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ヒロイン転生

魔法を扱うに必要な魔力には大きく分けて正と負の2種類ある。


正常な属性魔法を操る正。そして負に傾いた魔力は魔素と呼ばれている。


魔力は普段は森羅万象に宿る力でもあり、私たちが吸っている大気中にも発生している。


無論、魔素もこの大気中に少量を含んでいる。


魔素は少量であれば人体に被害が及ばないが、例えばなんらかの原因で大量発生し、魔素に耐性がない人間や魔力のない人間が体に取り込んでしまえば体調不良の原因になったり、体に負荷がかかることにより死んでしまうこともある。


私たち人間が生きるにはこの魔素を定期的に浄化しなければいけない。


この魔素の浄化の力を持つ者が聖女であり、光魔法の使い手だった。


このロールス王国ではとくに魔素が発生しやすい立地にあり、希少な光魔法を使える女性と聖女という存在は切っても切り離せない関係であった。


聖女というのは光魔法を使える女性の中から選ばられるのだが、そもそもこの光魔法は100万人に1人、またはそれ以上の低い確率の中からしか生まれない。


その希少さも相まって、ロールス王国ではとくに聖女を王族と同じような扱いにした。


聖女の生まれが平民でも、貴族でも、移民でも、聖女に限っては大切に扱われる。


それを知っている王国民からすれば聖女は憧れの役職、そして羨望と信仰の対象でもあった。


そして私、エミリア・ローズマリー5歳。ローズマリー伯爵とローズマリー家に仕えていたハウスメイドの間に生まれた平民と貴族の混血。


光魔法の使い手であり、聖女候補に該当する。


さらに属性を加えるなら、異世界転生者であり、この世界そのものが「籠の鳥の聖女」という乙女ゲームの世界。


エミリア・ローズマリーは乙女ゲームの主人公だ。

まぁ、後半はぶっちゃけてどうでもいい。

私にとってはゲームの世界に転生して主人公になってしまったことは重要ではない。

いや、最初はエミリア・ローズマリーと言われて驚きを隠せなかった。


だが、エミリアは何を隠そう、これから「籠の鳥の聖女」の主人公として、ハウスメイドである母に手を出したあげくに、孕ませた途端家から追い出し私が5歳になるまでは知らぬ存ぜぬだったし、さらに言えば私が希少な光魔法を使えると風の噂で聞いた途端に掌返し、母親から私を引き離し伯爵家に軟禁する最低クズ野郎ことローズマリー伯爵の家で過ごさなければいけない。


私はプレイした乙女ゲームだったからこそ、エミリアの過去やこれから起こることが目に見えてわかっている。


攻略キャラによって過程は変わるが、目的は同じ方向。


まず、5歳~14歳の間はローズマリー家で貴族に必要な教養、マナーを学ばされる。その中で私の平民という身分を蔑む、義母、義姉たち、家庭教師に執拗ないじめに遭う。


そして迎えた15歳の日にロールス王国にあるスロイス魔法学園に入学させられる。


そこで光魔法の噂を聞きつけた魔法を学ぶ一癖も二癖もある、魔法技術はピカイチだが、性格に難がある攻略キャラの貴族の子息たちと出会い、起こりうる様々なトラブルを解決していく。


主人公は自分の生い立ちと、姉妹や義母に蔑まれた過去ですっかり自信を無くしてしまったせいで、聖女にふさわしいのか。愛の告白をする攻略キャラたちを受け止められるのかという葛藤を繰り返す。

最後には攻略キャラと幸せになって、聖女という仕事に誇りをもって人生を全うするというありきたりなエンドだ。


……いや、なにこのご都合主義展開。


まず、自分たちを捨てた伯爵に文句も言わず従順に従っているのが気にくわないし、光魔法が使えるからってだけで掌返して私だけ伯爵家に引き取る父親にむかっ腹が立つ。


さらに言えば、貴族は階級社会だから平民としっただけで下げすむ義姉妹、義母にいじめられっぱなしで自信喪失をしてしまう主人公の弱さにも私は納得しない。


乙女ゲームの主人公は感情移入できるようになるべく薄い設定か、ヒーローが守ってあげたいと思う設定にするってどっかで聞いたことがあるけど、この乙女ゲームに至っては主人公と周りの不条理さでイライラが募っていくだけだった。


なんで転生してしまったのかわからないけど、転生してしまったのなら、してしまったで仕方がない。

私の意思がそこにあるなら、私は私で好きでやらせてもらう。

私の心情は「やられたらやり返す」。

今度こそ、ご都合主義の理不尽展開なんてぶっ壊してやるんだから……!

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