10,これからもずっと……(最終話)
扉を抜けると、懐かしい場所が広がっていた。
一面に広がる花畑。
紋章の付いたお城が見える。
「本当に帰ってきたんだ……」
私が呟くと、カイは一歩前に出て振り返り、お辞儀をする。
「おかえりなさいませ。アステリア姫」
敬語に戻ったカイを見ると、何だか寂しくなってしまい、前に居るカイの袖をぐいっと引っ張り、そのまま抱きつく。
「カイ、やっぱり寂しいよ。敬語やだ」
そんな私の行動に、カイは少し困った顔をしながら小声で言う。
「アステリア、気持ちは分かる。けれど、帰ってきたらもう、ダメだ。離れて? な?」
カイにそう言われたけど、やっぱり離れたくなくて、抱きついたまま首を振る。
「ついさっきまで、普通にしてたのにこんなのやだ」
我が儘なのは分かってる。だけど……もう、無理。だって、カイの気持ちも知ってしまったのだから……。今更、元には戻れない。
「アステリア……」
カイは凄く困った顔をして、アステリアを見つめる。そうこうしているうちに、城の門の前に来てしまった。
(お父様とお母様に認めて貰えばいいのよ)
そう決意し、カイに言う。
「カイ、私、決めたよ!!」
そんな私の言葉に、カイはキョトンとしている。
「決めたって何を……」
「大丈夫! 私に任せて!」
私はカイにそう言うとウインクし、城の中へ入って行った。
城の中に入ると、連絡を受けた城の人々ずらっと勢揃いしていた。
「おかえりなさいませ、アステリア様」
皆が一斉に頭を下げる。奥に両親が見える。母と目が合い、頭を下げる。
「お父様、お母様。ただいま帰りました」
私がそう言うと母は椅子から立ち上がり、私の元へ駆けてきて、私を強く抱き締める。
「アステリア、心配したのよ。予定より半月も帰ってくるのが遅かったから」
母の目には涙が浮かんでいた。
(お兄ちゃんの事もあるから……余計心配かけたよね)
「お母様、心配かけてごめんなさい」
そう言うと母は優しく微笑み、私の頭を撫で、後ろを着いてきていたカイの方を向いた。
「ちゃんと帰ってきてくれたから、大丈夫よ。カイロス、貴方にも面倒をかけたわね。アステリアを無事に連れ帰ってくれてありがとう」
カイはそんな母の言葉に緊張し、少し声が裏返えっている。
「皇后様! 面倒だなんて、そんな事ございません。わた……っ私は、当然の事をしたまでで。それに、遅くなり申し訳ございません。本来ならもっと早くお連れしなければいけなかったんです」
そんなカイの言葉に母は首を振り、ニコッと微笑む。
「そんな事はないわ。アステリアの帰りが遅いと私が心配していたら、真っ先に飛んで行ってくれたじゃない。いくらアステリアの側近とはいえ、あんなに遠く離れた地球という遠い星に直ぐに向かってくれたのだもの。なかなか出来ることではないわ。本当にありがとう」
「ありがとうございます!」
カイは頭を下げ、後ろに下がる。
(こ、これは好感触? このままカイの事を推せば……)
その私の考えは、次の母の一言で打ち消された……
「とにかく、良かったわ。これで無事、婚約もできるわね」
(んん? 婚約……?)
「お母様、婚約って……?」
(何だか嫌な予感がする……)
母は満面の笑みで、私の頭を撫でながら言う。
「アステリア、貴女も知っている隣国の皇子『アルフィウス』よ。貴女を是非、皇妃として迎えたいと言っていたわ。貴女の帰りを私達と一緒にずっと待っていたのよ? こんなに良い話は無いわ。良かったわね」
(え!?アルフィウスって……)
「アルお兄ちゃん??」
アルお兄ちゃんというのは、二歳上の兄の様に慕っていた幼馴染み。
「そうよ。アルフィウス皇子。あの子なら貴女の事を良くわかっているし、きっと幸せにしてくれるわ」
母は満足したようにそう言っている。
(これは……マズイ。私はカイと結婚したいのに)
後ろを見ると、カイは少し寂しそうな顔をしていた。けれど、私と目が会うと、『良かったな』とやんわり微笑んだ。
(嫌……諦めないでよ。カイ……私は諦めない!)
私は両親の前へ行き、跪いて、頭を下げた。
「お父様、お母様、アルフィウス皇子との婚約お受けできません! お許し下さい」
私の行動が予想外だったのだろう。両親はかなり驚いているようだ。
「アステリア、どうしたんだ? お前が意見するのは珍しいな」
「そうよ? アステリア。貴方が意見するなんて珍しいわね」
私は意を決して顔を上げた。
「お父様、お母様。私……私はカイと結婚したいの。私とカイの事を許して下さいっ!」
その私の言葉にカイが大慌てで飛んできた。
「アステリア! 何を言ってるんだ。俺の気にせず幸せになってくれ。俺と一緒になればこんな良い生活はできない」
「それでも良いの! 私はカイ以外考えられない! カイと一緒に居たいの! カイは、私が他の人と一緒になっても平気なの?」
その私の言葉にカイは困ったような、寂しそうな表情をしながら、優しく微笑む。
「それは……でも、アステリアが幸せになってくれるなら、それで良いよ」
「カイ、諦めないで……」
言いながら、涙が出てきた。そんな私を見てお父様が
「アステリア、カイロス、落ち着きなさい。話は分かった」
と言うので、カイは慌てて頭を下げる。
「申し訳ありません! 差し出がましい真似を」
すると、お父様はやんわりと微笑み
「もう良い、カイロス。頭を上げなさい。アステリア、カイロスと結婚したいのだな?」
私とカイが驚いて顔を上げると、母も優しく微笑んでいた。
「アステリア、気持ちは堅いのね? あなた、二人の結婚を認めてはどうかしら?」
「うむ、そうだな。カイロスなら全力でアステリアの事を護るだろう。カイロス、どうだろう?アステリアもこうして好意を寄せている。カイロスも知っての通り、アステリアの兄は亡くなり、後継者はもうおらん。わしの後を継ぐ気はあるか?」
私とカイは顔を見合わせた。カイロスはお父様の前へ行き、跪き、深々と頭を下げた。
「皇帝、私でよろしいのでしょうか? 勿論、認めていただけるのであれば、全力で務めさせていただきます」
「お父様! ありがとう!」
私は、お父様に駆け寄り抱き締めた。
「おお。アステリア幸せになるんだぞ」
「はい! お父様!」
「必ず、アステリアを幸せにし、この国を護っていきます」
*
数日後、盛大に結婚式が開かれた。姫と側近という異例の組み合わせではあったが、カイロスの人望とお父様である皇帝の働きにより、皆が祝福してくれた。
「アステリア、俺で後悔してないか?」
カイはまだまだ心配そう。
「後悔なんて、するわけないでしょ」
私はニカッと笑う。この幸せが続けば良いのに……いや、この幸せをずっと守っていこう。
青く澄んだ空を見上げて、私は誓うのだったーー
最後まで読んで下さり、ありがとうございました☆




