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8,囚われたアステリア

 用意された部屋に入る。部屋の中を見回すと、大きなベッドがあり、触ってみるとふかふか。大きなお風呂まであった。奥を見ると、ドレスも用意されていた。


 コンコンとドアを叩く音が聞こえ、オークの女の子? が入ってきた。


「失礼致します。侍女のミーでございます。ファウス様に言われ、参りました。アステリア様、お召し物をお洗濯致します。ドレスにお着替え下さい。ファウス様が待っておられます」


「ありがとう」


 着ていた服を侍女に渡し、ドレスに着替えてファウスが待っている食堂へ行く。


「お待たせしました」


 ファウスに軽くお辞儀をする。


「流石姫だな、ドレスが良く似合ってる。さぁ、座って。飲み物はどうする? お酒は?」


「ありがとう。ドレスまで用意してくれて。えっと、お酒は……まだ飲めないの」


「じゃあ、ジュースをどうぞ。この国のジュースは美味しいから、きっと気に入ると思う」


 侍女がジュースを入れてくれる。


「ありがとう」


 侍女に渡されたジュースを持ち、ファウスと乾杯をする。


(何だか見詰められてるような……)


 ファウスに見詰められている気がして、急に恥ずかしくなり、一気にクイッとジュースを飲みほす。


(あれ? なんだか……急に眠気が……? まさか!? ファウス……)


 急に眠気に襲われる。そんな私を見ながらファウスが呟いている。


「すまない、アステリア。こうでもしないと、君を手に入れられないと思って……」


(油断した……わたしったら……信じ……て……カイ……)


 遠退いていく意識の中で、ファウスに抱えられているのが分かる……ファウスは部屋に入り鍵を閉めている。そこで意識が途切れた。





 ーーその頃のカイロス。


(アステリア、俺のせいだ……このままだとオークに……)


 オークが向かったであろう道を急いで追いかけていく。途中オークの手下を捕まえ、アステリアの居場所を吐かせた。


「ルー様はオーク城へ行ったよ……もう、許してくれよぉ……」


「許せるわけないだろう。大事な姫を拐ったんだ。城は何処にある、案内しろ!」


「はい……」


 手下のオークに案内させていると、前からオークのリーダーが、トボトボと歩いて来た。アステリアの姿は見えない。


「……お前っ! リーダーのルーとかいう奴だよな? アステリアを何処へやった!! 返せっ!」


 ルーの胸ぐらを掴んで迫るが、ルーは心、ここにあらずといった感じだ。


「何だ? お前、アステリアを嫁にするとかいって連れて行ったんじゃないのかよ!! アステリアは何処だ!」


「ああ……あの娘か、連れていったよ。城にな。連れていったさ……けどよ……皇子にとられちまった。ファウス皇子だ。もう、娘は帰れないだろうよ。皇子が妃として迎えたいといえば、誰にも止められない」


「どういうことだ! 詳しく説明しろよ!」


 ルーの胸ぐらを掴み揺する。

 ルーは、面倒くさそうにカイに今までの事を説明した。


「そんな事に……! 皇子はオークと人間のハーフか。それで、アステリアは何処にいる? 案内しろ!」


 ルーは嫌そうな顔をして、


「何で俺様が案内しなきゃいけないんだ」


 と言うので、今までの何十倍もの炎の塊を見せ威嚇する。


「殺られたくなかったら、案内しろ。俺は今、気が立っている。もう、手加減はしない。アステリアの為なら、お前なんか……森くらい焼きつくしてやる!」


 それには流石のルーも慌てて、


「分かった! 俺が悪かった。案内するからその炎をしまってくれ!」


 と土下座。


「最初からそうしてれば良いんだよ」


 炎をしまい、ルーに案内をさせる。着いたのは、城の裏門だった。時間は夜更けに近付こうとしていた。


「あそこに見える、明かりの点いている部屋が皇子の部屋だ。嫁に迎えられたとすれば、今頃あそこの部屋だな」


「分かった。ここで良い。お前は見付からないように見張っていろ」


「わ……かりました……」


 ルーはもう、従うしかないという顔をしていた。







 ーーアステリア。


 目を覚ますと、ベッドの上で手を縛られていた。


「ここは……」


 ファウスが、そんな私を見ながらニヤッと笑っている。


「アステリア、目を覚ましたか。ここは、俺の部屋。今日からは二人の部屋だな」


「……っ。離してっ」


 目に涙が溜っていく。ファウスを睨む。


「ふっ。良い顔だな。そうだな、俺の嫁になると言えばほどいてやる」


「だ……れ、が。ファウス、信じ……てたのに」


「信じてた……か。まぁ、その強がりもいつまで持つかな?薬もまだ完全には切れてないようだが?」


 私の髪を撫でながらファウスは言う。ファウスの顔が近づく。


「い、嫌。やめて……」


(カイ、助けて~っ!)


 心の中で叫んだ瞬間、バリーン! と、大きな音を立て、窓ガラスが割れた。


「アステリア! 大丈夫か!?」


「か、カイっ!?」


 今にも皇子に襲われそうになっている私を見て、カイは窓から飛び降りながら、皇子に殴りかかる。


「アステリアを離せ~っ!」


 カイは、皇子をベッドから付き飛ばし、縄を短剣で切ってくれた。それから私を抱き抱え、優しい顔で笑う。


「もう大丈夫だ」


 その姿が本当の皇子様のように見えて、少し見惚れてしまっていた。


「アステリア? ……大丈夫?」


「カイ、助けに来てくれてありがとう! 絶対来てくれるって信じてた!」


「ああ。必ず何処にいても助けるって言ったろう?」


「うん! 流石、カイは頼りになるね!」


「いや、まぁ、拐われたのは俺のせいでもあるし……怖い思いをさせてごめんな」


 私をゆっくり下ろしてくれる。

 カイはだいぶ落ち込んでるみたい。

 私がニッコリと笑い、


「ううん、こうして来てくれただけで十分よ」

 と言うと、カイはホッとした顔をして私をだきしめる。


 その後、まだベッドの脇で伸びているファウスを見て、カイはファウスを縛り上げる。


「さてと、こいつをどうするかな~」


 普段はオークの中でも格段に強い筈だが油断したのだろう。カイがファウスを王の元へ連れていく。王は驚いたが、息子に危害を加えられたらどうしようもないので、焦りをみせている。王が


「何か詫びを……」


 と言ったが、もう関わりたく前にもなかったので、アトラス国の国や国のものを絶対に襲わせないと約束させ、城を後にした。


「色々あったが、そろそろガラク・ロードを抜けるぞ! アステリア! アトラスまでもう少しだ!」


 カイに手を引かれ、オークの国を後にする。

アトラスまで後少し。カイとの旅も終わりを迎えていた……

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