」



 両膝をくっつけたまま片方の膝を曲げ、左手は腰に、右手は顔の前で手の平を上にして、顔は何かを吹き飛ばすようなキス顔。ご丁寧にウィンクのオプション付きと来た。

 もちろん、分かる者の総評はこうだ──。



『古っっっる!!』


「んなっ!?」


「つぁ〜、こりゃ思った以上にひでぇな!」


「そこまで酷いの!?」


 

 マオはショックで肩を落とし、内股も極まって膝が床に着きそうになっている。



「と言う訳で、最新の可愛いを勉強(インプット)してください!

 はい、ここで一人一人の可愛いを発表!

 最後に魔王様なりにアップデートした可愛いを披露してもらいますからね!」



 宣言と共にギーシュは手始めにマイヤを指差す。



「えぇっ! ぼくから!?

 う〜ん……アハッ! って爽やかな笑顔……とか?」


「まぁいいでしょう、次!」



 困惑しながらもギーシュの無茶振りに応えた。

 次に指名されたのはカルル。



「わふー! 両手でピース! 可愛いよ!」


「次アタシ! 照れた感じで、えへへぇて笑うとキュートだぞ! アタシもたまにやる!」


「そういうの! そういうの頂戴もっと!!」



 流れからして次は自分かと身構えるはセバスニャン。

 自分が発言するのはマズイ──。



「では次、セバスニャン様!」


「っ! にゃ……にゃんにゃん♡

 では、ダメでしょうか?」


「セバスニャン様ならではって感じですね!」



 バリトンボイスの良い声で発された、にゃんにゃん。

 ギーシュの反応から、セバスニャンは何とか誤魔化せたかと安堵する。

 下手をすると、今のマオが言う可愛いの基準が自分だとバレてしまう。


 そこからは、皆も盛り上がって来たのか、各々が可愛いを出し合う。



「上目遣い!」「てへぺろ!」「指ハート!」

「紅潮した頬!」「肉球」「あっかんべー!」


「おお、いっぱい出てきましたね!!

 さぁ魔王様、これを踏まえてどうぞ!」


「えっ!? そんなにすぐにかい!?」



 魔王困惑。そして、あろう事か思ってしまった。

 さっきまでのを良い感じにブレンドすれば、それなりに可愛いのでは? その結果──。



「あ、アへぇ♡……///?」



 『アハッ』+『えへへぇ』+『にゃんにゃん♡』がもたらした魅惑の方程式。

 上を向いた黒目は上目遣いのつもりだろうか?

 口は笑顔だが、舌がぺろっとお外へこんにちは。

 恥じらいからか紅潮した頬。

 仕舞いには両手で顔の横にピースサイン。



「やめろやめろ! R18(年齢制限)だそんなもん!

 ア○顔(ダブル)ピースなんぞ今時流行らんわ!!

 何をどうしたら、そうなったんですか!?」



 ギーシュはカルルの目を塞ぎながら訴える。

 それはそうだろう、誰がどう見てもアレはギーシュの言うソレでしかない。


 笑い転げるマイヤ、訳が分からないカルル、ドン引くクララ、憐れむセバスニャン。

 そして誰よりも頭を抱えるギーシュ。



「まさかこれ程とは……

 いっそ今までのがマシまであるか?

 いや、でもなぁ……よし」


「……?」


「クララ嬢、徹底的にお願いします!

 付け焼き刃でいいのでガッツリ頼みます!」


「おぅ! 任せとけ!!」


「っ!!?」



 こうしてクララに全てを委ねた。



 ◇



 あれから数十分後、クララの調教も終わり、そんなこんなでようやく撮影が開始された。

 ちなみにセバスニャンは、夕食を作りに逃げるように厨房へ行ってしまった。



「それじゃ、まずは挨拶から行きましょう!

 なるべく水晶球の向こうには、リスナーさんがいると思ってくださいね!」


「…………」



 3……2……1 とカウントし、録画を始める。



「まおっす〜!! 皆さん初めまして!

 今日から『ご当地魔王』として、皆が見てるこの動画配信アプリ『MgTune(マギチューン)』から、この世に元気と笑顔を届ける美少女魔王マギチューバー、マオちゃんだよ!


 まだ知られてない魔王都市のあんな場所やこんな場所、美味しいお店なんかも、た〜っくさん紹介しちゃうから、みんな覚悟しててよね☆」


「はい、カット〜!

 めちゃめちゃ良くなってるじゃないですか!」



 なんと言う事でしょう!

 クララの調教は大成功だったようである。

 マオは尊厳や羞恥心を犠牲に、可愛い女の子の精神を手に入れた!!



「出だしの挨拶は完璧だったので、他の所も撮っちゃいましょう!

 何個も撮った動画を編集して、1つの動画に仕上げるので、素材がもっと欲しいんですよ」


「まっかせて☆」


「(クララ嬢! これホントに魔王様なんですか!?)」


「(アタシも正直やり過ぎたとは思ってるぜ?

 まぁ反省はしてないけどなぁ!)」



 別人と言っていい変貌ぶりにギーシュも不安になる。

 しかし、こと撮影においては都合が良い事この上ない為、続行一択である。


 撮影は取り直すことも無く、順調に進んだ。

 身長、体重、好きな物、夢など、色んなプロフィールを紹介する動画を撮った。



「いやぁ〜! お疲れ様です魔王様!

 ここからは僕が良い動画を編集してみせます!

 そして魔王様には、サムネを改めて作ってもらいます」


「うむ、アドバイスはその都度お願いする!」


「勿論です。分からないことがあれば、いつでも!」



 こうしてマオとギーシュの2人だけが部屋に残り、黙々と作業を進める。



 ◇



 数時間後、気付けばすっかり日も落ちて、辺りも暗くなり始めていた。



「ギ、ギーシュ君……これでどうだろうか?」


「確認します!」



 渡されたサムネに目を通す。

 先程撮影した動画を切り取った画像を使いつつ、周りに散らした言葉もギーシュのアドバイスを元に作成しているので、何も問題は無かった。



「サムネはこれで良いと思います!」


「おお!! 後は君の動画編集だな!

 焦らず、ゆっくりでいいからな?

 無理が良くない事を、我は知っているからな」



 無事にサムネイルは完成した。

 残るははギーシュの動画編集だけだ。



「あと少しですので、もう少し待ってください!

 必ず良い動画に仕上げますので……」


「ギーシュ君、ありがとうね」


「お礼なんていいですよ! 僕、昔に諦めた自分の夢を追えてるみたいで今、とても楽しいんです!」



 ギーシュはいい笑顔で答える。

 彼もまた、過去に配信者を目指していたのだ。

 夢への憧れはある。



「あと少しで完成ですので……」



 ギーシュは血眼になって、動画編集を続けるのであった。




読んでいただきありがとうございます!!


ブックマークや評価が増えてくれると嬉しいな……


どうか御協力お願いします!!


次回、いよいよ配信者デビュー??

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] みんなで苦心して作り上げていく様子がリアルに伝わってきました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