表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/39

【アーカイブ31】 勇者御一行におもてなしを②




「ゆっくりお話しをしようか?」



 玉座の間の様な空間で、魔王と勇者が2人きり。

 少女勇者は初めて体験する転移に、未だ状況が掴めていない様子であった。



「困惑するのは分かるけど、一旦落ち着こうか?

 君が突然この部屋に来たのは、『転移(テレポート)』という、魔法の1つなんだ。

 だから、突然君の目の前の景色が変わって、ここに辿り着いたという訳さ!」


「転移……ですか?

 はぇぇ、凄いな……便利そうですね!」



 転移の魔法の事を聞かされると、目を輝かせる。

 それまるで、無邪気な子供そのものであった。



「そうだ! まず聞いておきたいんだけど、君達のダンジョン攻略は今、絶賛生配信中なんだけど、そういうのは大丈夫そうかな?」


「え、生配信!? こっちにもそういうのがあるんですか?

 カメラ何処だろ? こっち? こっちかな?」


「抵抗はあまり無さそうだね……?

 あそこに置いてある水晶球が、たぶん君の言うカメラだと思うよ?」


「……っ! これか!

 皆見えてますか? こんにちはー!」



 ────────コメント────────


【同時複数配信】 勇者襲来だよ!

 同時視聴者数:5228


 :こんにちはー!

 :コメは打つけど、勇者ちゃんに見えてるのこれ?

 :なんか、普通にいい子では?

 :おっすおっすー!

 :カメラ? って異世界の水晶球なのか?

 :↑もっと凄い何かかもしれんぞ

 :異世界でも配信ってあるのかな?

 :↑勇者ちゃん、慣れてる感じするよね

 :勇者ちゃんこんにちは!!!

 :マイペースな子だなwww


 ────────────────────



 コメント欄は勇者へのコメントで加速。

 何となく悪い人間では無いという雰囲気のため、皆から歓迎されていた。



「おぉ、君にいっぱいコメント来てるよ!

 見てみるかい? これ、はい」


「うぇっ!? ()()()まであるの!!?」



 少女勇者は手渡された物を見て驚愕の声をあげた。



「これは水晶体(すいしょうたい)魔導反映板(マギリフレクトボード)、通称スマボって呼ばれる魔道具だよ」


「スマボ……私の世界だと、スマートフォンってのを略してスマホでした。

 へぇ、ちゃんと触れる。わ、これがコメント欄か!

 わぁ! いっぱい反応来てる!」


「喜んで貰えているようで何より。

 まぁ楽しむのもそこそこに、まずは自己紹介しようか!

 それじゃあ早速、アタシの名前はマオ!

 配信アプリ MgTune(マギチューン)でご当地魔王として活動してる、バ美肉マギチューナーだよ!

 主な活動内容はこの魔王都市の紹介や、こうやって生配信で楽しませる事かな!」



 マオは丁寧に少女勇者に自己紹介をした。

 勿論本物の魔王ではなく、あくまでマギチューナーのご当地魔王という体で。


 マオの自己紹介も終わり、次は少女勇者の番。



「私は早乙女(さおとめ) 優希(ゆうき)、17歳です。

 どうぞ、ユウキって呼んでください!

 こっちの世界に来てまだ1ヶ月ちょっとですが、よく分からないまま、流れとノリで勇者やってます!

 世界の平和の為に魔王を倒すらしいです。対戦よろしくお願いします!」



 ────────コメント────────


【同時複数配信】 勇者襲来だよ!

 同時視聴者数:5250


 :ユウキちゃん!!

 :17歳!?若っけ〜〜!!!

 :流れとノリで勇者やらされるのヤバいな……

¥:何というポジティブオーラ!!!

 :え、待って、マオちゃんバ美肉なの??

 :対戦よろしくされてもなぁ……

 :ユウキちゃんいい笑顔!

 :良い意味で図太い子なんだろうなって

¥:陽の波動を感じる……!!

 :護衛ちゃんと仲良くなれそう


 ────────────────────



「え〜! 私全然陽の者じゃないよ?

 あと、逆に聞くけどこんなダサい装備、ノリと勢い無いと着られないでしょ!?」



 コメント欄を読みながら、少女勇者改めユウキはツッコミを入れつつ戯けた雰囲気で流して見せる。



「ここまでの会話で、少なくともアタシ達に敵意が無い事は分かって貰えた……かな?」


「もちろん! そもそも私、争いとかって嫌いだもん。

 マオちゃんは優しくしてくれるし、コメント欄の皆も良い人っぽいし!」


「ハハ、それは良かった!

