【アーカイブ33】 セバスニャンの過去
更新が遅くなり、ごめんなさい!!
(_;´꒳`;):_
魔王配下の過去編、お楽しみください!
時は大戦時代まで遡る。
魔族と人間が睨み合い、目が合えば殺し合いが始まる、そんな時代の真っ只中。
数ある戦争の激戦区、その最前線には猫がいた。
「人間風情が俺の結界を破れる訳ねぇだろ!!
舐めてんのかオラァ!!?」
口汚く敵を罵り、敵味方関係無く怒涛の広範囲攻撃で巻き込むこの猫の名をセバスニャン。
作り出す結界術の圧倒的堅牢さから、いつしか人々は彼を『移動要塞』などと呼び始めた。
「恐れず突っ込め!!!
相手は猫1匹だ! 恐るるに足らず!!」
『ウォォオオオオオオ!!』
幾万の人族を統率する指揮官らしき人物の激励の受け、多くの人族がその者の背を追って駆ける。
人族の繁殖能力は高く、魔族と比べると数千倍近くの兵がいる事だろう。
しかし、魔族は個々の質が一騎当千。その中でも当時、群を抜いてその最強格を担っていたのが、彼らが掛けて行く先で暴れ狂う猫なのだ。
「勝てねぇと分かっても、無様に向かって来る根性だきゃあ認めてやる!
俺も応えてやんよ!『第五式・守護結界』展開!!」
セバスニャンが展開した第五守護結界。
それは第一から第四までとは異なり、護りの手段を攻撃として転用した型である。
その中でも第五式は、より広範囲の敵を殲滅するのに適している。
「堕ちろ! 蹴散らせ! 踏み潰せ!!」
セバスニャンは手を振り下ろし、それに応じて上空に展開された巨大な結界が──堕ちる。
「第五だァア!!! 穴を掘って回避せよ!!!
奴の結界は地形や自然に影響を及ぼせない!」
人族の指揮官の命令により、多くの兵が難を逃れた。
しかし、それでも何百の兵は結界の下敷きになり、見るも無惨に潰される。
勿論、多くの魔族もそれに巻き込まれ命を落とした。
その惨状を目にした人物が一人、怒りを顕にセバスニャンに喝を入れる。
「ぶぁっっかもぉぉおおおん!!!!」
「痛っっっでぇ!!!?」
セバスニャンの背後から彼の後頭部に、この世で最も重いと称される一撃がお見舞いされた。
細身で魔法戦特化の者が多い純魔族の異端者、身に纏うシャツがはち切れん程に筋骨隆々の完全武闘派な体躯。
赤く鋭い眼光と頭から伸びる剛角は、生きとし生ける者に畏怖の感情を呼び起こさせる。
それは当時の魔族の王、覇王と呼ばれた豪傑。
魔王ガンデュラ、その者である。
「味方諸共ぶっ潰す馬鹿があるかァア!!」
「るっせー!! 弱ぇ奴が悪ぃ!
そういうご時世だろうがよ!!?
弱けりゃ何を奪われても文句は言えねぇ!」
「まったく……前線に活きが良いのがいると聞いて来てみれば、とんだじゃじゃ馬……いや、猫がいたもんだ……」
「あ"ぁ!?」
「とにかく!」
魔王はセバスニャンの首根っこを鷲掴みにし、連れて行こうとした。
しかし、そう容易く従う猫ではない。
身を翻して何とか抜け出し、魔王と対峙する。
「誰がノコノコと連れていかれるか!
不意打ちでさえなけりゃ負けねーよ!」
「ブァッハッハ! 口だけは一丁前だな。
どれ、ちょいと灸を据えてやろう……」
魔王はため息を吐きながら、その拳をゆっくり固める。
握った拳を振りかぶり宣言した。
「一撃だ! 我はこの一撃でお前を制す!
貴様の結界術をもって全力で防いでみろ!
防げば不問! 防げねば折檻だ!」
「一撃だと? 舐めてんのかジジイ!!?
だがいいぜ、受けて立ってやらァ!!」
このやり取りの中、魔王ガンデュラが拳を構えたのを観測した人族の指揮官は、いち早く危険を察知して全軍を引かせた。
そもそも魔王が現れた時点で、戦況などと言っている場合では無い。
これからこの場は壊滅するという、本能の警鐘に従って全力で逃げた。
「ほれどうした? 結界を張らんか」
「言われなくてもやってやるよ!
『第一、第三式・守護結界』同時展開!!」
セバスニャンの体の周りに薄い膜のような第三守護結界、そして前に突き出した両手の前には板状の第一守護結界が展開された。
「まだまだこんな物じゃないぜ!
『第一式・守護結界』多重圧縮展開!!」
幾重にも重なり合った板状の結界が更に圧縮され、本来透明であるはずの結界が視認可能なまでになる。
「もう終わりか? であれば行くぞ!!
