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【アーカイブ30】 勇者御一行におもてなしを①




『緊急警報! 緊急警報! 勇者が襲来します!

 避難対象区域の住民は、速やかに避難してください!

 繰り返します!』



 魔王都市では2日前から日に3度、このような放送が街中の拡声器から流される。

 避難推奨区域に住む多くの魔族達は、既に避難が完了しており、街は異様な静けさに包まれている。

 そんな緊張感とは裏腹に、魔王城内では大いに盛り上がっていた。



「みんな〜! まおっすー!!

 うわぁ、やっぱり普段と環境が違うし声が響くね……

 ってな訳で! アタシの配信をいつも見てる人達は知っての通り、もうすぐ勇者がここに来ます!」



 ────────コメント────────


【同時複数配信】 勇者襲来だよ!

 同時視聴者数:7206


 :キタキタキタキタ〜!!!!

 :まおっすー!

¥:避難所から配信見てるぜ!

 :↑マジかよww

 :同じ人族として恥ずかしいよ……

 :↑元気出せよ、推しが一緒なら仲間だよ

 :まおっすー!!!

 :魔王城ダンジョン楽しみ過ぎる!

 :今日こそマオちゃんのスタッフさんが拝める?

¥:くれぐれも気を付けてね!


 ────────────────────



 マオの配信が始まってから数分にも関わらず、4000人を超える視聴者がマオの配信を見に集まっていた。



「あ、避難してる人も見てくれてるんだ……

 避難先ではルールを守って皆で支え合う事!

 たぶん2、3日はそのまま避難してもらうと思うから、この配信で少しでも息抜きして行ってね!」



 軽い挨拶と雑談を手早く終わらせ、早速今回の配信についての解説に移る。



「さてさて! 今回の生配信なんだけどタイトル通り、ダンジョンの各階層にいくつか水晶球を設置してあって、それぞれ別のチャンネルで同時に配信するから、詳しくはこの動画の概要欄からチェックして!

 ま、しばらくは雑談配信になっちゃうけど!」



 ────────コメント────────


【同時複数配信】 勇者襲来だよ!

 同時視聴者数:7334


 :ほほう……そういう感じなんだ

 :同時視聴だけど、実質1階層ごとに見れるよね?

¥:スマボいっぱい用意したんだぜ!!

 :↑お前は俺か?

 :↑同じ事してるのワイだけやなかったんや!

 :ダンジョンって見た事無いから楽しみ過ぎる

 :不謹慎だが、勇者早よ!!

 :SNSでのダンジョン作りの画像見たよ!

 :↑クオンちゃんハチャメチャ楽しんでたよなw

 :ダンジョンなのにBAR的な写真もあったね


 ────────────────────



「え、スマボ新しく買った人もいるんだ!?

 みんなの本気度が伝わってくるな……

 あと、ダンジョンの写真見てくれた人もありがとう!

 ちなみに、BARっぽい階層はスタッフさんのセバスが作った階層だから、みんな楽しみにしててね!」



 セバスニャンが階層を作ったと視聴者に言うと、コメント欄は大いに盛り上がった。

 セバスニャンには初めての登場から、根強いファンらしき者が多数存在しているからだ。


 その後もしばらく雑談は続き、勇者が魔王城に到着するのは1時間以上も先なのであった。



 ◇



『魔王配下のみんな、聞こえるかい?

 勇者が門前に来たみたいだから、全員で迎えようか。

 生配信だから、名前であまり呼び合わないこと!