 コメ欄のみんながお行儀良かったから、アタシ達が良い人って認められたよ!


 あ、褒めたらすぐ調子に乗るなよ〜?」



 視聴者のコメントに2人は笑いながら応え、勇者と魔王という関係ながら、楽しい時間を過ごす。



「あ、そうだ! ユウキちゃんさえ良ければ他の階層の風景見てみる?

 こことは違って戦ってると思うし、それも今ならアタシの解説付きだよ!」


「そっか、他の皆も別の場所に飛ばされてるんだ!

 一応少し心配だから、見せてくれると嬉しいな……」


「分かった。視聴者の皆も見れるように、その辺の壁に投影するとしようか!

 ちょっと準備するから、トイレ休憩とお菓子を持ってくるなら今だよ?」



 しばらくの後マオの準備が終わると、壁面にマオの魔法によって各魔王配下の階層の様子が映し出された。



 〜セバスニャンの階層〜



 全体的に薄暗い階層の中、セバスニャンと賢者による激烈な魔法の応酬が繰り広げられている。



「ほっほっほ……防戦一方ですかな?

 こちらはまだまだ余裕じゃて! 『地獄炎(ゲヘナ)』!」


「それは困りましたね。『第二式・守護結界』展開」



 セバスニャンの目の前に半球状の決壊が張られ、賢者が放つ業火から身を守った。

 何を隠そう、セバスはこの守護結界という極めてマイナーな魔法しかまともに使うことが出来ない。

 しかし、その練度は魔界で右に出るものはいない。



「くっ、これも防ぎおるか。

 結界など面妖な魔法を使いおって……

 ならば次で全てを終わらせようぞ!!」


「そちらの魔法で最後ですか?

 であれば助かります。私もこれ以上は加減が難しく……」


「この期に及んで加減……だと?

 魔物風情が舐めた口をぉ!!」



 口を滑らせたセバスニャンに憤り、賢者は最後の魔法の詠唱を始める。

 ありったけの魔力を込め、詠唱を略す事無く丁寧に、己の持つ全てを目の前の敵へぶつけんとしていた。

 そして、時は来た──。



「これでも喰らうがいいわ!!

 完全詠唱! 『全属性砲撃(イリス・カノン)』!!!」


「ほぅ、これは見事な御手前で。

 ですが……まだ足りませんね。

 刮目なさい『第三式・守護結界』展開」



 賢者の魔法が発動する直前にセバスニャンの魔法が発動し、自分自身と階層全体を薄い膜が包み込む。

 その後、眩い何色もの光によって階層が照らされ、凄まじい衝撃がセバスニャンを襲った。


 魔力を使い果たして肩で息をする程に疲弊した賢者、その顔は勝利を確信した笑みが浮かんでいる。

 しかし、勿論セバスニャンには通用しない。

 彼は大戦時代を生き抜いた猛者の1人だ。



「ふむ、やはりこの程度ですか……

 断言致しましょう。大戦時代であれば貴方の実力はせいぜい、自衛ができる荷物持ちが関の山でしょう」


「な……ば、馬鹿な!!?

 最高威力の魔法なのだぞ!?」


「ええ、素晴らしい魔法ではありましたとも。

 しかし、相手が悪かったですね。

 伊達に最前線で()()()()と呼ばれていた訳ではありませんとも」


「この……化け物め……! ぐふっ……」



 賢者はそう言い残し、魔力欠乏によって倒れ込んだ。

 一方セバスニャンは、守り抜いた階層(BAR)のカウンターに腰を下ろして、自らの腰を労る。

 こうして、賢者戦は幕を閉じたのであった。



 ────────コメント────────


【同時複数配信】 セバスの階層

 同時視聴者数:3451


 :一方的かよ……賢者が可哀想まである。

 :セバスさん、大戦時代の魔族なのか……

 :移動要塞ってなんか聞いた事あるんだよな

 :↑大戦時に幾万の侵攻を単独で撃退した偉人だぞ

 :↑教科書載ってたわ! 魔王配下なのも頷ける!

 :お猫様カッコよすぎぃ!!!!

 :結界術って普通の防御魔法と違うの?

 :↑正直謎が多い魔法ではある。

 :何はともあれ、勝利おめでとうございます!!!

