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【アーカイブ14】 趣味全開の配信

最近遅れに遅れてごめんなさい!!




 初生配信の翌日、ギーシュは次の生配信用の企画案とにらめっこに勤しんでいた。

 動画とは違い、出来ること自体は無限にあるのだが、それ故に難しい。

 毎回雑談で視聴者を集められる者もいれば、企画をシリーズ化して特定の視聴者を確実に射止める者もいる。

 よって、選択肢が多過ぎるというのも、割と考えものなのである。


 悩みに悩み抜いた末に、ギーシュは答えに辿り着く。


 ──魔王様の好きな事させりゃいいじゃん、と。



「と、言う訳で……何したいですか?」


「経緯は分かったけど、唐突だね」


「何でもいいって結構困るんですよね……

 ですので、魔王様の好きな事に全振りさせれば、魔王様のトークも弾むかなと」



 魔王のマオは頷くと、少し考えてから候補を口頭でギーシュへと伝える。



「参考になるかは分からんが、我の趣味は4つある。

 魔法開発、魔道具蒐集、ダンジョンの散策それに、魔物狩り……は趣味でいいのかな?」


「あ〜……どれもまぁ普通では無いですが、それはそれで良いでしょう! 奇抜ですし!

 魔王様的には、どれを1番視聴者と共有したり楽しみたいですか?」


「この中なら魔法開発だね。

 我のお蔵入り駄作魔法を披露すれば、笑いも多少取れるだろうしな。

 それに、あわよくば我並みの魔法オタクを見つけたいし、増やしたいのもある」



 言外にそちらが本命であると、マオの目が告げる。

 ギーシュもそれなら面白そうかと、その方向で企画を練り直しにかかる。



「配信の時は機材管理の為に僕も立ち会いますけど、魔法開発の配信ならトーク自体は大丈夫ですよね?

 あと一応、何やるかだけ事前に教えてくれると、僕がやりやすいのですが……」


「魔法に関してなら無限に話せる自信があるよ。

 何をやるかは……そうだな、やはり安全に配慮はした方がいいのかな?」


「うぅむ……安全じゃない魔法を使う時に、視聴者に一言入れるなら、やぶさかではないです」



 ギーシュも言外に、そうすれば何でもアリと告げる。

 その発言を聞いたマオの口角が僅かに上がった事に、気付いた者は誰もいなかった──。



「それじゃ、明日の夕方に配信の予約をしておくので、何をやるのか考えておいてくださいね!

 あ、タイトルは『マオちゃんのわくわく魔法教室』にしときますので」



 ◇



 生配信の当日。

 場所は変わり配信部屋ではなく、魔王城の地下はマオの魔法研究室(趣味部屋)

 机や壁にはおびただしい数の魔法陣や、謎の薬草、単語のメモや計算式が書き殴られており、何かしらの影響で床や天井の所々も焼け焦たりしていた。

 そんな部屋で、機材を設置し終えた後の打ち合わせで事は起こる。



「ダ・メ・で・す!!」


「そこを何とかならないのかい?

 君と我の仲じゃないか……ね?」



 ギーシュは頑なに譲らず、マオは必死に強請(ねだ)る。



「じゃあもう一度聞きますけど、何の魔法を披露したいと?」


「死者の魂を人形に移して、()()()()()()()()を可能とする魔法……です」


「ふむふむ成程……良い訳なくない!?!?

 倫理観を大事に!!! このご時世でそんな事しちゃったら、例外無く大炎上ですよ!

 配信者として活動できなくなりますからね!?」


「そ……それは嫌だが……

 うむぅ……しかしだな……」


「しかしもカカシもありません!

 とにかく、死者蘇生的なのはダメです!

 その代わりに、少し派手めの魔法を配信中に空に撃つ事を許可しますので、それで手を打ってください……」



 そこまで言われ、ようやくお互いが納得した。

 これが事前の打ち合わせが大事な理由だ。

 打ち合わせも無しに配信していれば、()()()()事になっていたのは自明の理だろう。



「はぁ……あと少しで配信始まりますので、準備をお願いしますね。

 くれぐれも、禁忌的な魔法は見せないように!」


「う、うむ! 善処しまくるよ。

 今回の配信、もしかするとセバスニャンを呼ぶかもしれんのだが、どうしたらいいだろう?」


「あぁ、言ってましたね。

 攻撃魔法を受ける役って話でしたが、呼ぶのは良いとして、名前は変えて呼んであげましょうか?

 そうですね……」


「そこはセバスと略せば良いだろう!

 あまり変えすぎると、本人も混乱するだろうしな」


「分かりました。

 で、もし何らかの事情で僕を呼びたくなったら、()()()()()()とでも呼んでください。

 目立たないように、出来る限り対応しますので」



 マオは渾身のサムズアップで応じ、いよいよ配信の時間が迫る。


 待機中に流れる太鼓を打ち鳴らすマオの動画も終わり、マイクに魔力を流し、配信が始まる。



「みんな〜! まおっす〜!

