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【アーカイブ22】 最高傑作の失敗作




「これだけの魔力量があれば……

 よし……マオちゃん、挑戦してみよう!

 私史上、()()()()()()()()に!!」



 そう言うやいなや、ごちゃごちゃと機材が置いてある工房の奥の方から、目当ての物が入った箱へ一直線。

 箱はマオの身長程の大きさがあり、マオよりも背が低いクオンは四苦八苦しながらも、何とか水晶球の画角までその箱を引き摺り出した。



「ぜェ…ハァ……フゥ〜、重かった!

 マオチャンは初めましてだよね?

 これこそが私の最高傑作。

 その名を『魔力変形型合成防具エルゼリオン』。

 さぁさ、とくとご覧あれ!!」



 息も絶え絶えだが、クオンは箱に魔力を流して箱を勢い良く解錠する。

 そういう物なのか演出なのか、箱の中から溢れた白い煙が地面を這うようにして広がる。

 中から姿を現したのは、パッと見だと魔界で初等部の学生が背負う、()()()()()に類似した鞄だった。

 はるか昔、異世界から迷い込んだ人族が広めて回り、いつしか世界的に伝統ある装いとなった、それはそれは歴史がある鞄だ。

 色は半透明な赤色で、中身は謎の液体で満たされているのが見て取れる。

 所々から見える配線が、メカっぽさも演出している。

 しかし──


「…………これ、背負うの?」



 マオは困惑の表情を見せるが、それもそのはず。

 ランドセルのイメージは、飽くまで初等部の学生向けの物であり、決して幻歴元年から生きている魔族が背負う物ではない。



 ────────コメント────────


【コラボ!】話題沸騰の()()()と!?

 同時視聴者数:2516


 :お〜困ってる困ってる

 :まぁ抵抗あるよね……

 :可愛いからヨシっ!

 :この時点で大人が装備するとダサいの確定なんだよ

 :皆さんこれ、更にダサくなります

 :マオちゃんもこれの餌食になるのか……

 :ほら早く背負うんだマオちゃん!

 :↑マオちゃんのファン鬼なの?

 :↑そこに愛はあるんか?

 :誰もを平等にダサくする、畜生ランドセル降臨


 ────────────────────



 などと、コメント欄では言いたい放題。

 クオンのファンを持ってしても、そう言わしめる。



「うんしょ……っと!

 マオちゃん、背負ってみる?」


「ちょ、ちょっと待ってね……っ!

 そうだ! まずは常人が装備するとどうなるのか、アタシのファン達に見せてあげたいなぁって。

 そ・こ・で……今日はスタッフさん2人が画面外に居るんだけど、どう?」



 突然話を振られた両者の反応は正反対であった。

 方や首がもげそうな程横に振って拒否の意を示し、かと思えばもう片方は、好奇心で爛々と輝かせた目を向けて肯定の意を示す。



 ────────コメント────────


【コラボ!】話題沸騰の()()()と!?

 同時視聴者数:2577


 :マオちゃんのスタッフさん?

 :↑そうそう、かなり有能揃いで有名なのよ

 :どのスタッフさんが来てんだろ?

 :激渋お猫様来てくれッ!!

 :スタッフいるのいいな……

 :クオンちゃんのスタッフになりてぇ……!

 :↑なりたいって思えるだけいいぞ

 :↑マオちゃんのスタッフは命のストック足りない。

 :マオちゃんのスタッフ何者なんだよ……

 :それ所か、マオちゃんが何者かすら知らないからな


 ────────────────────



 スタッフさんの登場に多くの期待が寄せられる。



「みんなスタッフさんの事、割と好きだよね?

 セバスを所望してる人もいるけど、今日は厳しい方のスタッフさんと、もう1人はみんなには初めましてのスタッフさんだよ!」


「私もスタッフさんと色々お話しとかしたけど、個性的な人達で面白かったよ〜!

 厳しい方のスタッフさん? ……は鬼の形相で拒否してるから、もう1人に装備してもらいましょう!」



 と言うとクオンは、画面外のマイヤに手招きをする。

 すると、微塵の躊躇いもなくクオンとマオの間へ飛び込んでいった。



「紹介するね! この子はスタッフさん……ではあるんだけど、どちらかと言えば()()()()、かな?

 どちらにせよ頼れるスタッフさんの1人だから、みんなもよろしくしてあげて!

 それじゃ、軽く自己紹介しとこっか?」


「ご紹介にあずかりましたァ!

 僕の事は気軽に激マブ護衛ちゃん、とでも呼んで欲しいっす!

