表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

7.オークの国


「しまった!! アステリア!」


(俺が考え事していたばっかりに……アステリア、無事で居てくれ! 必ず助けるっ!)


 カイロスは、急いで後を追いかけた……


 ーーその頃のアステリア。


「離してよっ! 離してってば!」


 オークの腕の中で抜け出そうと暴れる。


「おいっ、暴れるな! お前は俺の物になるんだからな!」


「絶対、ならないわよ! 離して~っ!!」


 本当は泣きたい気持ちでいっぱいだったが、そうもいかなかった。


(きっとカイは私が拐われたの、自分のせいだって責めてるよね。何としても逃げ出さなきゃ)


 精一杯暴れる。しかし、アステリアの力では振りほどけなかった。


(流石、オークのリーダー……一筋縄じゃいかないよね。どうしよう……)


「おっ? 諦めたか。俺から逃げようなんざ100年早いわ」


 オークのリーダーは得意気だ。


「早く、王国に連れて帰らなきゃな」


(オークにも王国なんてあるんだ。そこに連れていかれると、逃げられなさそう……それに、こんなオークの嫁なんて絶対に嫌だ~っ!!)


「ここが、我々オークの国だ」


 そうこうしているうちに、オークの国に着いてしまったらしい。


「まずは、王と王妃、それから皇子に挨拶するぞ。失礼の無いようにな」


(誰が! あっ! 失礼な事をしたら、追い出されるかしら……)


 なんて思っていると、考えている事が分かったのか、オークはニヤニヤしながら


「失礼な事をすると、追い出される事はなく、処刑だからな?」


 また、得意気に言う。


(本当にもう、どうしたら良いの~)


 城門の前に来た。門番がリーダーに問う。


「ルー様、お帰りなさいませ。その者は? 人間では?」


 その言葉に、オークはニヤリと笑いながら


「そうだ。コイツを俺の嫁にするため連れてきた」


 そう言うと、私を下ろし腰に手をまわす。


(もう、泣きそう……『ルー』が名前なのかな? どうでも良いけど……)


 門番は私を上から下まで舐めるように見た後、ニヤッと笑い、また、ルーに問う。


「そうでございましたか。今から王に会われますか? 後、献上品は?」


「もちろんだ。この娘も手続きせねばならん。それと、献上品はこれだ」


 ルーは、上等な毛皮を門番に見せる。


「分かりました。こちらでお待ち下さい」


 勝手に話が進み、門を通され、城の入り口に案内される。ルーは、ずっとニヤニヤしっぱなし。


「これで王に謁見えっけんしたら、お前も晴れてここの住人、俺の嫁だ」


(はぁ……どうやって逃げよう……絶対に嫁になんてならないんだから)


 私が何も言わないのを良いことに、ルーは勝手に話を進めていく。


「ん? どうした? そうかそうか、嬉しすぎて声も出ないんだな。ようやく俺の魅力が分かったて事か」


 ルーは、嬉しそう。


(んな訳ないでしょ! 絶対に逃げてやるんだから!!)


 中から侍従が出てきて扉が開いた。

「ルー様、準備が整いました」


 どうやら奥にオークの王が居るようだ。中に入って、奥に座っている人? を見て驚いた。真ん中に座っているのは『王様』だろう。がたいが良いオークだ。その横は王妃だろうか??


(王妃……? どうみても人間の様な気が……耳も尖ってないし。それにしても綺麗な人)


 そうなのである。王冠を被って、王であろうオークの隣に座っているのは、どう見ても人間に見える。その横にいる『皇子』は


(角? の生えた人間?? あ。耳は尖ってる。格好良いなぁ……)


 横にいるルーとは比べ物にならないような、格好の良い男の子だ。


「何ぼーっとしてるんだ。お前も頭を下げろ!」


「分かったわよ!」


 ルーに言われて渋々頭を下げる。


「ロムス王、失礼致しました。こちらが献上品となります」


 ルーは、さっきの毛皮を王に渡している。


「うむ。それで、話とは? そこにいる娘と関係あるのか?」


「は、はい。おっしゃる通りで。この娘を我が……」


 と、ルーが言いかけたところで、皇子が立ち上がり、前に来た。


「そこの娘、顔を上げろ」


(何!? この偉そうな言い方……まぁ、従った方が良いわよね)


「は……い」


 顔を上げると、皇子もまたニヤッと笑い、聞いてきた。


「ふむ。うん、やはり良いな。そなた、名はなんと言う?」


「アステリアと申します。えと、皇子様?」


 答えると、今度は優しく微笑み、


「いかにも。私はこの国の皇子、ファウスだ。アステリア、一目惚れした。私の妻にならないか??」


(今、この皇子様なんて言った!? 一目惚れ!?)