 今回の配信はタイトルの通り、アタシの趣味をみんなで楽しんじゃおう!」



 ────────コメント────────


【趣味全開】マオちゃんのわくわく魔法教室☆

 同時視聴者数:78


 :お、始まった

 :まおっすー!

 :まおっす〜

 :初めまして!

 :魔法が趣味って事かな?

 :まおっす!

 :魔法好きなの魔王っぽさある

 :あれ、今回は豚ニキいないのか?

 :ここにいるぞ

 :↑豚ニキ居んじゃん。誰だ解き放った奴


 ────────────────────



「おお! 前回来てくれた人達に、初見さんも何人か来てくれてるね!

 前回の配信で、キッシー達がアタシの事をたくさん布教してくれたのかな?

 配信者冥利に尽きるねぇ……と、言う訳で!

 今日は早速アタシの趣味のお話しをしよっか?」



 ファン(キッシー)達と軽く戯れた後、マオは今回の本題に入った。



「まぁ、書いてある通り魔法開発なんだけど、ちょっと普通のとは違うんだ!

 そうだな、アタシの配信を見に来てる人達って、どんな種族の人達がいるのかな?」



 ────────コメント────────


【趣味全開】マオちゃんのわくわく魔法教室☆

 同時視聴者数:80


 :吸血鬼!

 :俺はエルフ!!

 :人種だね

 :間に合った? ギリ遅刻?

 :私はエルフです

 :ケンタウロス

 :俺は人種!

 :狼系の獣人だよ!

 :ワイ悪魔族!

 :人種


 ────────────────────



「うんうん、思ってたより人種の人も居るね!

 人種の使う魔法とアタシ達魔族の使う魔法って、同じに見えるけど実はかなり違ってて……例えば──」



 マオはおもむろに胸の前辺りで掌を上に向け、その上で水の球を宙に浮かせて見せる。



「これ、水を生成して宙に浮かせてるんだけど、人種と魔族で浮かせ続けられる時間ってどれくらい違うと思う?


 うんうん……おぉ、いい線行ってる人もいるね!

 そう、一概には言えないけど人種は良くて1時間。

 そして魔族は種族にもよるけど、だいたい3日は維持できる」



 ────────コメント────────


【趣味全開】マオちゃんのわくわく魔法教室☆

 同時視聴者数:79


 :チートかよ

 :これなんでなの?

 :何それズルい

 :ちな俺は3日も無理!

 :3日出来るかもしれんが、やらんわな。

 :チーターがよぉ……!

 :魔法って難しいんだよね……

 :マオちゃんはどれくらい出来るの?

 :千年近く戦争してた俺らの先祖もやべぇな

 :魔族でも3徹は辛い


 ────────────────────



「アハハハッ! 驚いてるね?

 これは何故かと言うと、これは魔法の使い方が根本的に違うからなんだ。

 魔族は空気中の魔力を呼吸や皮膚から吸収して魔法を使うのに対して、人種は体内に元々ある魔力を使うからこの違いが起こる。

 魔族には魔力切れって概念がそもそも無いんだ!

 しかし、人種にも良い所がある。

 それは、魔力操作だ。ちょっと見てて!」



 マオは掌の上で浮かせた水球を3つ、4つと増やしていき、更にそれらを魚の形にして宙を泳がせた。



 ────────コメント────────


【趣味全開】マオちゃんのわくわく魔法教室☆

 同時視聴者数:98


 :人種もパネェな……

 :俺らすげぇ、あんな事できんの?

 :ワイ、魔法は得意やけどあれは無理

 :なんでマオちゃんは出来るの?

 :マオちゃん魔族だったよね?

 :俺たち……やれんのか?

 :3つ浮かすだけで頭パンクするわ

 :どうやって魚の形にしてんだよ……

 :ファッ!?!?

 :脳が5つくらいありそう。


 ────────────────────



 視聴者はマオの絶技に驚きを隠せない。

 魔族側から見ても人族側から見ても、その光景は異常だったようだ。



「人族はこの魔力操作が長けているから、大戦時も魔族と拮抗していたんだ。

 言っちゃうと、魔族の魔法って大味なんだよね!

 威力はすごいけど、美しくない!

 逆に人種の魔法は美しいけど、威力がいまいち!

 そこで、アタシの趣味に繋がるんだけど──」



 要するに『合体させれば激強じゃね?』である。

 その結果、マオは驚異的な魔法センスで数々の魔法を生み出し続けた。

 有用そうな物が出来上がれば、学会などに匿名で出してザワつかせた事もある。



「ってな訳で、アタシはまだ見ぬ未知の魔法を開発するのが大好きなんだ!

 本当は今日はアタシの集大成の魔法を見てもらいたかったんだけど、スタッフさんに凄い勢いで止められてね……」



 ────────コメント────────


【趣味全開】マオちゃんのわくわく魔法教室☆

 同時視聴者数:128


 :スタッフさんいたんだ!

 :スタッフに止められる魔法て……

 :まぁ、ヤバい魔法なんだろうな

 :地形変わるようなやつだったり?