 こう見えてかなり強いんすよ!

 みんな、よろしくねっ!」



 ────────コメント────────


【コラボ!】話題沸騰の()()()と!?

 同時視聴者数:2620


 :僕っ娘……だと!!?

 :また違うタイプの美少女が出てきた!

 :護衛ちゃーん!!

 :あまりにも元気過ぎる……

 :護衛って事はそれなりに強いって、コト!?

 :可愛いがいっぱいで満足なり……

 :どれくらい強いんだろうか?

 :↑マオちゃん陣営だし、相当だと思う。

 :クオンちゃんにお友達いっぱいで感激……

 :圧倒的な陽の波動を感じる!


 ────────────────────



「はいはいコメント欄静かに!

 それに、陰キャ()にだってお友達はいるんだぞ!?

 さぁさぁ護衛ちゃん、早速これを背負って魔力を流して見て!」



 ランドセルを箱から取り出し、マイヤが背負い易い様に肩ひもを彼女の方に向ける。


 意気揚々とそれを背負ったマイヤは、コメント欄の要望に応えて色んなポーズを披露して見せる。

 元々の低身長と、彼女の底抜けに元気な性格や言動も相まり、ほとんど違和感を感じさせない。



「ちやほやされるって、気持ちいいっすね!

 えへへ……なんだか僕、可愛くなった気分っす!」



 ある程度満足したマイヤは気を取り直して、背負った魔力変形型合成防具エルゼリオンに魔力を流した。

 すると、中を満たしていた液体が外に流れ出し、マイヤの身体を覆う。

 うにょうにょとマイヤを覆う液体は、徐々に形を固定させ装備が完成した。



 ────────コメント────────


【コラボ!】話題沸騰の()()()と!?

 同時視聴者数:2808


 :あぁ、うん……

 :気を確かにな……

 :また被害者が生まれてしまったか……

 :護衛ちゃんは可愛いよ。護衛ちゃんは。

 :まぁ、ダサいよな……

 :ダサさが可愛さを上回る事ってあるんだな

 :可愛いが無敵じゃない事を証明する物だろ……

 :このダサさのマオちゃん見た過ぎる!!

 :↑それは確かにみたい

 :クオンちゃん、満足そうな顔しちゃって……


 ────────────────────



 哀れみコメントが大量に流れて行く。

 当の本人も、クオンが気を利かせて用意した姿見に映る自分の姿を見て、それはまぁ絶句した。

 さながら蛮族の頭領の如き装備に、肩には鉄球から棘が生えた様な形の肩当て。



「わァ…………ぁ…………」


「「泣いちゃった!!?」」



 マイヤはあまりのダサさに、相当なダメージを受けた。

 クオンとマオの2人は何とか宥め、装備を解除する。

 装備を脱ぎ魂が抜けた様子のマイヤは、ギーシュの横で静かに体操座りをしている。


 しかし、ここからが本番なのだ。

 この惨劇を目の当たりにした上で、マオはそれを装備せねばならない。



「クオンちゃん、アタシやるよ……」


「えっ、さっきの見た後で!?

 私が言うのもなんだけど、メンタル鋼過ぎない?」


「私の魔力で()()()()()やるんだから!!」



 マイヤの仇を取らんと、マオはとうとうエルゼリオンを背負った。

 そして、圧倒的な魔力を全力で流す。

 魔力変形型合成防具エルゼリオンも、それに応える。



 ────────コメント────────


【コラボ!】話題沸騰の()()()と!?

 同時視聴者数:3251


 :キタキタキタキタ!!

 :凄い動きだ……

 :とてつもないダサさに……!!?

 :ダサくなれ、マオちゃん!

 :今まで部分的な装備しか見た事ないけど、これは……

 :成功パターンあるのか!?

 :失敗した方が美味しいぞマオちゃん!

 :↑マオちゃんファン鬼畜が過ぎるww

 :護衛ちゃんの仇を今……!!

 :行けぇぇええ!!!


 ────────────────────



 謎の液体はマオの全身を覆い隠し、形を成していく。

 形成が終わった頃には、オーバーヒートした節々から煙が上がっている。

 兜は龍のそれを思わせる立派な角が。

 腕や胴体はメカメカしくも、スマートに。

 足は大地を砕かん程に凶悪な見た目。

 全体的に見れば、人型赤龍ロボットとでも言った具合であろう。



「…………す……すっっごいよマオちゃん!!!!」


「フシューッ。うぅん、喋りにくいなこれ……

 どう? どんな感じ?」


「過去一のカッコ良さだよ!!!

