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【アーカイブ26】 何かが起こる訳も無く

最近更新遅くて申し訳ない……




「ほぇぇ……本当に魔王城だぁ……」



 クオンは魔王城を見上げながら、見たままを呟く。

 いまいち状況を理解し切れていないからか、頭上に疑問符を浮かべながらもここまでやって来た。



魔王城(ここ)に来るのは初めて?」


「ううん、中等部の時に修学旅行で中を見学したよ。

 この歳でまた来る事になるとは……

 マオちゃんってもしかして……って言うか、確実に関係者の人だよね?」


「ま、まぁそれは中で詳しく話そうか!

 さぁ! 入って入って!」



 マオは強引にクオンの背を押し、魔王城の城内へと彼女を連れ込んだ。

 修学旅行では見る事の出来ない魔王城の裏側に、少々興奮気味のクオン。

 そのまま見学気分のまま歩いてもらい、マオの配信部屋の前まで案内する。



「ここがアタシの配信部屋だよ。どうぞ〜」


「お、お邪魔しまーす……わぁ!

 いや、広っっろ!!」


「元は物置きとかだったけど、ギーシュ君が特に頑張ってくれてね。

 こうして配信できる環境を整えてくれたんだ」



 部屋の最奥、配信スペースにあるソファーにクオンを座らせ、落ち着かせる。

 未だソワソワしながら辺りを見回すクオンはさて置き、マオは隣に座って話し出す。



「クオンちゃん、アタシね……()()なんだ」


「…………? そうだね?

 ご当地魔王のマオちゃんだもんね?」


「いや、そうではなくてね……

 心して聞いてくれるかい?」


「う、うん! 絶対に秘密は守るよ!

 でも、無理はしないでね?

 言える時にでも良いから」



 クオンの優しさにマオは微笑み、意を決して秘密を彼女に暴露する。



「アタシの……我の正体はね、今代の魔王なんだよ。

 幻王ルディウス、それが我の本当の姿だ。

 あ〜待って待って! そんなに畏まらないで!」


「いやいやいやいや!

 それが本当なら私、かなり不敬罪なんだけど……?」


「そんな事にはならないよ。我がさせないとも。

 それはともかく……皆! もう入って来ていいよ!」



 マオは配信部屋の扉に向けて呼びかける。

 するとバタンとドアが開き、聞き耳を立てていたであろうマイヤやクララが雪崩のように倒れ込んで来た。

 その様子を彼女達の後ろで控えていたセバスニャンが見て、ため息を1つ。



「だから言ったではありませんか……そうなりますよと」


「クララが押すからっすよ!!」


「んなっ!? アタシが(わり)ぃのか!?」


「死なば諸共っすよ!」



 セバスニャンは言い合う2人の首根っこを魔法で掴み、宙に浮かせ上げて鎮火させる。

 その背後から、カルルとシズが静かに入室して、隠れるようにギーシュの後ろへ。

 首根っこを掴まれたまま、マオ達が座るソファまで持っていき、雑に落とす。



「ふぎゃっ!」


「痛ってぇ……一応アタシら、レディなんだぜ?」


「であれば、もう少し慎みを覚えて欲しいですな。

 申し訳ありません魔王様、お騒がせしてしまい……」


「いや、構わないよ。

 2人も怪我は無いね?

 皆も知っていると思うが、こちらはクオンちゃんだ」



 マオのスタッフさん(もとい)、魔王配下達がズラっと並んで顔合わせを済ませる。

 1度会った事があるマイヤは、両手を胸の前でフリフリと振ってアピールしていた。



「あ、あの! クオンのチャンネルのクオンです!

 皆さん、どうぞよろしくお願いします!」


「僕は知っての通りマイヤっす!

 もっと言うなら、魔王配下で護衛騎士っす!」



 またしてもクオンの頭には疑問符が浮かぶが、無視して自己紹介は続く。



「アタシはクララだ! よろしくな!

 魔王配下で、美少女メイドだ! で、こっちが──」


「えっと、あの……カルルです!

 その、魔王配下でメイド見習いをしてます。クオンお姉ちゃん、よろしくね?」


「はぅっ!!?」



 カルルのあまりのあざとさ、可愛さにクオン悶絶。

 そして慣れないお姉ちゃん呼びに、歓喜のガッツポーズを心の中でぶちかます。

 クララは拳を突き出したので、お互いの拳をコツンと合わせて挨拶とし、次の自己紹介へ。



「次は私ですかね?