 目を見開き、皇子を見る。


「そ、そんな、ファウス様、この娘は私の……」


 ルーは慌てている。皇子は、じっとルーを睨み、


「何だ? ルー? 私に意見する気か?」


 ルーは何も言い返せない。


「い、いえ、何でもありません。ファウス様……」


 オークのリーダーも、皇子様の前では何も言えないらしい。


「ルー、献上品は有り難く戴こう。ご苦労だったな。下がって良いぞ」


「否、え……あ……は、い。分かりました。失礼致します……」


 ルーは、アステリアの方を名残惜しそうに見て、肩を落としながら出て行った。


「アステリア、こちらへこい」


 皇子様に言われ、側に行く。


「は……い」


(私、どうなっちゃうんだろう……ここの国で? そんなのは嫌……)


「お父様」


 皇子がロムス王を見る。


「うむ。そうだな」


 王は頷き、ファウスに任せると言った。


(ちゃんと、断らなくっちゃ!!皇子と結婚できないって!)


「皇子様、あの、私っ!……」


 と、言ったところで皇子が


「アステリア、と言ったな。お前、大丈夫か?」


「えっ!? あ、はい。大丈夫です」


 直ぐに求婚の話だと思っていたから、驚いた。

 ファウスは気になった様子で聞いてきた。


「さっきのルーに拐われたんだろう? お前は何処から来たんだ? 見たところ一般人では無いようだが」


「テルスという星から、アトラスへ帰る途中でした。私はアトラスの姫のアステリアです」


「そうだったか。アトラス国は聞いたことがあるよ。姫に頭を下げさせて申し訳ないことをしたな。それと『お前』って言って悪かった」


「いえ、大丈夫です。それより私は……」


「うん、分かってる。私の妻になる気はないのだろう?」


「はい、ごめんなさい」


 ファウスは、少し残念そうな、寂しそうな顔をしている。


「謝らなくて良いよ。私の国の者が失礼をしたな。怖かっただろう? 見て分かる通り、私の母は人間だ。私はオークと人間のハーフだ。君の気持ちも分かるよ。一目惚れした……のは、本当だけどな。諦めるよ」


(オークの皇子様って優しいのね。)


 ホッと胸を撫で下ろす。


「皇子様、ありがとうございます。それと……私、そろそろ帰らないと。心配している人が……」


「あ、ああ。そうだな。その心配しているという人は恋人か?」


「恋人……だと、良いのですけどね。」


 寂しそうに答えた。


「身分違いの恋、というところか?」


「皇子様には、お見通しなんですね。」


 ファウスは、優しい口調で話してくれる。


「身分が違っても好きなんだろう? 種族や身分違っても結婚出来るんだから。俺の両親みたいにさ。母は異国の姫だったんだ。だからさ、頑張れよ? あ、後、皇子様じゃなくて、ファウスって呼んでくれ。姫と皇子は対等だと思う」


「ありがとう……ファウスって良い人ね。頑張る」

 ニッコリとファウスに微笑みかける。

 

 暫く話をした後、ファウスに提案された。

「それと、今日はもう遅い。泊まっていけ、夜の森は深くて危険だ。明日の朝帰れば良い」


「あ。うん、けど……」


(カイ、心配してるよね。早く帰らないと……)


 私がそれでも出ていこうとすると、ファウスに引きとめられた。


「……夜の森に出ていくと、本当に危険だぞ? 後、君をもてなしたいんだ。」


 心配そうに言う、ファウスに申し訳なく思い、


「うん……分かった。そうするね。ありがとう……」


 一晩泊まることにした……



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