 いやそもそも、何それ? なんでそうなるの??

 グフッ、うぇへへへへへ……」



 ────────コメント────────


【コラボ!】話題沸騰の()()()と!?

 同時視聴者数:3340


 :カッケー!!!!

 :男の子ってこういうのが好きなんだよ!

 :女の子でもドキッと来る

 :なんでそうなるなんだよ!!?

 :ずるいだろこんなの……

 :ゲームの装備だろこんなもん!

 :クオンちゃん、女の子がしていい顔じゃないよ?

 :ようやく名前負けしない装備になった!

 :これがマオちゃん節なのか……

 :クオンちゃんステイ! ステイ!


 ────────────────────



 想像の遥か上の完成度に、狂喜乱舞のコメント欄。

 クオンもかなりの興奮状態で、配信そっちのけでメモ帳に現状や改善点を書きなぐっていた。



「あの……クオンちゃん?

 目が怖いし、配信中だよ?」


「マオちゃん、これ持ってみて!

 これは本当にただの趣味なんだけど、この剣を持って欲しくて……」


「それはいいけど……こんな感じに構えればいいかな?」


「……っ!!! 来光立ち!!?」



 足を大きく左右に開き、切っ先が上を向く様に剣の柄を腰付近で構えたこの形。

 マオが何気なく取ったこのポーズは『来光立ち』と呼ばれ、その筋の人達からはとても好まれる構えである。



「来光? え、何それ?」


()()()()の話だから気にしないで!

 いやはや、いい物見れたなぁ……

 いやそんな事よりもさ、マオちゃんの魔力ってどうなってるの?」


「そうだなぁ、生まれた時から常人の枠には収まらなかったらしいって言われてるよ?」



 ────────コメント────────


【コラボ!】話題沸騰の()()()と!?

 同時視聴者数:3822


 :もうガチモンの魔王でも驚かんわ。

 :マオちゃんが魔王なら魔王都市住みた過ぎるな

 :↑それな!

 :来光立ちとは分かってますね……

 :生まれつき魔力過多なのか

 :これ見た護衛ちゃんどんな気持ちなんだろ……

 :魔王だとすると、クオンちゃん不敬過ぎるwww

 :なんも面白くないわ。2度とコラボすんな

 :↑なんコイツ

 :↑最近こっちに現れるアンチですわ、すまんな……


 ────────────────────



 配信も終盤、何事も無く終わると思われたが、とうとうアンチが現れてしまった。

 ギーシュの方で目立ったコメントは消したりしていたが、それでも間に合わずに目に付いてしまう。

 クオンもそれを見逃さなかった1人だった。



「あれ〜!? アンチさんいるよ!?

 今見てるこのチャンネルが、いったい誰のチャンネルか分かっての行動なのかな?

 このチャンネルは私を含めて、専門的な技術者も多く居るんだよ?

 私の()()()へのアンチがどうなるか、骨の髄まで分からせてあげるんだから!

 私の愛しのファン達なら、協力してくれるよね?」



 ────────コメント────────


【コラボ!】話題沸騰の()()()と!?

 同時視聴者数:3822


 :久々に滾りますなぁ……!

 :クオンちゃんのお願いとあらば!!

 :特定班急げ!

 :IDは控えた。後で共有する。

 :↑了解。各方面への連絡は任せろ

 :スタッフさんにも共有出来ればいいが……

 :え、なになになに?

 :クオンちゃんファンもやべぇな……

 :捨て垢っぽいから住所は割れなかった。

 :↑なら、過去の投稿から行動範囲絞るわ


 ────────────────────



 クオンのお願い1つ。ただそれだけで、とんでもない団結力でアンチの特定がとんでもない勢いで進む。

 打ち合わせの後半に言っていたクオンのアンチは、何を隠そう彼女がファンと協力して特定し、衛兵に捕らえて貰っていたのだ。



「今回のコラボ配信はこれで終わりだけど、みんなも楽しめたよね!?

 それと、アンチの皆は震えて眠るがいい!

 地の果てまで追い掛けてあげるんだからね!」


「クオンちゃん、今日はありがとね。

 まさかアンチ対策も手伝って貰えるとは……

 クオンちゃんのファン達もありがと!

 アタシのファン(キッシー)達もこの配信の高評価、しっかりしとくんだよ!

 それじゃ──」



 お互いに目を合わせ、タイミングを合わせる。



「「みんな、まったね〜!!」」



 こうしてマオとクオン、お互い初めてのコラボ配信が無事終了したのであった。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 実に小気味よくて、本当の優良配信のような没入感がたまりませんね。
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