 お初にお目にかかります。私の名はセバスニャンと申しましす。

 そして、魔王配下は執事の地位を賜っております故、どうぞお見知り置きを」


「よ、よろしくお願いします!

 あの、もしかしなくても、前に動画で出てきたゼバスさん……ですよね?」


「ええ。ご明察でございます。

 何を隠そう、私がそのセバスです」



 感激した様子で、クオンはセバスニャンと熱い握手を交わした。

 そして残るは、ギーシュとシズ。

 シズはまだ緊張しているようで、ギーシュに先手を無理矢理に譲り渡す。



「えっと……ご存知の通り、僕はギーシュです。

 魔王配下で、マオのマネージャーやってますね。

 こう見えて、配下の中では新人なんですよ?」


「この流れでそうだろうなぁとは思ってたけど、ギーシュさんもその、魔王配下だったんですね!

 なんか実感湧きませんね……」


「でしょうね。僕もつい最近配下に加わったばかりなので、ぶっちゃけ同じ気持ちですよ……」



 軽く談笑し終わったのを確認し、最後に深くフードを被ったシズがギーシュの後ろから挨拶をする。



「あ、え、あの……シ、シズ……です。

 その、よろしくお願いしましゅ! あぅっ……」


「よろしくお願いします!

 シズさん? はどんなお仕事をしている魔王配下さんなんですか?

 あと、どこかで聞いたことある声な気が……」


「シズは……えっと、諜報員です。

 普段は魔王城(ここ)に居ない事の方が多い……です。

 声はたぶん、気のせい……うん、絶対……」


「そうなんですか……

 何はともあれ、今日は会えてラッキーなんですね!」



 自分に会えた事をラッキーと言われたのが嬉しかったようで、こくこくと頷いて挨拶を終える。



「どうかなクオンちゃん?

 我が魔王なの信じて貰えたかな?」


「冗談では無いって分かるけど……

 魔王配下なんて噂でしか聞いた事なかったし、でも実際には皆普通……って言うと失礼かもだけど、フランクに接してくれるし」


「権力を傘にする人は、そもそも魔王配下になれないし、させないからね」



 マオは愉快そうに笑って見せるが、クオンはまだ少し緊張が残る。

 それを薄々感じたようで、表情に陰が落ちた。

 それもそうだろう。匿名のサイトで仲良くなった者が、会ってみれば自分の会社の社長であったら、今まで通りの馴れ合いが難しい事は想像に容易い。


 しかし、クオンは首を横に振って己を恥じた。

 目の前の人物は魔王様かもしれないが、それ以前に数少ない友人であるマオちゃんではないか、と。



「魔王様なのは分かりました。

 その上で、私は今のマオちゃんとの関係も崩したくありません!

 よって、引かぬ媚びぬ省みぬの精神で行きます!」



 相手が魔王だからと言って、自分からは引かない。

 相手が魔王だからと言って、媚びない。

 そして、今までの推定不敬の数々は省みない。

 と、クオンは高らかに宣言した。



「本当かい!? 良かったぁ……

 そうとなれば、皆で打ち合わせしよっか!

 待ってて、今椅子作るから」



 そう言うと魔法で床を隆起させ、長椅子を形作る。

 出来上がった椅子に配下達がぞろぞろと座り、打ち合わせが始まった。

 これだけの人数、雑談の割合が多かったのは言うまでもないだろう。



 ◇



 コラボ配信当日。

 機材のチェックをひと通り終え、いつでも配信が開始できる準備が整った。



「クオンちゃん、行けそう?

 ギーシュ君も大丈夫?」


「こっちはたぶん問題無し!

 私はマオちゃんの挨拶が終わったら、フレームインするから、いつでも行けるよ〜!」


「僕も大丈夫です!

 2回目のコラボという事で、早速たくさんのファンがコメントをくれて、かなり盛り上がっていますよ」


「いいね、分かった! じゃあ水晶球に魔力流すね!

 3! 2! 1……」



 カウントダウンの後、水晶球に魔力を流して配信が開始された。



 ────────コメント────────


【コラボ!】 待ちに待った再コラボ

 同時視聴者数:2014


 :キタキタキタキタァァ!!!

 :コラボだぁぁあ!!!

 :クオンちゃんファン達よろしく〜!

 :↑よろしくです!

 :↑キッシーの皆さんも盛り上がって行きましょう!

