【アーカイブ23】 対アンチ作戦会議
最近更新遅くてごめんね……
(´;ω;`)
配信が終わったクオンとマオは、機材の片付けもひと通り終え、2人して反省会と洒落込んでいた。
「マオちゃんごめんねぇぇぇ!!
私のせいで配信グダっとしちゃったよねぇぇ!?」
「落ち着いて! ほら、生配信は大成功だよ? ね?」
「ずびび……うん。
でも、初めてのコラボだから舞い上がっちゃって……」
「それを言ったらアタシだっていつもと違うから、緊張はしてたんだよ?
視聴者の皆も楽しんでくれたし、結果オーライ!」
配信が終わってから、やたらと悲観的になるクオンを何とか宥める。
しかし全体を見れば、大成功なのは誰が見ても明らかである。
ファンの反応はヨシ、同時視聴者数も申し分無し。
強いて言えば、マイヤの乙女心が想定よりも傷付いてしまった事くらいだろう。
「ま、マイヤちゃん……大丈夫だから、ね?
うぅ、どうしようマオちゃん?」
「ほらマイヤ、いつまでも俯いていても仕方ないよ?
この後に予定してる打ち上げで、今日は奢りで飲ませてあげようと思ってたんだけどなぁ……」
その言葉に、ピクっと反応するマイヤ。
すると、さっきまで塞ぎ込んでいたのが嘘のように飛び上がり、はしゃぎ始めた。
「いょっしゃ!! ほら皆何してるんすか!?
宴っすよ、宴! わーい!!」
「現金な奴め……まぁいいか。
お店はアタシが用意してるから、クオンちゃんの予定さえ良ければ一緒にって思ってたんだけど……」
マオはちらりと視線をクオンに向け、反応を伺う。
断られる可能性も考えていたが、勿論杞憂に終わる。
「無論行きます!! コラボが終わった後の打ち上げなんて、配信者の醍醐味とか憧れだよ!
私の小さな夢達が急激に叶えられてく感覚ぅ……」
胸の前で小さく拍手をしながら、目の前の感動を噛み締めるクオン。
承認も取れた事で、一行は早速マオが予約したお店へと移動を始めた。
◇
「えぇっと、マオちゃん……ホントにここで合ってる?」
お店に到着した一同、驚愕。
それもその筈で、マオが予約した場所は魔王都市でも指折りの格式高いレストランだった。
主な用途としては、魔界の重鎮が集まる会食や、各国のトップを迎える際に使うようなお店である。
「よし、入るよー!」
「ちょちょちょちょ!! ちょい待ち!
え、ホントにここで合ってる!?
いいの? 私オシャレはして来たつもりだけど、場違いじゃない!?」
「そんなに緊張しないでクオンちゃん。
それにここは全座席完全個室だから、気兼ねなく過ごせるんだから!」
何の問題があるのかと、レストランの受付けへ悠々と足を進めて行く。
店外で困惑している一同にマオが手招きし、ようやくその高い敷居を跨いだ。
「(マイヤさん、魔王配下的にこれは普通なんですか?)」
「(ううん、ぼくも初めて来たっすよ、こんなとこ。
魔王様のテンション、間っっ違いなく高いっすね)」
「(だよなぁ……マイヤさん、くれぐれも羽目を外し過ぎないでくださいよ?)」
「(流石のぼくも、こんなとこで羽目外せないっすよ……)」
魔王配下歴の長いマイヤも未経験らしい。
そんな場所へ足を踏み入れたのだ。
彼女の顔からは、どこか淡い悲壮感が漂っていた。
しかし、打ち上げが始まってさえしまえば、そんな憂いはある程度は無くなる。
「それでは! 初コラボ成功を祝しまして……乾杯!」
『かんぱ〜い!!!』
ガシャァァン! と、本来ならジョッキがぶつかり合う、豪快な音が聞こえるのであろうが、今回は……
無音である。
それぞれが己のグラスを目線の高さまで軽く持ち上げて、無音の乾杯。
マオ以外の各々は思っていた。
『こんな高そうなグラスぶつけられるか!』と。
料理にしても唐揚げや枝豆、ピザなんて物は出ない。
季節の香りが添えてあったり、どこぞの地名風の逸品ばかりだ。
「美味いっすね! 味は正直よく分かんないすけど!」
「ですね、どれもこれも絶品ですよ。
僕も馴染みが無さ過ぎて、よく分かりませんが……」
「それ思ってたの私だけじゃ無かったんだね、良かった……
あっ、マオちゃんそっちのお料理取り分けてくれる?」
「はいはい、こちらに。
ギーシュ君ちゃんと食べてる?