 :そうそう、もっとハッピーに祝おうぜ!


 ────────────────────



 〜クララ・カルルの階層〜



 雪が降り注ぐ中クララとカルル、テイマーとその魔物達が睨み合っていた。

 先に仕掛けたのはテイマー。



「お前達! 相手がガキだからって遠慮は要らねぇ!

 噛み砕いちまいな!!」


『ヴォウ!!!』



 テイマーの指示で、3匹の魔狼が一斉にクララとカルル目掛けて掛けだした。



「おぅおぅ元気だなぁ! 良い事だ!」


「ねぇね、狼さん来てるよ?

 ()()しなくていいの?」


「んあ? あぁ、アタシはもう少し遊びてぇからな!

 カルルは危ねぇから、先に獣化しといていいぞ!」


「わふん! 分かった! ワオーン!!」



 カルルが狼のように吠えた瞬間、全身からぶわっと毛が生え、みるみる内に狼のような姿へと変貌する。

 カルルのブロンズの髪色に似た、暗い黄金色の毛並みの狼がそこにある。



「よーし、カルル! 暴れるぞ〜!」


「がぅ〜!」



 襲いかかる魔狼に、クララは素手で魔狼達の首根っこを掴んでは投げ飛ばし、カルルはその素早さをもって魔狼達を翻弄した。

 その様子を目の当たりにしていたテイマーは、口角を吊り上げて獰猛な笑みを貼り付ける。



「へぇ……お前、獣畜生だったんだな?

 じゃあ、とっととお前らを倒して、あたいのコレクションにでもしてやんよ!!」


「あ"? 誰を何にするって言ったんだ?」


「はっ! 立派な犬耳付いてる癖して耳が悪ぃのか?

 お前ら犬っころを、あたいのコレクションに加えてやるって言ってんだよ!!」



 テイマー煽りを受け、クララは冷静にその言葉を頭の中で反芻し、極めて冷静に行動に移す。



「残念だが、遊びは終わりだなぁ……

 カルルをどうにかするってんならなぁ、この最強可愛いアタシをどうにかしてみな!」



 そう言うと、クララもカルル同様に狼の姿へ。

 しかし、クララの獣化した姿はカルルのそれとは大きく異なり、かなり大型の狼へと変貌を遂げようとする。

 獣化に伴い、クララの着ていたメイド服は無惨に破れて床へ散乱した。

 完全に獣化が終わると、その巨躯と圧のある眼光を前に並の獣達は足を止めた。



「おい何ぼさっとしてんだお前ら!!?

 早くアイツら倒しに行けって!!

 クッッソ、使えねぇな! あたいが直接躾ける!」


「カルル、下がってな」


「ウォン!」



 カルルはクララの言う通りに戦線から離脱。

 それを確認したクララは、突如として消える。

 実際には目にも止まらない速さで、的確にテイマーの死角に回り込み続けていた。



「んなっ!? どこ行きやがった!!?」


「よそ見したなぁ?」


「ッ!! カハッ……」



 背後から首への一撃受け、テイマーは意識を手放す。

 脅威が無くなった事を確認し、クララ達は獣化を解く。

 しかし、小さいカルルはともかく、クララはメイド服を破いて獣化したため、すっぽんぽんである。

 そこへ、可愛い救世主の登場。



「ねぇね! これで隠して!」


「おう! サンキューなカルル!」



 カルルから投げられた布切れで大事な箇所だけを隠し、まるで蛮族のような格好で締まらない最後を迎えるのであった。



 ────────コメント────────


【同時複数配信】 メイドちゃん達の階層

 同時視聴者数:3005


 :おっと鼻血が……

 :可愛いもかっこいいも強いも持ってるの凄い

 :天が二物も三物も与えてみた結果の子

 :獣人さんってこんな強いの?

 :↑これは普通じゃない。本来は獣化すら難しい

 :↑妹ちゃんもどけど、お姉ちゃんは特に原初に近い

 :ここ見に来て良かった……姉妹愛……尊み……

 :毛並みめっちゃ綺麗だったな……

 :なしてそげにどすけべえっちばい?

 :妹ちゃんナイスぅ!! 危うくBANだぜ?


 ────────────────────



 〜マイヤの階層〜



 響くは剣戟、ただ一つの瞬きすらが生死を分ける隙となる強者同士の闘い。

 マイヤと剣聖はひたすらに技をぶつけ合う。



「にゃっははははは!!!

