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【アーカイブ32】 祝勝会!!




「君を元の世界に戻す技術は、無いんだ……何処にもね……」



 マオは、とても言い難そうに真実を告げた。

 この世界には異世界から来た者は数入れど、出て行った者や帰る事ができた者は歴史上、まだ存在しない。



「そ、そうなの? マオちゃん、本当に……?」


「うん。残念だけど、でも──」



 続く言葉をマオが話そうとするが、被せるように勇者のユウキが心情を語る。



「……まぁ、それならそれでいっか!」


「え、いいの!? か、帰れないんだよ?」


「そっか、驚くよね? うーん、何て言うかな……

 私、元の世界にこれっぽっちも未練無いんだよね!

 両親もいないし、一人っ子だし、友達も……記憶を辿った所でほとんどいなかったし!」



 ────────コメント────────


【同時複数配信】 勇者襲来だよ!

 同時視聴者数:38556


 :無責任な事は言えないけど、こっちも所よ?

¥:友達とは違うかもだが、推すぞ?

 :↑それはもう脅迫の一種だろ

 :元の世界に帰ってもなんて……

 :ってか皇国、嘘ついて勇者をけしかけたって事?

 :魔界も良い所ぞ? 今は平和だし……ね?

 :ポジティブだけども……!

 :マオちゃん何とかならないの?

 :心にくるものがあるな……

 :この陽の波動で友達少ないのマ???


 ────────────────────



 コメント欄はユウキを憐れむコメントや、魔界の良い所アピール合戦となっていた。

 同時視聴者数が増えたこともあり、目にも追えぬ速さでコメント欄が流れていく。



「もしさ……もし、君さえ良ければ、魔王都市の住民になる気はないかな?

 幸いにもここは魔王城(役所)だからね。

 君の戸籍とかもこっちで手配できるんだけど……」


「魔王都市って言うと、ここだよね?

 え、いいの? ホントに?

 でも、住む所とかが……」


「そこもご心配無く!!

 ユウキちゃんは17歳って言ってたよね?

 だから、君にはこっちの学園に転入してもらおうと思ってるんだ。

 で、学園では寮に入ってもらって、その間にいい物件を探そうと思ってるんだけど、どう?」


「学園!!? こっちにもちゃんとあるんだ!?

 それなら私、ここに住みたい!

 色々任せちゃってもいいかな、マオちゃん?」



 ユウキの返答に、マオは目を輝かせて了承した。

 更にはすぐにセバスニャンに連絡を取り、書類の手続きを頼む。



「──という訳なんだか、頼めるかい?」


『承知しました。至急手配致します。

 ユウキ様の署名が必要な箇所は、後日に伺いましょう』


「君も疲れているだろうに、すまないね……

 じゃ、よろしく頼むよ!」



 セバスとの通信魔法が途切れると、早速とばかりに生配信を締める挨拶に取り掛かる。



「それじゃ、これから少し忙しくなるだろうから、今日の配信はこれにて終了とします!!

 まだの人はチャンネル登録と、この配信の高評価をよろしくね!

 あっ! あと、後日祝勝会配信すると思うから、皆も参加してよね!


 さて、今日は多いから急ぎ足で課金メッセージのお礼、して行くよー!!」



 普段の生配信の3倍近い量の課金メッセージをくれた人の名前を読み上げ、投げられた課金額によってはしっかりと応え、配信は終わった。



 ◇



 勇者襲来から数日、ダンジョンの片付けや皇国への抗議及び賠償金請求、勇者ユウキの戸籍の作成なども一通り終わり、魔王陣営はようやく落ち着きを取り戻した。

 執務室にはゲッソリとした魔王と、辛うじて平静を保つセバスニャンが、ソファで一息をついていた。



「終わった……やっと……!」


「お疲れ様です魔王様。

 今回は流石に、この老骨も折れましたとも」


「本当に勘弁して欲しいよね……」



 そう言い、深くため息を吐きながらソファに沈んだ。

 そんな様子を眺めながら、傍らにいたセバスニャンがマオに問う。



「お疲れの所申し上げ辛いのですが、祝勝会の手配はいかが致しましょう?」


「ここ数日配信出来てないからね。

 なるべく早くに開催はしたいけど……

 まずは貴族達向けにパーティを開いて、それからかな。

 配信の告知や準備はアタシの方でしとくから、セバスニャンは貴族向けパーティのセッティングと招待状を頼むよ」


「畏まりました」



 その後、勇者パーティの撃退や、避難に協力してくれた貴族達を対象にささやかなパーティが開かれた。

 魔王直々の招待という事もあり、貴族達にも箔が付く。

 各地の領主やその息子達が、こぞって挨拶に回った。

 そんなこんなで政治的パーティも終わると、いよいよ趣味全開の祝勝会配信が始まる。



「さてさて、待たせたねみんな!

