6.サブスキルの覚醒と、そして俺は怠惰に生きていく
夕方、彼らが戻ってきた。
「あーグレンたちに話がある。」
「ギルド長、お疲れ様です。」
「話とは?」
「ここでは話しづらいので、ギルド長室で」
グレンたちは疑うことなく、笑顔でついて来てくれる。
信頼って大切だな。
部屋に入った瞬間、彼らから笑顔が消えた。
「な。」
「なんで。」
「あー、そのなんだ。君たちは、すばらしい成果を挙げている。
こんな場末のF級ギルドでは窮屈だろう。
よって、君たちにはもっと相応しい大きなギルドへ移ってもらう。」
「レオンさん、何言ってるんだよ。俺たちは、こいつらに追放されたんだぜ。」
「聞いたところ、ギルド長ではなくパーティの隊長が勝手に追放したんだろ?」
「ち、違う。俺はギルド長に、追放された。たとえ、頭を下げられても、戻るつもりはありません。
もう、遅いんです。」
困ったな。隊長じゃなくギルド長が追放してるのか。<覆水盆>で何とかなりませんか?
覆水盆のサブスキル。
<元の鞘に戻る>が発動。
スキルが光った。
「ま、まぶしい。」
しばらく皆がぼーっとしいたかと思ったら、グレンたちが話し出した。
どうやら目のハイライトが消えている。
「俺たち、元のギルドに戻ります。レオンさん今まで世話になりました。」
うわー。精神操作系のスキル怖いわ。
でも、ここで言っておかないとな。
「ギルド長たちは、前の給与の30倍支払ってくれるそうですよ。良かったですね。みなさん。」
「えっ、良いんですか?ありがとうござます。」
そう言って、喜びながら彼らは元のギルドに帰っていった。
本当に最高のギルドメンバーだったよ。君たちは。
このF級ギルド 覆水に残ったものは、
アンナ10才(元ギルド長の娘で受付嬢)
じいさんたち(先々代のギルド長の友人)
事務員のレナ(唯一残った追放者)
そして、E級ギルドに上がりかけた実績だけだ。
これから大変になるな、彼が抜けた穴が大きすぎるんだよな。
各ギルド長も、もう少し時期をずらしてバラバラに来て欲しかったな。
あっ。そういえば冒険者いないや。
スカウトに行かないと。
また誰か、追放されてるだろう。
と俺は本気で、そんなことを考えていた・・・
俺は、次の出会いを楽しみにしながら、王都の広場に走っていった。
俺の堕落したF級ギルド長生活も、まだまだこれからだ。
このあと、仲間にした冒険者もまた、無能そうな有能さんで前のギルドが取り返しに来たり、
グレンたちが正常に戻って各ギルドを乗っ取ってから、「F級ギルド覆水」に合流しようとするのは、
また別の話。
完
あとがきのコーナー
ざまぁなし。
爽快感がないですね。
最後までご覧いただきありがとうございます。
京安藤しーぷです。
初の、短編でない物語です。
普段は、短編の婚約破棄物書いております。
・従者は、お嬢様の婚約者を許さない。
・王子の前世の記憶が戻った時には、手遅れだった。
・私は妹の婚約者とキスをする
・第1王子ですが、変装を極めた結果、公爵令嬢に似てるので噂の男爵令嬢を指導してました。
・NTR好きの王太子
・第1王子は廃嫡の夢をみる。
それ以外
・俺の恋人は魔人の力を持っている。
・こどおじニートが、単に転生して高校生になるだけの話。
作者名からたどれると思います。
よろしければ、どれか読んでいただけると幸いです。