【アーカイブ24】 魔王、始動
この頃、更新頻度おそくて申し訳ないですぅ……
「魔王城って……
あぁ、もしかしてダンジョンの方って事かな?」
「その通りです!
そこでなら、多少なり融通も効くと思いまして」
魔王城。それは政務の中心地であると同時に、魔国が管理運営する最難関ダンジョンの1つでもある。
一般向けに解放はされていないが、挑む資格があると認められた者だけが、その門を通る事が出来るのだ。
例外として、勇者と呼ばれる人族が攻めて来た場合のみ、実力度外視で大迷宮の扉を開く。
「ダンジョンか……
確かにそれならば、どうとでもなりそうだね」
「ただ、立ち入りの許可を取るのが僕では不可能なので、そこだけは魔王様にお願いしたいです」
「あい分かった。許可は我が取り付けよう。
セバスニャン、段取りだけ頼めるかい?」
「畏まりました。
後ほど魔王様個人の押印をいただくので、ご準備をお願い致します」
セバスニャンは自前の手帳に軽くメモを書き残し、再び会議に耳を傾ける。
その後も淡々と会議は進められ、魔王、及び魔王配下全員に役割が割り振られた。
主な役割としては、ギーシュとシズが扇動、クララとカルル、セバスニャンが各方面への許可や下準備、マイヤはダンジョンの転移予定地の敵の一掃、最後に魔王は主役と言った所だ。
この時より、名付けて『アンチ撲滅作戦』が始動した。
◇
作戦立案から数日後、アンチ撲滅作戦の決行日。
場所は魔王都市の中でも人通りも少なく、比較的マイナーな公園。
そんな場所に、おびき出されたとも知らずにアンチ達が、わらわらと集まっていた。
その様子を茂みの裏から、シズとギーシュが確認する。
「(いやぁ、ここまで上手く行くと爽快ですね……)」
「(ぎ、ギーシュ君、しーっだよ?
それに、あ、あんな事……もうやらないから、ね!)」
「(それは何回も謝ってるじゃないですか……
いや本当にごめんなさ、痛たた……つつかないで)」
アンチ達を呼び出すのに、出会い系アプリやSNSで『シス』という偽名の架空のアカウントを作成した。
その為に、シズ本人の写真を身バレしない程度に加工して、各種のプロフィール画像に設定した上で、同じ日付けと場所にアンチを釣り出したのだ。
興味も無い出会い系アプリに登録させられたのはだ、シズが怒るのも無理は無いだろう。
ネットで検索すれば1番上に出てくるような、安くて甘い文言だけで誘い出せたのは、運が良かったのだろう。
でなければ、自分の言葉で誘わねばならなかった。
「(いやぁ、アイツらが単純で助かりましたよ……
コピペした文をまんま送っただけで、これですから)」
「(荒い息遣いがこっちにまで聞こえて来そうな、その、文面だったもんね……)」
不必要にカラフルな絵文字、やけに距離感が近く馴れ馴れしい文章、思い出すだけで2人は吐き気すら催す。
それはさておき、予定した時間に待ち合わせを装い、変装した魔王が広場へと向かう。
全てのアンチを転移の範囲内に納められる位置まで。
「全員範囲内だね。『転移』」
マオが魔法を発動させると、範囲内のアンチは魔王城の地下深く、ダンジョンの最中へと転移させられた。
『ウォロロロロロロロ……』
『ゔ、おぇぇぇ……』
『………………』
阿鼻叫喚の様相とはこの事だろう。
耐え切れずに吐く者、真っ青な顔で耐える者、気絶する者と、体調不良のテーマパーク状態である。
そんな事など気にも留めず、マオはさっさと退散した。
アンチ達が送られて来たこの場所。
本来であればこのだだっ広い部屋は、ボス部屋と呼ばれる物で、階層の主が臨戦態勢で待ち構えている。
しかし、そのボスは事前にマイヤがお片付けしてある為、現在はただの広い部屋と化している。
そんな部屋の隅で、アンチ達とは別に気持ち悪くなっている者が1名……
「うっぷ……」
「ぎ、ギーシュ君、まだ慣れてなかったんだ……大丈夫?」
シズは若干青い顔のギーシュの背を、優しくさする。
作戦決行前に何度か転移を繰り返して耐性を得たが、それでも未だに強烈な吐き気は襲ってくるのだ。
しばらく時間が経つと、アンチ達が少しずつ正気や意識を取り戻し、現状の把握を始めた。
しかしそんな暇も与えられず、彼らへのお仕置きが開始される。
『皆の者、ようこそ我がダンジョンへ。
突然だが、君達にはとある共通点がある。
それが何か分かるかい?』
部屋の中に何処からとも無く、ギーシュ達にとっては聞きなれた魔王の声が響き渡る。
しかし、そうとは知らないアンチ達の困惑は加速。