 良いっすよ剣聖君! ぼくも久々に楽しいっす!」


「お褒めに預かり……グゥっ!!? 光栄ですよ!

 生憎、私にはそこまで余裕はありませんがね!!」



 現時点にて、優位にあるのはマイヤであった。

 剣聖はマイヤの猛攻を捌くので精一杯の様子。



「この剣戟……剣聖の私でさえ……!!

 貴女はいったい、何者なのですか!?」


「ぼくの正体っすか?

 うーん、どう言えばいいっすかね?

 ぼく単純っすけど、複雑なんすよね……」



 マイヤは大きく剣聖の件を弾いて距離を取り、自分自身をどう説明しようか迷う。



「そうっすね……一応言っとくと、ぼくは元人族っすよ!

 魔族と戦ってた時期もあるっす!

 まぁ後は何やかんやあって、今となってはこんな感じっすね!」


「大事な所がほぼ全て伏せられているではないですか……」


「あ、そうだ! 君、皇国の勇者っすよね?

 それなら──」


「……??」



 マイヤは何かを思いつき、剣聖は身構える。

 彼女は目付きを鋭くさせ、声を張り上げた。



「抜剣! 素振り始めぇ!!!」


「ッ!! はいッ!!」



 剣聖は手に持つ剣を真正面に構え直し、背筋をピンと伸ばして、大きく返事を返す。

 これは剣聖の身体に刻み込まれた、癖のようなもの。

 それも見て、マイヤはニヤニヤと笑みがこぼれる。



「貴女、その号令……皇国で騎士団に所属された事が?」


「皇国のって訳じゃないっすけど、色んな国の騎士団を見てきたっすよ。

 それこそ、()()()()()とかもね」


「今は無い国、と言われましたか……

 我々には想像もつかない程の大先輩なのですね。

 ですが、皇国の騎士として私は戦わねばなりません。

 どうかその胸、お貸しください!」



 剣聖は剣を構え、マイヤへと迫る。

 そんな彼を見てマイヤは、感心したように頷く。



「うんうん、忠義の騎士っすね! その意気や良し!!

 この一撃で終わらせてあげるっす!

 君は持てる全力を尽くして防いで魅せろ」


「ハハッ、凄い気迫だ……どうかお手柔らかに!」



 剣聖は最高の一撃を入れる為、マイヤの間合いの内へと果敢に攻め入る。

 それに対しマイヤは足を大きく開き、腰を低く、剣は頭上で構えて迎え撃つ。



「トライグ皇国剣術、『閃撃』!!」


「百を持って一と成せ、『神撃』!!」



 勝負は一瞬だった。

 剣聖の剣や鎧は、マイヤの斬撃により砕け散った。

 そのまま床に倒れ込んだ彼の顔は、誰よりも誇りに満ちた嬉しそうなものであった。



「うん! 天晴れっすね!

 この剣神を冠したこの護衛ちゃんに挑んだ事、末代まで誇るといいっすよ!」



 ────────コメント────────


【同時複数配信】 護衛ちゃんの階層

 同時視聴者数:3157


 :何も見えんが……? 手だけ消えてた?

 :速すぎだろ!? 何だあの最後の剣戟!!

 :剣聖いい人っぽかったな。

 :ヤムチャしやがって……

 :剣神ってさ、自称だと思う?

 :↑大戦時代に呼ばれてたなら、ヤバい。

 :清々しい試合だった!!

 :唯一の欠点は階層名がぶっ殺シアムな事くらい

 :護衛ちゃんニッッコニコだったな!

 :可愛いぞ護衛ちゃん!!


 ────────────────────



 〜ギーシュ・シズの階層〜



 静寂が包む森の中、ギーシュは聖女の放つ聖属性の魔法から逃げ回っていた。



「あっぶないなぁ! もう!