 まおっすー! ご当地魔王のマオちゃんだよ!

 今日は祝勝会配信だよ! 宴の準備出来てる!?」



 ────────コメント────────


【祝勝会】 みんなで盛り上げよう!!

 同時視聴者数:27584


 :まおっすー! 久々の配信だね!!

 :まおっす!! 酒の準備……ヨシ!!

 :飲むぞ飲むぞ〜!!

 :あれ? なんかやたらマオちゃん疲れてない?

 :↑確かに……大丈夫?

 :気持ちやつれているようにも見える。

¥:栄養ドリンク代

 :ナイスメッセ!!

 :配信しても大丈夫なのか?

 :他の人もいるのかな?


 ────────────────────



「いやぁ、ハハハ……バレちゃう?

 実はさっきまで、今回協力してくれた貴族達とパーティがありましてだね……

 それが終わった後にそのままこの配信してるから、それなりに疲れてるって訳!

 ちなみにクオンちゃんも招待してるから、後でね!」



 わざとらしく身体を伸ばしながら、マオは今回の功労者達の元へ向かう。

 豪華だが庶民的な食事が並ぶテーブルの周りでは、普段の姿で給仕をこなすセバスニャンやクララ、カルル。

 普段より少しおめかしをしたギーシュにシズ、マイヤ、クオンは料理に舌鼓を打つ。



「はーい! 今回の功労者達でーす!

 一応身バレ防止の為に、クオンちゃん以外のみんなの顔には若干の認識阻害の魔法が掛かってるよ!」



 ────────コメント────────


【祝勝会】 みんなで盛り上げよう!!

 同時視聴者数:28523


 :おー! 皆いる!

 :メイドちゃん達はマジでメイドなんだな……

 :↑そりゃメイドだしな……たぶん

 :クオンちゃん絶対よそ行きの服じゃん!

 :厳スタさん達に護衛ちゃんもいるね!

¥:なぁ……この動画1度閉じて、皆の顔思い出してみ?

 :↑ふぁっ!!?誰も思い出せん!!

 :↑出たよマオちゃんのとんでも魔法……

 :↑見てる分には認識出来るのに……

 :ねぇ、画面端に写った檻みたいなの何?


 ────────────────────



「おっ、みんな目敏いね!?

 今回は功労者意外に、勇者ちゃんもいます!

 で! 次いでにそこの檻に、愉快な仲間達をぶち込んで盛り上がってる次第だよ!」



 ご馳走を頬張る勇者のユウキと、檻に入った剣聖、賢者、聖女、テイマー達を画面に収めた。



「みんな久しぶり〜! ユウキだよー!

 元いた世界とお料理が似てて、美味しいでーす!」



 と、元気で微笑ましい勇者とは逆に檻の中からは──。



「行けません勇者様! 魔族どもと食事など!」


「おお、神よ……どうか勇者様を正気に……」


「おい出せよ! せめて食事を持って来いってんだ!」



 などと言いたい放題の有様。

 唯一剣聖だけは、大人しく檻の端で静かに座っていた。

 そんな彼にマイヤがちょっかいを掛けに行く。



「剣聖くん静かっすね……このぼくに免じてお料理食べて良いっすよ?

 今時君みたいな忠義の騎士なんて、絶滅危惧種っすから、しっかり保護しないと! はい、あーん!」


「な! 騎士がそんな……あ、あー……んぐんぐ……

 う、美味い……!!!?」


「おお! 良いリアクションっすね!

 ほら、お皿に盛ったからよく噛んで食うっすよ?」


「か、かたじけない……」



 恥は百も承知で、剣聖はマイヤから与えられた食事を有難く口へと運ぶ。



「おい! 剣聖だけずりぃぞ! あたいらにも寄越せよ!」


「配信を見直した感じ、あんたらはダメっす!

 反省が足りてないっすよ! 反省が!」



 ────────コメント────────


【祝勝会】 みんなで盛り上げよう!!

 同時視聴者数:28855


¥:護衛ちゃん、優しいやないけ……!

 :剣聖だけは、実はまともだったんだよな。

 :幸あれ、剣聖!

 :反省足りてないよな、特にテイマー

 :俺メイドちゃんしか見てないが、剣聖良い奴なの?

 :↑国のために仕方なく参加してる感パない。

 :↑護衛ちゃんに認められてたよ

 :あの料理を前にお預け食らうの、中々の拷問だな……

 :硬いパンとスープでも出しとけ

 :↑可哀想だからスープは温かいのにしてあげよ?