「おい、何だってんだよ!?」
「早く出せよ!」
「ダンジョンって、正気じゃねぇぞ!?」
わぁわぁと喚くアンチ達の中に、外と連絡を取ろうとスマボを取り出す者を見つけた魔王は、更に補足する。
『残念だが、連絡手段は完全に絶たせてもらっている。
こちらには優秀な結界術を使える者がいてね。
君達は現在、外界からは完全に孤立しているんだよ』
「そ、そんな……」
「俺達が何したってんだよ!」
「クソォ、今日はデートの予定だったってのに……」
その1人の発言から、連鎖的に俺も自分もとなり、もしかしてと全員が誰とのデートなのかを確認し始めた。
そして浮かび上がる『シス』という、架空の女の子。
「みんなもシスちゃんって、嘘だろ……?」
「俺だけが大好きって言ってたのに!」
「僕といい事しようって嘘だったのか!?」
口々にシスに対する悪態を付く。
至極当然の反応ではあるが、自業自得でもある。
「ぅぅぅ、恥ずかしいからやめてぇぇ……」
「シズさん、あれはシズさんではありません。
ですから……ね? そんなに顔を隠さないで……」
「で、でもぉぉ……ふぐぅ……!」
両手で顔を隠して悶えるシズ。
隠しきれていない両耳が真っ赤になっている事から、彼女の顔がどうなっているかは想像に容易い。
それはさて置き、自分達がシスという女性に騙されたと勘違いし、カンカンになるアンチ達の前に、魔王配下達がいよいよ持って姿を現す。
トップバッターは生鮮な屍人のマイヤ。
全身真っ黒なフルプレートの鎧。
右手には彼女の身長を優に超える巨剣を引き摺り、もう一方の手にはダンジョンボスの頭を手に歩み出る。
本人はかなりノリノリだ。
「なななな、なんだアレ!!?」
「ダンジョンのモンスターか!?」
「おい、あっちからも来たぞ!!」
次に姿を現したのは、2匹の狼。
その正体は、半獣人のクララとカルル。
低い唸り声をあげ、獰猛な見た目の牙と瞳をアンチ達に向け歩みを寄せる。
クララはともかく、幼いカルルは遊んで貰えるかもという期待に、揺れる尻尾が止まらない。
「そんな、勘弁してくれよォ!!」
「俺達が何したってんだ!!」
「おいおい、まだいんのかよ……」
次に現れるは、死告妖精のシズと竜人族のギーシュ。
シズだけだとインパクトに欠ける為、ギーシュが装着した、刺々しい金属性の首輪から伸びる鎖を手に持って登場する。
ギーシュは普段は折り畳んで隠している翼を、惜しげも無く広げた上に筋肉も隆起させ、竜感を醸し出す。
しかし、シズは全身を覆うフードから、ギーシュにしか聞こえないように謝り続ける。
「(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいぃ……
嫌だよね? ご、ごめんねぇギーシュ君……)」
「(微塵も気にしてませんから、静かに!
あいつらに聞こえちゃうでしょ!!)」
幸いアンチ達にやり取りは聞こえておらず、ブツブツと呪文を唱え続ける、竜を従えた怪しい魔道士にでも見えた事だろう。
「もう終わりだ……」
「俺たち、どうなるんだ?」
「あは、あははは……」
恐怖で精神がかなり消耗しているアンチ達。
そこへ、今回のメインである魔王が顕現する。
勿論マオの姿ではあるが、魔法で作りだした視認できない程のドス黒いモヤに包まれてのご登場だ。
その禍々しい姿を見たアンチ達は、目の前の人物による犯行だと瞬時に理解した。
「お前がこれを仕組んだんだな!!?」
「なぁ、許してくれよ……何だってんだよ!!」
「俺達を、どうするつもりなんだよ……」
狼狽えるアンチ達。
しかし、魔王はそれに聞く耳を持たない。
「つい先程アタシが、いや、我が言った共通点の答え合わせをしてあげよう。
ここに集められた全員が、我の配信を妨害してくれた者達なんだよ。
心当たりはあるかな? それとも、あり過ぎて分からないかい?」
何はともあれ、と魔王は続ける。
「君達は度を越してしまったんだよ。
だから、二度とこういう事が出来ないように、我が直々にお仕置きをしに来た訳だ」
そこで魔王はパチンッと指を鳴らし、認識阻害用の黒いモヤを外して、その姿をアンチ達に見せた。
「そんな、お前の仕業だったのか!?」
「ちょっと嫌がらせ受けたくらいで大袈裟だろ!」
「頼むよ! 周りの奴らを何とかしてくれよ!」
マオの姿を確認すると途端に態度が大きくなる者や、開き直る者、許しを乞う者と様々な反応を見せる。
「はい、不敬罪3点盛りセット。
君達まだ状況が理解を出来ていないみたいだね?
