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【アーカイブ28】 身バレ




「せっかくだし、ここに来るであろう勇者を撃退する配信にでもしてみようか!?」



 突拍子も無いマオの思い付き。

 恐らくは思考をする前に出てしまった類いの発言。

 無論、それをみすみす聞き逃す視聴者など皆無。



 ────────コメント────────


【コラボ!】 待ちに待った再コラボ

 同時視聴者数:2288


 :マジか……!!!?

 :おいおい、ヤベェな

 :有給もぎ取ってくる!!!

¥:魔王城のダンジョン部分が見れるのか……!

 :↑それって凄い事なの?

 :↑普通の所と違って、一般公開されてないからな

 :↑配信で国家機密レベルの物が見れると思うんだ

 :凄すぎんだろ……

 :後はスタッフさんの許可次第かしらね?

 :↑まぁ、1番の鬼門だわな


 ────────────────────



 魔王城のダンジョンは、一般人では基本的に立ち入る事が出来ない為、それを見られるかもしれないと言うのは多くの視聴者の興味を引いた。

 そうなると頭を抱えるのは勿論ギーシュ。


 マオは一応、ギーシュの方に恐る恐る目線を送る。

 鬼の形相で睨まれる事を覚悟していたマオだったが、ギーシュは少し考え込む素振りを見せた。

 しばらく考え込んだ後、まさかのGOサインがでた。



「えっ、ホントかい!? あっ……素が出ちゃった」


「みんな良かったね! スタッフさんの許可が出たよ!

 私が言うのもなんだけど、本当に大丈夫なの?」


「スタッフさんが大丈夫って言うなら大丈夫!

 こういう事に関しては、アタシより有能だからね!」



 ────────コメント────────


【コラボ!】 待ちに待った再コラボ

 同時視聴者数:2405


 :配信者がそれでいいのか??

 :ってかダンジョン配信が許されたのすげぇ!

 :今来たけど、どういう状況?

 :↑勇者襲来につき魔王城ダンジョンの配信決定

 :↑マジか! 解説ありがとう!

 :スタッフさん、よくOK出したな……

¥:うぉぉおおお!!! 今からもう楽しみ!

 :心做しかクオンちゃんも嬉しそうで良かった!!

 :その配信は絶対伸びるし、護衛ちゃんも胸張れるな

 :↑護衛ちゃんの勇者リベンジマッチとか見たい


 ────────────────────



 魔王城(ダンジョン)の配信が決まった事で、コメント欄が怒涛の速さで流れて行く。

 その中で、勇者とマイヤの戦いを望む投稿が見えたので、マイヤが返事を返してみる。



「いやぁ、期待されてる所悪いんすけどね、ぼくは勇者とは戦わないっすよ?

 なんて言うかな……すこぶる相性が悪いっす!」


「強さ云々とかじゃなくて相性?」


「そうだなぁ……

 例えばっすけど、威力が同じ水鉄砲で撃ち合ったら、当然引き分けるっすよね?」



 マイヤは水流を指で表し、ジェスチャーをしながら解説を続ける。

 クオンも頷き、その解説に聞き入る。



「そこで、威力は同じだけど、片方は湖から水を供給し続けていたら、結果はどうっすか?」


「普通の水鉄砲の方が持久負けしちゃう……かな?」


「そう、それで負けるのがぼくっす。

 で! ここからが大事っす!

 同じ威力の水鉄砲を長時間撃ち合ってたら、周りはどうなるっすか?

 びっっちゃびちゃっすよね?」


「……もしかして、周りへの被害がすごい?」



 クオンは少し考え、答えを出した。

 その答えに満足いったようで、マイヤはうんうんと頷き、更に補足を加える。



「もっと言えば、ぼくと勇者が本気でやり合うと、()()()()()()()()()()()っす!

 大戦時代だと地図なんて週1で変わってたっすけど、流石に現代じゃダメっすからね! ははは!」



 ────────コメント────────


【コラボ!】 待ちに待った再コラボ

 同時視聴者数:2513


 :地形が……??

 :笑い事じゃねぇな!

 :例え話が分かりやすい!

 :はははじゃないんだよな……

¥:持久負けするだけで勇者と互角なのかよ……

 :護衛ちゃん強過ぎんだろ……

 :剣術の護衛ちゃん、魔術のマオちゃん!

 :↑戦力パないチャンネルだよな。

 :改めて産まれたのが平和な時代で良かった。

 :他のスタッフさんもヤバい経歴持ちなのかな?


 ────────────────────



 マイヤの解説がひと通り終わり、コメント欄は相変わらずのざわめきを見せる。

 あまりにも大量に質問やコメントが来るので、マイヤはマオに主導権を投げる。



「はいはーい! 護衛ちゃんが困ってるから、みんな質問責めは止めてあげてね!」


「みんな落ち着いてね〜!

 で、マオちゃん。この配信はもうちょっとで切り上げて、その勇者を迎える準備とかしちゃう?