 何で聖女がこんなに好戦的なんですかねぇ!?」


「魔物は大人しく浄化されてくださいな。

 それが世の為となります。喜ばしいでしょう?」


「話通じないよ、何だよこの人!」



 迫り来る聖属性魔法の雨を掻い潜りながら、その場を凌いでいた。

 ギーシュに戦闘経験は皆無。

 対して聖女は恍惚とした表情で魔法を乱発している。

 時々着弾する攻撃も、ギーシュの竜人族(ドラゴニュート)の鱗に弾かれ霧散しているのだが、熱い物は普通に熱いらしい。



「あ〜、もう! いっそ僕から攻めます!」


「あら?」



 ギーシュは顔の前で腕を交差させ、身を守りながら聖女にタックルを仕掛けた。

 勿論、飛来する魔法を滅茶苦茶に我慢しながら。



「熱っっっつぅ!!! うわっと!」



 目を瞑りながら走ったせいか、聖女を目前として倒れ込んでしまう。

 しかしギーシュはその刹那、見てしまった。



「あら、惜しい……」



 転けなければ自分の頭があったであろう場所に、振り抜かれる聖女のメイスを。

 それも、何食わぬ涼しい顔で。



「殺意が! 高い!」


「それを言うなら、貴方が転けた場所を自分でよく見てみるといいですよ?」


「え? はぁぁ??」



 ギーシュが盛大に転んだ地面には、大きな窪みが出来上がっていた。

 魔王配下となったギーシュは、非戦闘員ながらもそれなりに脅威なのである。



「はぁ、こんな感じなのか……」


「ぼ〜っとしてて、良いんですか?」


「聖女が振り回す物じゃないですよ、そんなの……」



 自分が作った窪みを眺めていたギーシュに、聖女は容赦無くメイスを振りかざしていた。

 しかし、ギーシュの鱗に見事に弾かれる。



「困りましたね、これでは貴方を救えません……」


「そんな救いなら要りませんから!

 シズさん、何とかなりませんか!?

 ってか何処にいるの!?」


「(も、もう少し頑張って。ちゃんと活躍するから!)」



 未だ姿を見せないシズに助けを求めるも、何処からかギーシュにしか聞こえない声で返事を返される。

 その間も聖女の猛攻は止まらない。



「そうだ、武器に聖属性を付与しましょう!」


「づぁっ!!? 熱っつ!!

 あ〜、もうどうにでもなれ!」



 ギーシュは聖属性のあまりの熱さに耐えきれず、両手を床に思い切り叩き付けて、聖女を巻き込んでどデカいクレーターを作り上げた。



「ギーシュ君ナイス! シズも行くよ!」


「やっとですか!?」



 クレーターの外から、ようやく姿を現したシズが語りかけた。



「ギーシュ君、全力で耳を塞いでて!

 ぜ、全力でやりゅ! あぅ……」



 シズは両手を開いて口の前に構え、悲鳴にも似た声にならない声をクレーター内の2人に浴びせた。

 その気になれば、3山先にまで声が届くと言われる死告妖精(バンシー)による、本気の叫び。

 それもクレーター内で反響し、威力は割増しだ。

 辛うじてギーシュは耐えたが、聖女は泡を吹いた上、白目を向いて意識を手放していた。



「あ"あ"……頭ガンガンする……」


「で、でも勝てたし……ね? 褒めても、いいよ?」


「まぁそうですね、ありがとうございます」



 ギーシュは拳を突き出し、シズもそれに応えるように拳を突き合わせた。



 ────────コメント────────


【同時複数配信】 厳しいスタッフさん達の階層

 同時視聴者数:3550


 :非戦闘員とは???

 :無事にお耳無いなったよ!

 :鼓膜のスペアあったかな?

 :聖女とか嘘だろあんなサディスト!

 :シズちゃん? って子滅茶苦茶可愛い声してたな

 :↑今はもう何も聞こえないんだけどな!

 :非戦闘員でもこのレベルなの?

 :笑顔でメイス振る聖女が夢に出てきそう……

 :↑やめろよ、トラウマになるだろ……

 :厳スタさん達、お疲れ様〜!!!


 ────────────────────



 〜マオの階層〜



「はぇ〜、みんな負けちゃった!

 マオちゃんのお仲間さん、すっごく強いんだね!」


「でしょ? 自慢のスタッフさんだからね!」



 自らの配下を褒められ、鼻が高くなるマオ。

 


「今回は負けちゃったけど、勝たないと元の世界に帰れないって言われてるんだよね……」


「え? あぁ、そういう事か……

 凄く言い難い事、言ってもいいかな?」


「ん? なになに、どうしたのマオちゃん?

 そんなに畏まっちゃって……?」


 突然の重い雰囲気に困惑のユウキ。

 意を決して、マオは残酷な現実を突き付ける。



「君を元の世界に戻す技術は、()()()()……何処にもね……」




更新遅くなってごめんなさい!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