¥:可愛いの相乗効果に浄化されに来た。

 :生き甲斐

 :まだクオンちゃんいない感じ?

 :まおっす〜!!

¥:推し同士が仲良しで尊い……!


 ────────────────────



「もう既に盛り上がってるね!

 それじゃ、軽く挨拶からだよ!

 みんな、まおっす〜!!

 ご存知、ご当地魔王のマオちゃんと〜?」


「じゃーん! みんなこーんにちは!

 こんこんクオンとマオちゃんのコラボ配信だよ!

 今日は私がマオちゃんの枠にお邪魔してま〜す!」



 2人の挨拶が終わり、コメント欄は大いに湧き上がる。

 コラボが2回目という事もあり、2人のファンは勿論、前回のコラボを逃してしまった大勢の人達も視聴しに来ていた。

 そのおかげか、配信開始直後にも関わらず同時視聴者数が2000人を超えていた。



 ────────コメント────────


【コラボ!】 待ちに待った再コラボ

 同時視聴者数:2022


 :クオンちゃんも来た〜!!

 :クオンちゃんもすこすこのすこ……

¥:この2人のコラボでしか得られない栄養素がある!

 :初見です! 話題のコラボを見に来ました!

 :さて、今日のマオちゃんは何をやらかすのか……

 :↑やらかす前提なのやめいww

 :↑安易にフラグを立てるな!!

 :クオンちゃん可愛いよぉぉぉ!!!

 :マオちゃんの枠って事は、魔法メインかな?

 :ってかクオンちゃんの衣装、体操着じゃねぇか!?


 ────────────────────



「まぁまぁ落ち着きたまえよ!

 あと、アタシが毎回何かやらかしてるみたいな言い方、止めてよね!

 今回はコラボだよ? 何かが起こる訳も無く!!」


「一応ストッパーとして私もいるし、目の前には厳しいスタッフさんが腕組んで立ってるし、たぶん大丈夫だよ!」


「それじゃ、早速今回のコラボでの企画を説明するよ?

 それは……『わおっ♡誰でもできる、基礎魔力の伸ばし方』で〜す!

 はい! ドンドンパフパフ〜!!」



 何を隠そう、企画のタイトルを考えたのはマオである。

 魔王配下達からは総じて古いと言われたが、意地になってこのタイトル案を通したのだ。

 クオンは()()()()が流行った当時を知らない為、逆に新鮮さを感じてタイトルに賛成した。



 ────────コメント────────


【コラボ!】 待ちに待った再コラボ

 同時視聴者数:2020


 :何だろう、懐かしさを感じる。

 :マオちゃん、歳いくつなんだよ……

 :え、何? これ古い感じなの?

 :↑幻歴4〜50年くらいに流行った感じだね。

 :マジかよww

 :でも、基礎魔力の増やし方は純粋に気になる!

 :クオンちゃんの魔力ってどんなもんなの?

 :↑確か普通くらいのはずだよ。

 :マオちゃん古のBBA説ある?

 :↑まぁ、種族によっては見た目変わらないしな


 ────────────────────



 コメント欄では、マオの年齢に言及するコメントが多く寄せられた。



「レディに年齢を聞くのは、ダメな奴の初まりってアタシのスタッフさんの1人が言ってたんだけどなぁ……?

 まさかそんな人居ないよね?」



 マオの問いかけにコメント欄は、謝罪と課金による贖罪で溢れ返る。

 比較的和やかな雰囲気の中、不穏な足音が迫る。



「ともかく! 今日は誰でもできる基礎魔力の増やし方を、クオンちゃんと一緒にやっていくから、皆も動画を見ながら真似してみてね?」


「マオちゃん、早速お願いするよ!

 一応、動きやすい服装で来たんだけど、これでいいの?」



 と、学生時代に着ていたであろう体操着を披露し、マオに尋ねた。

 あちこちが学生時代よりは大きくなっている為、少々窮屈な印象を受ける。



「全然大丈夫! それじゃ、早速──」


 バタン!!


 そこまで言いかけた所で、配信部屋の扉が何者かにより勢い良く開かれた。

 いったい何事なのかと、マオとクオン、ギーシュの3人が扉の方へ振り向く。

 そこにいたのは、息を切らしたマイヤだった。

 そして、突然の登場の要件を告げる。



「魔王様! 勇者っす!

 勇者が魔王城(ここ)に向かって来てるらしいっす!!」




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