 役に立てるなら、私も手伝うんだから!」


「え? ホントに!? それは助かっちゃう!

 それじゃ、今日の配信はここまでにしておこうか!

 ダンジョンでの準備中の写真とかは、Zawameki(ざわめき)のアカウントで投稿するから、今の内にフォローしといてよね!

 あっ、課金メッセージ送ってくれた人は、ちゃんと名前読み上げるからあんしんして!

 それじゃ早速読み上げていくよ〜!」



 数分に渡り、時折その内容に触れつつ、課金メッセージを送った人達の名前を読み上げ、無事に配信を終えた。

 コラボ配信としては残念な結果かもしれないが、これからの事を考えると注目度は最高だ。

 それに何より、クオンにとってもメリットはある。

 マオが注目される程に、唯一のコラボ相手であるクオンも当然に注目が集まっていく。


 配信後、機材の片付けを終えてギーシュのお説教も終わった頃、いよいよ勇者について考え始める。

 どの程度の規模で攻めてくるか分からない以上、国の重鎮を含めた対策会議は必須。



「な訳で……今から全員招集して会議するから、クオンちゃんはギーシュ君達と待っていてくれるかい?

 お爺さん方を説き伏せて、なる早で終わらせるから」


「わ、分かった!

 邪魔にならないように大人しくしとくね……」


「じゃあその間にクオンさんには、僕の動画編集を手伝って貰っても良いですかね?」


「えっ、見せてもらっても良いんですか!? 手伝う!」



 興味津々な様子でクオンがギーシュに詰め寄る。

 クオンは普段から配信や編集を1人でこなしている為、他の配信者のそういう事に興味を隠し切れない。



「クオンちゃんをよろしく頼むよギーシュ君。


 セバスニャン、会議室はどうかな?」



 通信魔法を使い、セバスニャンに会議室の確認を取る。



『ええ、いつでも使えるよう手配致しました。

 私の方で招集命令をかけておきましたので、遠方の領主以外は直に集まるかと』


「早いな、助かるよ。我も今から向かう」



 そう言い残し、マオは会議室へと急いだ。





 重厚な雰囲気の会議室。

 長方形のテーブルを囲むように重鎮達が腰を据え、視線は魔王へ向けられる。

 会議のため、現在の容姿は勿論ルディウスの姿。

 そんな中でルディウスは議題をあげる。



「よく集まってくれた。

 緊急事態の為、端的に言おう。

 勇者襲来の可能性が魔王都市にある」


「っ!!?」


「なんですと?」


「魔王様、それは確かな情報なのですかな?」


「ああ、我の直属の配下の情報故、確かだ。

 勇者を召喚したのは皇国。

 向かってくる軍の規模は現在探らせている」



 魔王は重鎮の質問に丁寧に回答していく。

 重鎮達の現状を把握が完了し、次は対策。



「まず、皇国側に近い領の住民だが、避難民を受け入れられる領はあるかね?」


「それでは隣接する自分の領地であれば、避難民全員を受け入れられるでしょう。

 しかし、食料が足りません」


「助かる。食料に関しては、他領から商人を介して届けられるよう手配させよう。皆も良いな?」


『はい、魔王様』


「次に──」



 とんでもない速さで重要な事が決まっていく。

 長命な魔族にとって、失敗しても時間の流れで大抵の事は解決する事を知っているため、決断がほぼ即決なのだ。



「では最後に、魔王城のダンジョン部分へ勇者を導いた後の話をしよう」


「勇者か、大戦時代を思い出しますなぁ……」


「えぇ、年甲斐も無く血が滾るわい!」


「血湧き肉躍っている所悪いのだが、魔王城に来る勇者一行は我と魔王配下で対処したい。

 君達だと勇者を殺しかねないからね……

 その代わり、皇国が軍をよこして来た場合は皆の力を借りたい訳だが、それでいいか?」



 血気盛んな老人達を宥め、魔王城の主導権を握る為に提案する。

 怒涛の勢いで反対されるのを覚悟していたが、予想に反して好意的な反応があった。



「そうか……残念であるが、確かに我々ではやり過ぎてしまうかもしれませんな」


「儂らは大軍を相手する方が良いからな!

 魔王城は魔王様に任せましょうや。のう? 皆の者」



 重鎮の中でも特に古株の者がそう言うと、他の重鎮も頷いて肯定した。

 ダンジョンの主導権をあっさり手に入れてしまった魔王は、困惑しながらも会議を進め、最後まで問題無く締めた。

 そして帰り際、クオンの元に向かおうとしていたルディウス(魔王)を古株の重鎮が呼び止めた。



「魔王様、少々よろしいですかな?」


「現在我々の中でも、気付いているのは儂1人だけだと思っております」


「気付く……とは?」


「魔王様が配信者『マオ』として活動しておる事です」


「…………」



 至って冷静な表情を保っていたが、頭の中では言い訳の滝が怒涛の速さで流れる。

 長い沈黙に重鎮はハッと何かに気付き、話を続ける。



「別に責めようなどとは思っておりませんぞ?