 それと、皆は顔を隠す仮面も忘れずに!』



 マオの通信魔法から数分もしない内に、魔王配下達は第1階層へと集結した。

 マオの後ろにマイヤ、クララ、カルル、シズ、ギーシュ、セバスニャンが整列。



「いや〜、ワクワクするっすね〜!!」


「ふわぁ〜あ、やっと来たのかよ!」


「……ねぇね、だらしないよ?」


「(ギーシュ君、き、緊張してる?)」


「(そりゃ正直してますよ、胃が痛い……)」


「皆さん姿勢を正してください。門が開きますよ」



 セバスの忠告とほぼ当時に、魔王城の門がゆっくりと開き、陽の光が差し込む。

 逆光によりシルエットだけが顕になった勇者一行は、シズの情報通りに5人組であった。


 勇者一行が門を潜り、マオ達と対面する。

 先頭に勇者、それに続き剣聖、賢者、聖女、何匹か獣を連れたテイマーらしき者達が入城した。



「勇者様! あの真ん中の奴がきっと魔王です!」


「気は抜かず、武器を構えてくだされ!!」


「我らは皇国の、人族の自由の為に闘うのです!」


「相手は非道な魔王軍だ、遠慮は要らねぇぜ!!」



 勇者の仲間達がそう(のたま)う。

 しかし、関心の勇者は少し引いた様子で──。



「えっとあの……どうも? お邪魔します?

 私はなんかその、勇者? らしいです!

 で、魔王? を倒すために来ました」



 と、なんとも煮え切らない挨拶。

 他の仲間達と違い、勇者だけはド派手な装飾が施された軽鎧や、剣を装備していた。

 勇者は人族で言う16歳前後の女の子で、黒髪黒目は伝え聞く異世界人のそれだが、それ以外が明らかに浮いていた。

 その異様な出で立ちに、マオ達が何を言おうか迷っていると、勇者が更に声をかける。



「あ、あの! 何か言ってもらえると、その……」


「え? あぁ、すまない!

 では気を取り直して──」



 ゴホン、と咳払いを1つ。

 両手を左右に広げ、高らかに宣言する。



「よくぞ来たな勇者達よ!

 アタシは最奥で君達を待つ!

 数多の困難を抜け、そこまで辿り着いてみせよ!」



 そこでマオは大袈裟に指をパチンと鳴らし、魔法で自らをその階層へと転移した。

 そして今度は魔王配下達が1歩前へ。



「ようこそおいでくださいました、勇者御一行様。

 私は()()()()()()()、セバスと申します。

 これより先は私達が丹精込めて作り上げたダンジョン。

 どうぞ、心行くまでご堪能くださいませ」



 魔王配下達の深いお辞儀と共に、勇者達の立っていた床が()()()()()



 ────────コメント────────


【同時複数配信】 勇者襲来だよ!

 同時視聴者数:8220


 :初手落とし穴かよwww

 :うっっっわww

 :勇者ちゃん、割とまともっぽくなかった?

 :↑だよね!なんか無理やり連れてこられた感じ

¥:初手落とし穴は鬼畜の所業なのよ……

 :待って、セバスさん、魔王配下とか言わなかった!?

 :↑やっぱり?僕の聞き間違えじゃなかった!

 :↑って事は、護衛ちゃんやその他ももしかして?

¥:魔王配下って実在すんのか……?

 :勇者ちゃんの装備、ダサかったな……


 ────────────────────



 コメント欄はツッコミの嵐。

 その他は魔王配下発言への言及や勇者への違和感だ。

 その反応をマオはダンジョンの最奥で確認しながら、勇者を迎える準備を進める。



「さぁて、そろそろかな?

 あ、視聴者の皆は分からないよね!

 実はね、あの落とし穴の途中には勇者パーティの人数分の使い切り転移魔法陣を張っていてね、それぞれが魔法陣に触れた順に別の階層に飛ぶようになってるんだ!

 で、勇者だけはアタシの階層に、直接来れるように調整したって感じなんだよね〜」



 ────────コメント────────


【同時複数配信】 勇者襲来だよ!

 同時視聴者数:10503


 :ファッ!? 同時視聴者必須じゃん!?

 :流石にアーカイブ残してくれよ!?

 :うわうわうわ、誰の階層見よう!!?

 :私はセバスさんの階層見るよ!

