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プロローグ 〜始動〜
皇帝の双子誕生のニュースはレア帝国の全土を瞬く間に広がった。
優しく、穏やかなレア=ドルート皇帝は民から大きな信頼を寄せられる名君だ。彼は晴れやかな表情で民の前に現れた。
夜のパレードが終わり、花火が上がっていた。
穏やかなそらに、幸福な今。
だから皆、忘れていた。人間の幸せなど簡単に消えて無くなることを。
突如上がった閃光に歓声が上がる。
領土に隣接する海域にたつ蒼く巨大な、光の柱の圧倒的なその威容に。
『侵入不可能領域』ー。入った船は沈むと言われる絶死の海に。
世界の在り方が変わるなど、この星の民は、まだ知らない。
故にこう記す。
『人の欲は時に、想像もしない絶景を生み出す。
その光景の代償がなんであるかなど、誰も考えもせずに。』