Episode1 〜決戦前夜〜
能力者研究施設。
物心着いた時には、この施設にいる。
5年前、レイカという名の少女は少年の前から
居なくなった。レイカの持つ能力が強力なことを施設の研究者が知ったからである。
武装した戦闘員10人がかりで制圧され、
当時10歳だったエレンにはどうする事も
出来なかった。
以来、彼の目標は少女の奪還へ。
施設の能力者部屋に連れてこられた仲間達。
ジュンは嬲り殺しにされた恋人の仇を
討つために。その時監視官に殴りかかり潰された片目は憎しみを忘れない為の証らしい。
アカネだって脱出して離れてしまった
母親に会いたいと話している。
施設からの脱出は全員の悲願だった。
エレンたちはこの施設から脱出する
計画を立てた。
外の革命戦線と共に、この国と戦うのだ。
きっかけは2ヶ月前に遡る。
脱出の話はかなり前から仲間内で計画されていた。主にエレンとアカネが統率をとり、
準備は着実に進んでいた。
チカの能力、''細工師''で金属食器を少しずつ
ナイフに変えていった。
ベットの布団などをロープへと変え、
各自戦闘に必要な能力の練習や基礎体力、
喧嘩程度だが暴力の練習もした。
当然、
その間の監視カメラはジュンが欺瞞した。
だが、圧倒的に情報が足りない。
施設が7階建てで地下は5階まであり、別施設にランク上位能力者が隔離されていること。ランク5まではこちらの施設にいること。エレンの探す少女が別施設にいることは確実だがその具体的な居所までは分からないこと。
これくらいの情報しかない。
外部の様子すら分からない。
そんな時、施設に''革命戦線''を名乗る
朱里という女性が面会に訪れた。
施設の職員の目を盗み通信機を受け取った。
最初は疑っていたのだが、彼女が示した場所に実験で死んだ同胞の亡骸があった時にその
疑いは消えた。
施設の研究者達は能力者を実験に利用し、
あまつさえ殺してしまったのだ。
彼女の話によれば1週間後、皇帝が他国に行く関係で手薄になる施設の警備を突いて攻撃を
仕掛け脱出の手助けをしてくれるらしい。
「革命の理想は支配社会を終わらせること。
能力者が目覚めた時に起きた暴走事件。
死者142名、重軽傷者639名。
これだけの被害の可能性があなた達を
逃がすことで発生する。
私達にも葛藤はあるの。でも
私達革命戦線にはあなた達の協力が必要。
腐った社会に立ち向かう為にどうか、
協力して欲しい…!」
いつにも増して真摯な朱里の声音に
彼らの心はひとつになった。
「決戦は明日だ!この屈辱を晴らす!
明日7時に必要な準備を終えてここに集合!
絶対に取り返し、ここを脱出しよう!」
鬨の声があがった。
いつ研究に回されて死ぬかもわからない
極限の状況で湧いた一縷の望み。
決戦の朝が迎えようとしていた。