 :↑もう見れるようになってる!

 :BAR、雪山、闘技場、森、玉座、何でもありかよ

¥:複数端末持ちの俺、高みの見物www

 :厳しいスタッフさんって誰なんだろ?

 :↑それめっっちゃ気になる!!

 :↑厳スタ推しとして見逃したくない!

 :配下の中のメイドっぽい2人も気になる!!


 ────────────────────



 コメント欄で様々な想いが馳せる中、いよいよ魔王城ダンジョン同時複数配信が始まった。



 〜セバスニャンの階層〜



 そこは正に大人の空間。

 暗い部屋にさり気ないネオンライトの装飾、ダンジョンには有るまじきバーカウンター。

 紛う事無き、BARである。



「ふむ……もう配信されているのでしょうか?

 では、私も気を引き締めねばなりませんね。

 私の階層に来るのはいったい誰やら……」


「おや? これは転移……ですかな?」



 セバスニャンの階層に転移して来たのは老人。

 持っている杖や来ている白いローブから、賢者だという事が分かる。



「ほう、私のお相手は賢者様ですか。

 欲を言えば剣聖様が良かったのですがね……」


「ふぉっふぉっ、この吾輩に恐れをなしたか?

 猫の手も借りたくなる程の魔法を見せてあげようかの」



 ────────コメント────────


【同時複数配信】 セバスの階層

 同時視聴者数:2841


 :セバスさん激渋!!!

 :お相手は賢者か……

 :↑って事は魔法合戦か!?

 :↑セバスさんのは防御系しか見た事ないけどな

 :始まったねぇ……

 :セバスさんってどんな魔法使うの?

 :↑防御系の魔法だったはず

 :↑もっと言えば結界術だね。詳しい事は分からん

 :お猫様の活躍楽しみ!!

 :賢者に負けないで!!!


 ────────────────────



 〜クララ・カルルの階層〜



 そこは凜冽たる雪山。

 生きとし生けるもの全てを凍らさんと、今尚しんしんと雪が降り積もる。

 波の人間であれば、少しでも気を抜けば手足が壊死し、肺は凍てつく事だろう。



「わふー! それー!」


「やったな!!? そぅりゃ!」


「転移気持ち悪ぃ……で、あたいの相手はアンタらかい?

 へっ、ガキじゃねぇか?」



 クララとカルル雪合戦と洒落こんでいた所、転移して来たのは1人の女性と、狼の様な魔獣が3匹に鳥が1羽。

 腰に携えた鞭や鳥を留める為の分厚い革手袋から、彼女がテイマーだという事が分かる。



「おっ、ていまー? って奴だなぁ!」


「ワンちゃんいっぱい! 一緒に遊ぼーね!」


「はっ! ガキだからって容赦はしねぇぞ?」



 ────────コメント────────


【同時複数配信】 メイドちゃん達の階層

 同時視聴者数:2096


 :どえらい可愛いなこの子達……

 :雪合戦しながら待機とか呑気だな……

 :戦えるの? ってか遊ぼうって言った?

 :お姉ちゃんの方はともかく、もう片方は子供じゃん

 :テイマー口悪いな……

 :メイドちゃん達ギャンかわなのだが???

 :スタッフさんにメイドがいるの凄ぇな!

 :ちっちゃい子の方、大丈夫かな?

 :↑心配で他の階層が見れない……

 :テイマーに似て、従えてる魔獣もガラ悪いな……


 ────────────────────



 〜マイヤの階層〜



 そこは戦士が生死を賭ける闘技場。

 観客こそ居ないものの、大きな円形の砂場に1人佇むマイヤは、さながら決闘相手を心待ちにする戦士そのものである。



「よくぞ参った! いや違うっすね……

 待ち侘びたぞ! これも違うっすね……うーん……」


「……ここは? そうか、転移させられたか。

 そして、ここの階層主が貴女という訳ですね?」



 この闘技場に転移して来たのは若き青年。

 フルプレートに付く生々しい傷痕の数々が、彼が歴戦の猛者である事を物語っていた。

 携えた立派な剣と、強者ならではの足運びや眼光から、彼が剣聖である事が分かる。



「うっっしゃ!!! 大当たりっす!!