─────死ぬなよ?」
振り抜かれる拳。
何の変哲も無い、魔法の1つさえ使用していない、ただの力任せの拳骨。
しかしそれでいい。それだけでいい。
その拳を振り降ろす動作1つで大地が、大気が揺れた。
「ぐぉっっ!!?
こんの……でたらめジジイがァァ!!」
何とか魔王の拳を受け止める事は出来た。
ただ、セバスニャンの野生の勘が告げる。
この攻撃は耐える事が出来ない。
「ぐぅぅぁぁ……!!!
クッソがぁぁああ!!!」
セバスニャンの必死の抵抗も虚しく、結界の端々に幾つもの亀裂が走り、今にも砕け散る寸前だった。
「お前の守護結界は確かに強固だ。
だがな! 貴様の様な利己的な結界など、粗悪な硝子板と同じだァァア!!」
程なくして結界は粉々に砕け散った。
勿論、勢いの惰性で拳はセバスニャンの顔面に深くめり込み、そのまま彼は意識を刈り取った。
◇
あれから数日後、ようやく目を覚ましたセバスニャンは、自身が包帯でぐるぐる巻きにされている事に気付き悶える。
「ンン! グムムゥ!!」
「ぅおっ! ようやく起きたか寝坊助猫!
どれ、包帯を取ってやろう……噛むなよ?」
「……っぶはぁ! こんのバケモンジジイめ……
……………………俺の負けは負けだ!
煮るなり焼くなり好きにしやがれってんだ!」
「相変わらずの減らず口だな……
ではお望み通り、お前に命じてやろう」
処刑だろうと何だろうと聞き入れてやると、固く覚悟を決めるセバスニャンとは裏腹に、とても楽し気な顔で魔王は告げる。
「お前、魔王配下になれ」
「…………はぁ?」
「まだ若い癖に聞こえなかったか?
我直属の配下になれ、と言ったんだ」
「頭おかしいんじゃねぇか??」
魔王の正気を本気で疑うセバスニャン。
しかし、当の魔王は大真面目であった。
大戦時代における魔王配下が意味する物、それは人族に対する絶対的な恐怖の象徴。
セバスニャンにならそれが務まると考えている。
「魔王なんて物はな、魔族の中でもぶっちぎりで頭がおかしい奴がなるもんなんだよ。
で、なってくれるんだよな? お?」
「ぅぐ……分かったよ、やりゃ良いんだろ?
具体的に俺は何すんだ?」
「それについては心配する事は無いぞ。
然るべき時に戦地へ赴くだけだ。
ただ、お前の性根と口の悪さは叩き直させて貰うぞ?
我の品格的なのが問われるからな」
「はっ! そう簡単にゃ治らねぇからな?」
もう2~3個恨み言でも言ってやろうかとするセバスニャンだったが、魔王はそれを遮り、と部屋の外へ呼び掛けた。
病室に入って来たのは3名の魔族の女。
「あ? なんだコイツら?」
セバスニャンの一言で表情こそ変わらないものの、3人のこめかみには青筋が浮び上がる。
「この生意気な小童が、魔王様が仰っていた新しい魔王配下ですので?」
「まぁそういう事だ!
ただ、見ての通りだからな……お前達にはこいつの教育をしばらく命じる。
ペイル、シュメラ、ドローレ、出来るな?」
『御意に』
「痛っった!? 離せ! ヴニャー!! あ……」
魔王の命と共に、3人の先輩魔王配下達は仮面のような笑顔を貼り付け、セバスニャンの顔面を常軌を逸した握力で鷲掴んで別室へと消えて行った。
◇
セバスニャンにとっては地獄すら温い数ヶ月が終わり、誰もが見違える彼の姿がそこにはあった。
「セバスニャン、わっちらの昼餉の用意は出来ているのかい?」
「はい。用意してございます。
食堂までエスコートは必要でしょうか、お姉様方?」
「そうかい。じゃ、お願いしようかね?」
スラッと背筋を伸ばし、綺麗にタキシードに身を包み、敬語を使いのこなしているではないか。
「最近は言葉遣いがしっかりしてきたわね〜!