 逆にその……アレですよ。

 スゥゥ……その、会議が始まるつい先程まで、コラボ配信をしてましたよね?」


「あ、あぁ。確かにしていた。それで、何を……?」


「お恥ずかしい話ではありますが、その……

 まだ場内に居るのでしたら、く、クオンちゃんのサインなどは貰えないでしょうか!?」


「……え、クオンちゃん???

 え、なになに? どういう事なんだい??」



 重鎮はわざとらしく咳払いをし、だいぶ遠回し且つ、言い訳がましく経緯を話した。

 掻い摘むと、息子夫婦がハマっていた配信者『クオン』に自分もハマってしまった。

 そのクオンのコラボ相手に魔王に似た威圧を感じた。

 そして、今回のコラボ配信でそれは確信に。

 それで可能であれば、是非とも屋敷でクオン(最推し)のサインを額に入れたいとの事だった。



「はぁぁ……成程ね、事情は分かった。

 一応交渉はしてみるけど、決めるのはクオンちゃん本人だから、分かってるね?」


「それは当然でしょう。

断られればこの老体、潔く引き下がる事を誓います。

 正直こういう事には疎く、マナー違反なのかもしれませんが、どうか!」


「分かった、着いてきてくれ」



 ◇



「……と、言う訳なんだけど……」


「ふぁふぁふぁ、ファン!? 私の!?

 キャー、どうしよ!? サインなんてした事無いんだけど大丈夫かな!?」


「その反応を見て安心したよ。

 もしかしたら配信者として、ルール違反をしたんじゃないかと心配だったんだよね……」



 マオの配信部屋に帰って来て早々、クオンに事のあらましを説明して今に至る。

 ギーシュは「かなりグレーですからね?」と釘は刺されていたが、クオンの喜び様を見てそれ以上は何も言わなかった。



「その、マオちゃん……凄く嬉しいんだけど、サインはお断りしようかな、書いたことないし……

 あ、でも!! その人とのツーショット写真なら撮れるよって伝えさせて!」


「わ、分かった! 彼は部屋の外にいるから、クオンちゃんも来てくれるかな?」


「モチのロンだよ!!!」



 思いの外ノリノリなクオンを連れ、古株重鎮が待つ廊下へと移動する。

 マオが扉を開け、真っ先に()()()()だけで『余計な事は言うなよ』と伝える。

 頷いたのを確認し、クオンと対面させる。



「初めまして! クオンのチャンネルのクオンです!

 貴方が私のサインを求めてくれた人……だよね?」


「ほ、本物……えっ、ご本人登場!!?

 えっと、儂が貴女のサインを求めた張本人です!」


「やっぱり! ありがとね!

 でも、サインは書いた事ないから、今日は他の事で満足して欲しいんだ。

 次に会う時までにはサイン考えておくから! ね?

 だから、今回は私とのツーショット写真!」


「つつつつ、ツーショットぉ!!?

 待ってくだされ! 今身なりを整える!

 推しの隣に並ぶなど、罰当たりでは無いだろうか!?」



 唐突な提案におろおろの重鎮。

 しかしクオンは物ともせず、彼の手を両手で掴んで握手を交わす。

 重鎮、無事昇天。



「ははは、数年は手が洗えんわい……

 スゥゥハァァァ……よし、落ち着いたぞ。

 こんな胸の高鳴り、大戦以来じゃぞ……」


「え、大戦を生き抜いた人なんですか!?

 凄い! 魔族の未来の為に戦ってくれたんですね!」


「ハゥァッ!!!?」



 クオンのファンサービスに圧倒される重鎮。

 ただでさえこの有様なのに、ここから更にツーショットを撮る訳だ。



「それじゃ、一緒に写真撮るよ?

 スマボは持ってるよね? はい貸して貸して!

 じゃ、撮るから近くに寄ってね!

 はい、チーズ!」



 カシャっとスマボのシャッターが切れる音。

 画像を確認すると、満面の笑顔でピースを披露するクオンと、困惑しながらも一緒にピースをする重鎮の姿。

 それを確認すると重鎮は放心状態に。



「満足したかい?」


「あ、ありがとうございます!

 魔……マオさん、それにクオンちゃんも!

 我が生涯に一遍の悔いなし!!!」


「それは良かったよ。ね、クオンちゃん?」


「うんうん! その写真、大切にしてね?」


「当然です!! 我が家の家宝にしますとも!」



 重鎮は何度も礼を述べ、手を振り去って行った。

 クオンとマオはそれを見届け、早速本日のメインイベントの話題へ移る。



「さて、早速で悪いのだけど……ダンジョン整備を手伝ってくれるかな?」


「任せて! 今テンションぶち上がってるから、何でもできそうだよ!」


「いいね!

 それじゃあ早速、全員で向かうとしようか、魔王城のダンジョン部へ!!」



 こうして、勇者を迎え入れる為の魔王城の準備が始まるのであった。




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