 :↑それだったら少し見たかった……!

 :俺に撃ってはくれないか?

 :スタッフ有能なのでは?

 :ナイスタッフ

 :男の子好きだよね、そういうの……

 :ド派手な魔法って心躍るよね


 ────────────────────



「そんな訳で、今から何個かアタシの成果を怒られない範囲で、皆に見てもらおうと思います!! はい、拍手!」



 コメント欄も異様な盛り上がりを見せ、まだ見ぬ未知の魔法への期待が高まっていく。

 その影響かは分からないが、視聴者の数もかなり増えたように見える。



「流石にそのまま部屋で撃つのは危ないから、今回は……いやたぶん今後は助っ人を呼んでやります! 皆にも紹介するね!

 それでは()()()、カモーン!」


「こちらに」



 どこからともなく執事服を身に纏い、凛とした出で立ちの宙に浮く猫が表れた。

 猫精霊(ケットシー)のセバスニャンである。



「彼も魔法に詳しくて、よく手伝ってもらうんだ!

 特に結界魔法で右に出る者はほとんど居ないよ?」


「恐悦にございます」



 ────────コメント────────


【趣味全開】マオちゃんのわくわく魔法教室☆

 同時視聴者数:135


 :お猫様来たーー!!

 :可愛いのにイケメンとはこれ如何に。

 :声激渋じゃん……

 :ダンディが過ぎるだろ

 :せめて猫背であれよ!!

 :声とビジュアルのギャップで風邪引く

 :もしかしてケットシーか?

 :↑確かに! 初めて見たかも!

 :スタッフの質、高過ぎかよ

 :結界魔法とはまた珍しい魔法を……


 ────────────────────



「セバスにはこれから、この部屋とセバス自身に結界を張ってもらって、アタシが魔法を撃ち込みます。

 危ないから、良い子のキッシーのみんなは、絶対に真似しちゃダメだよ?

 よし、お願い出来る?」


「お易い御用で。『第三式・守護結界』展開」



 魔法の発動と同時、部屋の壁全体とセバスニャン自身、撮影機材とついでにギーシュも薄い膜の様な何かに包まれた。

 それを確認したマオは、右手の人差し指と親指を伸ばした手を銃の様に構え、セバスニャンへと向ける。



「まずは、ジャブ程度(ご挨拶)の未公開魔法だよ!

 魔力収束、圧縮、属性変換……ヨシ!

 行くよセバス! 『超圧縮光線(プレッシャーレイ)』!!」



 詠唱と同時、構えた指先に収束した光の束が、一直線にセバスニャン目掛けて発射された。

 万物を溶かさんとする、光線の光と轟音に包まれた。

 数秒もすると目も開けられない光も収まり、舞い上がった煙も晴れてくる。


 そしてそこに立つのは、当然のように無傷のセバスニャンであった。



「はぁぁぁ、快感!

 セバス、今回のは10段階評価で何点?」


「そうですね。威力5、速度8、命中制度2、コスパ3……と言った所でしょう」


「よしよし、及第点だね!

 どうかなみんな!? アタシの魔法は!」



 ────────コメント────────


【趣味全開】マオちゃんのわくわく魔法教室☆

 同時視聴者数:167


 :…………は?

 :いやいやいやいや

 :セバスさん無敵かよww

 :強者感パナイ

 :正直舐めてた……ここまでヤバいとは

 :レーザーかっけぇぇえ!!!

 :男の子を分かってる!!

 :これ見ると、魔法を制限したスタッフさん超有能

 :鼓膜ナイなったわ

 :あれで威力5かよ……


 ────────────────────



「やったねセバス! みんな褒めてくれてるよ!

 あ〜、約1名そうじゃないっぽい……」



 自らの声をマイクに入れない為に黙ってはいるが、その瞳は雄弁に告げていた。



 ──『()()()()()()()()()』と。



 言うまでも無く、ギーシュ(スタッフさん)である。

 その修羅の如き形相に、冷静沈着なセバスニャンですらもたじろぎを見せた。



()()()……お説教はご一緒致しましょう」


「うっ……やっぱりそうなっちゃう?

 この後に派手なのを披露する予定なんだけど……」



 さっきのより派手な魔法という響きに、コメント欄は更なるザワつきを覚えた。

 しかし、そのほとんどは怖いもの見たさである。



「こ、これはスタッフさんとの約束だからね!?

 空に向けて1発だけ、凄いの撃っていいって!

 後でお説教だとしても、絶対やるから!!」



 頑なにアピールしてギーシュの許可を得ようとする。

 流石のギーシュもため息を吐いて、誠に不本意ながら許可を出した。

 そう。出してしまったのだ、許可を。



 この後、良い事と悪い事が起こる。

 前者はマオのチャンネル登録者が数倍になる事。

 後者は良く言ってバズり、悪く言えば()()する事だ……



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― 新着の感想 ―
[良い点] ついに本作も本領入り始めた感がしますね。ワクワクします!
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