お姉ちゃん、嬉しくなっちゃうわ〜!」
「えぇ、これも全てわっちらの努力の賜物。
まずまずの及第点と言った所ですわね」
「これでようやくぅ、何処に出しても恥ずかしくない魔王配下になったのですよぉ。
些か原型を留めていない気もしますがねぇ……」
と、個性豊かな先輩魔王配下達がセバスニャンの出来上がりを評価する。
「お姉様方、魔王様をお呼びしてまいりますので、しばしお待ちください」
セバスニャンは魔王は魔王を食卓に呼びに行き、しばらくすると魔王と共に再び食堂に戻ってくる。
「お前らこいつに何したんだ!!?」
「至って普通の躾ですわ」
「きっと愛情ね〜!」
「拷も……教育ですぅ」
淡々と答える魔王配下達。
それを聞いた魔王は頭を抱えて、一言セバスニャンに詫びを入れる。
しかし、調教され尽くしたセバスニャンは特に何も気にしていない。
「魔王様、不肖このセバスニャン、改めて魔王様に忠誠を誓います。
先の言葉遣いや不敬、この忠義を持って償う事をお許し願えませんでしょうか?」
「いや償いとかは別に良いんだがな……
いやこれ……倫理的に大丈夫なのか?
まぁ、これからよろしく頼むぞ、セバスニャン」
「はい。身を粉にしてお役に立って見せましょう」
「ああ。期待しているが、無理はするなよ?
それと、そこの3バカ共……お前らは後でたっぷりと説教だからな?」
『うぇ……』
魔王を交えての冷や汗流れる楽しい食事と、セバスニャン以外の3人の魔王配下への説教が終わる。
大戦の世でも、そんな何気ない日常は存在した。
時には荒波のような戦場へ赴き、時には家族のような団欒を囲み笑い合う。
そんな生活が、魔王が人族の勇者を討ち倒す終戦まで続いた。
◇
終戦後、致命傷を追いながらも停戦協定を人族に結ばせた魔王ガンデュラは、最後の時を魔王配下達と過ごしていた。
無論、全員が無事な訳も無く、魔王配下もセバスニャンとシュメラと呼ばれる女配下を残し、残りの2名は戦時中に亡くなってしまっている。
「んぁ? 我の配下もお前達だけか?
寂しくなっちまったなぁ……
ペイルとドローレは、先に逝っちまったのか……」
「魔族の勝利の為、悔いの無い最後を迎えたと仰っていましたよ。
どちらのお姉様方も、誇りを胸に旅立たれました」
「そうですよ魔王様〜。
あの子達、すっごく満足そうにしてました〜!
でも、お姉ちゃんは……とっても寂しいな……」
「お前達はよく頑張ったさ。
俺もたぶんそろそろだからな……
お前達、しっかり我の最後を看取れよ?
締まらん最後とか嫌だからな?」
冗談を交えながら、最後の会話に花を咲かせる。
その魔王の雰囲気から、これが最後の会話になるであろう事は、2人の魔王配下は理解していた。
「我が逝った後の事だがな、2人は好きに生きなさい。
もう、戦う必要は無いだろうからな。
どこかで静かに生きるも良し、次に魔王になる者に従えるも良しだ」
「う〜ん……お姉ちゃんは〜、魔王様以外に従うのは嫌だし、空気が綺麗な所で隠居しようかな〜?
セバスニャンはどうするの〜?」
「私は……私は次代の魔王様にも、継続して従おうと考えております。
魔王配下の1人として、魔族の繁栄を最も近い場所で見守りたく思います」
「そうかそうか。
お前は当初から随分変わったが、今の方が余っ程イカしてるぞ?
今のお前の結界なら、我の拳でも完全には割れないのだろうな」
「リップサービスが過ぎますよ魔王様。
…………魔王様?」
それが覇王を冠する、魔王ガンデュラの最後であった。
その後、魔王不在の間はセバスニャンが魔族領の面倒事を片付けて回った。
セバスニャンを次代の魔王にと言う派閥もあったが、セバスニャンはあくまで次の魔王までの繋ぎという姿勢を崩さなかった。
そしてある日、魔王の玉座に1人の魔族が発生する。
セバスニャンは誰よりも早く玉座に駆け付け、忠誠を誓う主人への挨拶を交わした。
「ごきげんようございます。魔王様。
お加減はいかがですか?
私は貴方様の魔王配下、セバスニャンと申します。
本日から、よろしくお願いします」
これが、セバスニャンが現魔王ルディウスの魔王配下となったきっかけであった。
◇◆◇◆◇◆◇
「と言った過去がありましてね。
一応現魔王配下の中では、私が最古参となります。
いやはや自らの過去を語ると言うのは、些か気恥しいものですね……」
────────コメント────────
【祝勝会】 みんなで盛り上げよう!!
同時視聴者数:29223
:先代魔王から従えてるのか……
:お猫様の言うお姉様方ってさ、もしかして教科書の?
:↑暴食姫、不死姫、殲滅姫、の3人だろうね。
:マジか、全員レジェンド級の魔族じゃん……
¥:お猫様、オラオラ系だったのか! それもいい!
:↑見たいよな
¥:大戦時代のお話ありがとうございました!
:↑うちもチビ共と見てる。ためになった。
:ってか、当時の覇王様もヤベぇよな……
:これは他の配下さんのも楽しみ!!
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