 君、剣聖っすよね!?

 いやぁ〜、今世の剣聖と戦ってみたかったんすよ!」


「剣聖である私だから分かります。

 貴女、相当な手練ですね?

 剣術の頂に立つ者として、手加減は一切致しません!」


「分かってるね、そう来なくちゃ!

 ようこそぼくの階層『ぶっ殺シアム』へ!

 心行くまで死合うっすよ〜!」



 ────────コメント────────


【同時複数配信】 護衛ちゃんの階層

 同時視聴者数:2325


 :護衛ちゃん絶好調だな!

 :ぶっ殺シアムって……

 :相手は剣聖か……

 :護衛ちゃんも剣を使うのかな?

 :護衛ちゃんウッキウキで草

 :剣聖君、割とイケメンで歯ぎしり止まらん

 :↑涙拭けよ

 :ぶ っ 殺 シ ア ムwww

 :↑インパクト強過ぎて、何も頭に入ってこない

 :脳筋大怪獣バトル開幕じゃん


 ────────────────────



 〜ギーシュ・シズの階層〜



 そこは静寂に包まれた夜の森。

 そんな鬱蒼とした地に、唯一月明かりが射す開けた場所がある。

 そこにギーシュとシズは切り株に腰掛けて、転移してくる勇者パーティの一員を待っていた。



「非戦闘員の僕が、何でこんな事してるんでしょうか?」


「そ、それを言ったら、シズも非戦闘員だよ?」


「そうなんですよね……

 せいぜい非戦闘員同士、頑張りましょうか?」


「あら? 転移ですか……勇者様と離れてしまいましたね」



 この階層に転移して来たのは細身の女性。

 修道服に身を包み、神々しいオーラさえ見えそうな雰囲気から、彼女が聖女だという事が分かる。



「えぇと、聖女さんですかね?

 貴女の足止めは僕達2人が担当しますので、どうかお手柔らかにお願いします」


「……2人? 貴方だけではなく?」


「えっ? あっ!

 ちょっと、恥ずかしいなら姿は見せなくていいから、ちゃんと手伝ってくださいね!?」


「貴方達が魔族なら、わたくしの聖魔法が効きますかね?

 見ての通りか弱い乙女ですので、どうか御容赦を」



 ────────コメント────────


【同時複数配信】 厳しいスタッフさん達の階層

 同時視聴者数:2964


 :厳スタさん来た〜〜!!のか?

 :竜人族の人が厳しいスタッフさんなのかな?

 :↑だとすれば、思ったより優しそうだよね。

 :2人居たはずだけど、女の子の方消えちゃった……

 :フードの女の子、声小っっっちゃかったね!

 :↑でも、めっちゃ可愛い声してたな

 :ここは聖女か!! バトル……とかは無さそう?

 :↑聖女が脳筋武闘派だったら面白い

 :厳スタさんが厳しいのマオちゃんにだけ説

 :困ってる厳スタさん、推せる……!!


 ────────────────────



 〜魔王(マオ)の階層〜



 そこは簡素かつ厳かな玉座の間。

 玉座に坐するは魔界全土を統べる者、魔王。

 足を組み直しながら、優雅に勇者を待っていた。



「もうそろそろの筈なんだけどな?

 あっれ〜、調整間違えたかな?」


「わわっ! あれ、落とし穴じゃない?

 ここは? ……え、魔王の人!?」


「遠路遥々よく来たね、召喚された勇者さん!

 さて、早速だけど……」



 マオは玉座から勇者の前へ飛び降り、彼女と優しく目線を合わせて言う。



「ゆっくりお話しをしようか?」




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