我は最初にちゃんと言ったんだがな……
ようこそ我がダンジョンへと」
「…………っ!?」
「なぁお前、なんか分かったのか?」
「各地のダンジョンを管理しているのは国だ。
個人で所有できる代物じゃ無い。
でも彼女は、我がダンジョンと言った……
数あるダンジョンの中で唯一、個人が所有していると言ってもいいダンジョンがあるんだよ……」
「おいおい、それってまさか……」
アンチが核心に迫った所で、正体を完全に明かす。
「ようやく察しが付いたようだね。
ここはダンジョンで、その通称は魔王城だ。
そして、我こそが魔王である。
ちなみに、君達を取り囲んでいるその子達は、我自慢の魔王配下達だ。
全員が人前に現れる事はかなり稀だからね、冥土の土産によく見ておくといい」
ここでマオはまた、指を鳴らす。
これは、アンチ達を取り囲む配下達への合図。
マイヤは引き摺っていた巨剣を肩に担ぎ上げ、クララとカルルはその鉤爪で床をガリガリと削り、シズとギーシュは特にできる事が無かった為、2人して全力で力んで見せた。
その様子を見せられたアンチ達は、ペンギンの如く密集して自分だけは助かろうと躍起になる。
「まぁそう怯えないで欲しい。
我は寛大でね、君達に選択肢を与えようと思う。
1つ目は、潔くその命を捧げる。
2つ目は、全力で足掻いてこの窮地を脱する。
最後に我イチオシの3つ目だが……」
ゴクリ……とアンチ達の固唾を飲む音が聞こえてくる。
そして魔王から提示された3つ目の選択肢は、
「端的に言えば、推し変をする事だ!!」
余りにも唐突な提案に、困惑のアンチ達。
お互いに顔を見合わせ、その中から1人が代表して魔王に質問を投げかける。
「あの、魔王……さま? 具体的にはその、どういう事なのでしょうか?」
「そうだね。要するに、君達が他の配信者にアンチをするよう仕向けている存在から、我に乗り換えれば助かるという訳だ。どうだね?」
「そ、それで助かるなら……」
「お、おい、お前……!
いや、俺も命は惜しいがな、推し変なんて……」
推し変。それは自らが応援していたり、支援する配信者から鞍替えし、別の配信者を推す事である。
通常であれば推しは増える事の方が多いが、推し変は元の推しを完全に忘れる、悪く言えば元の推しを捨てる事と同義だ。
「推し変、推し変かぁ。
でも、命には代えられないよな……」
「俺はするぞ!
推し変でも何でもしてやる!」
と、アンチ達はマオの想定より早く推し変を飲み込む。
「判断が早くて助かるよ。
全員、推し変するという事でいいんだね?
それではこの場で君達の推し、具体的に言えば配信者ガブ・リエーラをブロックし、我をチャンネル登録してもらおうか」
そう言われ、アンチ達はスマボを取り出して各々がガブ・リエーラをブロックし、マオのチャンネルをフォローしていく。
その証拠をマオに見せ、アンチ達は許しを乞う。
「よしよし、これで君達は晴れて命は助かった訳だ。
最後に君達に1つ契約魔法を掛けさせてもらう。
今日この場で起きた事や、我の正体などを口外することを禁ずる。
では行くぞ、『支配契約』」
マオが魔法を発動させると、アンチ達の首に一瞬だけ鎖のような紋様が浮かび上がり、そして消えた。
「これで、君達は自由の身だ。
帰りも我の転移魔法でお送りしよう。
あ、それと最後に、もし契約を破って口外しようとした場合、即死の魔術が発動するからそのつもりで」
「は、ちょっと待っ……!」
「『転移』!」
問答無用と言わんばかりに、マオは全員を元いた公園へ転移させた。
これにて、アンチ撲滅作戦は完遂した。
その後、某公園で謎の体調不良者続出という報道がお茶の間に流れたのは言うまでもない。
そしてアンチ達は契約通り、次回の配信からは軒並みいなくなったと言う。
◇
アンチ撲滅作戦が終わった翌日の某所。
とある人物は異変に気付いていた。
「駒が何人か減ってる……?
へぇ、面白いじゃん。このガブちゃんに堂々と喧嘩売るなんて。
この喧嘩、買わせてもらうよ。
ま、ここまで登って来られたらの話だけど、ね?
絶望的な格の差を思い知らせてあげるんだから♡」
これにて『VSアンチ編』は終わりです!
次回からは、『勇者襲来編』が始まりますので、お楽しみに!
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