1.夢~いつもの日常~
よく見る夢。白く霞がかった空間、そこに僕は一人で居る。
「……ミドリ……ミドリ」
まただ。誰かが呼んでいる。誰を? 僕、なのか? 僕の事を呼んでいる……?
僕は碧。僕の名前は、柊 碧。どこにでも居る、平凡な男子高校生。
『碧』という名は、『透き通った澄んだ心を持つ人に』という願いを込めて、両親が付けてくれた名前。
両親が優しく答えてくれたのを覚えている。
確かに『みどり』と、読み間違えられる事はあるが……
声のする方を見て探そうとするが、霧が濃くよく見えない。呼ぶ声の主は分からない。
霧の中をしばらく歩いていると、急に目の前に現れた。
(それは何だか遺跡というものだろうか? 歴史的な建物。否、城……か? 城、だとしても、僕は何故一人でここに……)
考えていると、霧が晴れていった。
そこでいつも目が覚める。
ピピピピ。ピピピピ。ピピッ……
スマホのアラームを止める。
「また、同じ夢か……学校行かなきゃ」
急いで準備をし、家を出る。ある田舎町に住む僕は、山や川に囲まれたこの町が大好きだ。
「うん、今日も良い天気だ~」
いつものように、自然豊かな田舎道を自転車に乗って学校へと行く。平凡だが、毎日が幸せだ。大好きな家族がいて、友達がいる。
育った環境がそうさせたのか、元々そんな性格なのか、僕は争いを好まない。けれど、何の変化も無い日常に少し退屈でもあった。
(たまには、何か面白い事起きないかな~)
な~んて。
見上げた空は、凄く澄んだ青い色をしている。何だか吸い込まれそうなくらい綺麗だ。
こんな穏やかな日々がずっと、ずっと続けば良いのにな……そう思っていた。
否、続くと信じていた。あの日までは……
ーー夜。
眠りにつくと、また同じ夢を見る。
何度か同じ夢を繰り返しているうちに、これは夢……また同じ夢だということに、夢の中で気付くようになっていた。
気付くようになってからは、いつも霧の中にいきなり現れる、城に入ってみようと試みる。城の正面に行くと、紋章の様な物がある門があった。
しかし、門はあるのに入れない。何度も試したが同じ。
「なんだ……入れないのか。」
そう呟き、目の前にある門を見詰める。
(入れたら、この夢の正体が何か掴めるかと思ったのに……)
残念に思いながら、繰り返し見ている夢に何か変化を期待し、城の散策をしていると……
しばらく経ったある日。夢の様子がいつもと違っていた。
(城が新しくなってる!?)
「……ってこれ、いつもの夢、だよな?」
可笑しい。いつもみたいな廃墟の城ではない。
いつものお化けが出そうな廃墟ではなく、真新しい城。城の壁もまっ白で、壊れている様子もない。周りは一面花畑。花の色は虹色だった。
(不思議な花に新しい城……否、でも……夢だし、そもそも夢だし。不思議な事が……急に変化があっても、可笑しくはない)
「って、また夢だって気付いてる。不思議なこの感じにも慣れてきたな」
納得したように独り言を言いながら、また城を調べてみようと試みる。
いつも何の変化の無い夢。それが何年も続いていた。僕はその急な変化に少し戸惑いつつもワクワクしていた。何かが起こりそうな予感……
いつもの様に、城の正面に行ってみる。新しくなってはいるが、やはり紋章は同じ。
「やっぱり、同じ城か。でも何で新しくなったんだ?」
そう呟きながら、
(どうせ今日も開かないだろうな……)
と、思いながらも城の門を押してみる。
すると……
ギッ! という音と共に、城の門が開いたのである。
その瞬間、眩しい光が差し込み、ドンッ! という音と共に目が覚め、僕はベッドから転がり落ちていた。
猫兎彩愛です☆
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