 ────────────────────



「おや? 護衛ちゃんの判断で、剣聖の人だけ食事与えられた感じなのね?

 ただ食事抜きにすると捕虜の人道的な待遇に反しちゃうから、しっかり食事は取ってもらうよ!

 まぁ、豪華とは言えないけどね?」



 そうして運ばれて来たのは、人数分のコッペパンと具沢山のスープ。

 渋々と言った様子だが、檻の中の面子は食事を手に取り、文句を垂れながらも料理を掻き込む。



「はいはーい! そっちは一旦置いといて……

 クオンちゃんも盛り上がってる!?」


「あっ、マオちゃん!

 みんなもこーんばんは! こんこんクオンだよ!

 お料理美味しすぎて、ほっぺた無くなっちゃうよ〜!

 これ全部メイドちゃんとかセバスさんが作ってるの?」


「その通り! 主にメイドちゃんの姉の方とセバスが、腕に(より)を掛けて作ってるよ!」


「この量を!? すっごいね、流石本業……

 小っちゃいメイドちゃんも可愛いし!

 姉妹仲良しなんだね〜!」


「ん、姉妹? ……あ〜そっか!

 小さい方は身なりこそ女の子だけど、あの子は身も心も男の子だよ。

 彼がメイド服なのは『大好きなねぇねと一緒がいいから』だそうだよ」



 ────────コメント────────


【祝勝会】 みんなで盛り上げよう!!

 同時視聴者数:29003


¥:男の娘だと!?いや、女装男子か?

 :↑可愛い上に付いてるなんて、お得が過ぎるな!

 :あら〜!!お姉ちゃん大好きなのね〜!!

¥:今みんな(*´ω`*)こんな顔なってる。

 :↑よくわかったな。

 :↑こんなほっこりエピソード聞きゃそうなるわ

 :この料理を2人で……だと??

 :ワイ主婦、毎晩の夕飯作るので精一杯なのに……

 :↑あんたも頑張ってるよ。比べる相手が悪い。

 :弟くん。いや、弟ちゃんと呼ぶ事にする!


 ────────────────────



 メイド見習いカルル性別を知ったコメント欄は、それはそれは大賑わいのお祭り騒ぎ。



「えっ、そんな盛り上がる……?

 どうせだし、少しだけ挨拶するかな?

 おーい! うちの可愛いメイドちゃんおいで!」


「アタシか!!?」



 可愛いという単語に誰よりも早く反応した姉のクララ。



「あー、今回は君じゃない! もちろん君も綺麗だぞ!」


「そうかアタシは綺麗だったか、言われりゃ確かになぁ!

 ほらカルル、魔王様の所に行っといで!」


「わふー! 来たよー!!」


「コメント欄の皆が、君の事可愛いって思ってるって!

 良かったら挨拶してあげて?」


「カルルです! ……えっと、よろしく、ね?」



 はにかみながら挨拶をし、小さく手を振るカルル。

 またしてもコメント欄は悶絶し、絶賛のコメントで溢れていた。

 そんな中で──。



 ────────コメント────────


【祝勝会】 みんなで盛り上げよう!!

 同時視聴者数:29016


 :きゃわわわわわ!!!

 :激かわショタ!激かわショタ!優勝!

¥:挨拶できて偉いね〜!!!

 :俺の弟や妹もこんなに可愛かった時がありました……

 :↑今では違うみたいな……

 :↑お前も可愛いよ安心しろ

 :お姉ちゃんポジティブで超好き!!

 :弟ちゃん、可愛いの暴力。並の魔族じゃ即死だろ?

 :↑分かる。3ストックほ持ってかれた

¥:皆が魔王配下になった経緯って、どんな感じなの?


 ────────────────────



 ──魔王配下になる経緯に触れたコメントが、他にも幾らか見受けられた。



「カルル褒められてた?」


「ああ! みんなカルルが、すっっごく可愛いって!

 忙しいのにありがとねカルル、お姉ちゃんのお手伝いに戻っていいよ!


 それにしても経緯か、そんな深い理由は無いと思うんだけどな……

 みんなそういうの知りたい?」



 マオが問うと、コメント欄は『知りたい』一色だった。

 その様子を見て、彼女は少し悩んだ後に提案する。



「アタシから言うのも野暮だし、みんなに魔王配下になった経緯を聞いて行こっか?

 まずは……1番古株のセバスからだね!」




これにて勇者襲来編、終わりです!


『面白い!』『続きが読みたい!』と思ってくれた方は、いいねやブックマーク、広告下の評価☆☆☆☆☆を押してくれると私が踊りながら喜びます!


次回からは短いですが、『魔王配下の過去編』が始まりますので、乞うご期待なのです!!!

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