マイヤは……言うまでもなくだね。
クオンちゃんも食べてみたいのあったら注文してね!」
高級店と言えど完全個室のため、少しずつ緊張感は緩みつつあった。
何気ない会話の中で、今までの動画の事や、配信ノウハウなどをお互いに語り合う。
配信者同士息も合い、お酒も進む。
「うぇへへ、マオひゃん……今日はぁ、楽しかったぞぉ!」
「の、飲み過ぎてない? 呂律が回って無いけど……」
「これくらい大丈夫らよぉ……むにゃ……」
「おぉう、突然寝ちゃいましたね……」
クオンが恍惚とした表情でダウン。
マイヤもはしゃぎ疲れて大人しくなってきた所で、解散の流れとなった。
酔って寝てしまったクオンはギーシュが背中に背負い、クオンの工房まで送り届け、マオ一行も帰路に。
◇
あれから数日がたった頃、彼女のファンを名乗る複数人からギーシュへと連絡があった。
ギーシュやマオが管理する、大手SNSアプリZawamekiのDMにて、アンチを特定した(・)と。
ギーシュは内容を詳しく読み込み、魔王に報告できるようにまとめていく。
ある程度情報がまとまった所で報告書を作成し、魔王の元へ向かった。
何度か扉をノックすると、執務室の中へと通される。
執務室の椅子では、ルディウスの姿の魔王が書類の山に埋もれて、いつものように死んだ目で作業を淡々とこなしていた。
「魔王様、報告書を作って来たのですが……」
「ほ、報告書……? 君まで我を追い詰めようと?」
「んな訳無いでしょ……
これは、魔王様のアンチについての報告書です。
クオンさんのファンの方々が、マオのアカウントを通して僕に教えてくれたので、軽くまとめたんですよ」
「おお、それならば話は別だ。今すぐ読もう!」
魔王の目は突然生気を取り戻したが、横にいる者に止められてしまう。
「魔王様、まずは目の前の書類の山を片付けてからにしてもらえますか?
ギーシュ殿、そちらの報告書を預からせていただいても?」
「はい、構いませんよ。
なんならセバスニャンさんも読んでみてください」
「ええ、私も目を通しておきましょう。
ありがとうございます、ギーシュ殿。
この量でしたら、2時間程度で捌いてもらうので、リビングで寛いでいてください」
しばらくすると、げっそりした魔王と満足気なセバスニャンが執務室から戻って来た。
「お待たせしました。
報告書も簡潔で、良い出来でした」
「ありがとうございます!!
セバスニャンさんに褒めてもらえると嬉しいです」
「そうだセバスニャン、我にも読ませてくれないか?」
「どうぞ」
ルディウスは報告書を受けとると、数秒で内容を把握し、命を下す。
「魔王配下を集めてくれ。アンチ対策会議を開く」
「畏まりました」
魔王の命からほんの数分で、全魔王配下がリビングに招集された。
シズだけは遠方にいる為、スマボでのリモート出席だ。
「で、どうされたんすか魔王様?」
「うむ。実はだな、かくかくしかじかで、我の配信に度々現れていたアンチの正体が色々と割れたのだ。
そこで、そろそろ行動に移そうとな」
ルディウスがマイヤに事情を説明すると、半獣人のメイド少女クララは嬉しそうに身を乗り出す。
「おっ! 殴り込みか!? 楽しそうだなぁ!」
「暴力沙汰は避けたいが、激熱な灸は据えるつもりだよ」
「で、具体的には何をするつもりなんですか?」
ルディウスは一呼吸置いた後、それなりに自信を持った表情で答える。
「アンチ達を1箇所に集めて叩こうと思う。
その時に、我々はマオとスタッフ達では無く、魔王と魔王配下として出迎える」
「正体を明かす……と?」
「リスクは多少なりあるだろう。
ならばそのリスクを遥かに超える、トラウマを植え付ければ済む話だとは思わないかい」
「僕は立場的に賛成は出来ませんが、本気なんですね?」
ギーシュは自分の意見をはっきり言った上で、魔王の言い分を優先する。
そのギーシュの問に、マオは彼の目を見て静かに頷いて見せた。
「分かりました……
やるなら徹底的にやりましょう。
完膚なきまでに、何処にも口外できないように」
「叩くってもアンチは何人もいるっすよね?
どうやって1箇所に集めるんすか?」
「そこなんだよね……我も良い案が思い付かなくてな」
魔王であるルディウスでは良い案が出なかったが、配下の中にこういう事に強い者がいる。
「それに関してなのですが、僕とシズさんに任せて貰えませんか?
この中だと、恐らく僕達が適任ですので」
「何か案があるのかな?」
『ぎぎ、ギーシュ君……その、シズで大丈夫なの?』
「勿論です! たぶんですけど、僕とシズさんでしか出来ないと思いますよ?」
リモートの画面越しでも慌てているのが分かる。
しかし、ギーシュにそうまで言われてはシズも受け入れる他なかった。
「集める方法は後々説明するとして、懲らしめるのはどうつもりなんですか?」
「そうだなぁ……言うのは簡単だが、具体的にどうすれば良いのだろうか?
我が魔法を使えば、塵も残らないだろうしね……」
「精神的に追い込むんだよなぁ……
アタシが来たヤツらに一言『だっさ、無理』って言えばイチコロなんじゃねぇか!?
美少女のダサいは効果抜群って、漫画で読んだぞ!」
有効ではあるだろうが、一部界隈ではご褒美にもなるという理由で、クララの案は保留される。
その他にもいくつか案は出されたが、どれもピンと来ないか、余りにも危険過ぎる物ばかりだった。
全員が頭を捻る中、またしてもギーシュが思い付く。
「魔王様って、転移の魔法が使えましたよね?
それも複数人同時に移動できる規模の」
「うむ、まぁ使用は出来るよ。
我の手が届く範囲に対象が居ないと難しいけど」
「いえ、それだけで充分です!」
「それにしても、何処に転移させるつもりだい?
深海とか、火山の火口上空とか?」
「その息の根止めるタイプの思考、捨てましょうよ……
あと転移場所ですが、魔王城がいいです」
と、ギーシュは敵を魔王城へ迎え入れる策を出した。
果たして、その策とは──。




