新しい技と奴の影
真夜中ですな。
川崎悠平より
俺は最新作の泡が溢れ出るタイプのバージョンアップした北海道登別温泉の白色の入浴剤を熱い湯船に投げ入れて泡まみれになる前の無邪気なお湯に飛び込んだ。
「ぐわ~ん、ぐわーふん、最高に気持ちがいいよ~う」と俺はご満悦な声を出した。まだ無邪気なお湯に潜って顔だけ出した。
「どうもこんばんは、オフィーリアでぇ~す」と言った後で、右腕を出して、「ネッシーでぇ~す」と言ってから左腕を出して「ニューネッシーでぇ~す」と言った。
「おい、ニューネッシー、お前の腐乱ぶりは凄かったな。鼻がもげるかと思ったわ。ウバサメだと言われてウヤムヤにされて辛かったと思うたけどさ、俺は知っていたよ」と右腕のネッシーは左腕のニューネッシーに話し掛けた。
「ネッシー、ありがとう。そう言って貰えると救われるよ。僕は首長竜のプレシオサウルスなんだよ」と左腕のニューネッシーはセンチメンタルにネッシーに言った。
「やはりそうだと思ったよ。僕はブロントサウルスなんだ。世間はネッシーの正体はプレシオサウルス、プレシオサウルスと何回もしつこく言われたてきけどね、ここで明確にしたい。僕はブロントサウルスです」と右腕のネッシーは優しくニューネッシーに語りかけた。
「そうだったのか。1度、ちゃんと顔を見せにネス湖までね、挨拶にいこうとしたけどもさ、都合がつかなくてね。なかなか時間も取れなくて困ってさ。遅れてごめんね」と左腕のニューネッシーは控え目な態度でネッシーに言った。
「全然、気にしなくていいよ。そうだ、LINEの交換しようよ」と右腕のネッシーは明るい声で言ったが、左腕のニューネッシーは「ごめん、ガラケーなんだわ。近々、スマホにするから先にLINEを教えて貰えるかい?」と左腕のニューネッシーは丁寧にネッシーに言った。
「いいよ。僕のLINEはね」と俺はUMAゴッコをしていた時にだ、突如閃いた!
「そうだ! プレシオサウルス拳を編みだそう。これは使える。酸張流犬痔の蛇拳よりも強力な拳法になるはずだ。ネーミングはニューネッシー拳にしようかな?」俺は左腕のニューネッシーを見ながら言った。
「よし、決めた。ニューネッシー拳でいこう。気が変われば首長竜拳でもいいや」俺は左腕を駆使した一撃で木っ端微塵になる打撃系統の必殺技を作るため湯船の中でイメージを練った。
俺は15分ばかり湯船の中でニューネッシー拳を繰り出していた。何度も水圧に耐えながらも、前から気になっていたアイデアを元にニューネッシー拳に応用してみた。
遂に出来た。
「よし! これだ! ニューネッシー拳、または首長竜拳は完成だ!」俺は風呂から上がり急いで服に着替えると炭酸水を取りに茶の間に行った。
「お~、やっと登場しましたか。家のエースで4番的な存在、次男坊の可愛い川崎悠平ちゃん、悠平ちゃんチキチキちゃん」と酔い果てた親父の川崎源之介が上半身裸で茶色のダサいネクタイを締めて、木綿のパンツ一丁姿で回し蹴りを連発していた。
「悠平、どうだ、父ちゃんの回し蹴りはよう? 健在だろ? 悠平、覚えているか? 昔、父ちゃんと一緒に、山に行って山菜を取りに行ったろう? 偶然にもさ、熊に出会ってさ、父ちゃんと熊が目と目で罵り合ってさ、かなりゆっくりと熊が父ちゃんに近付いて来たからよう、父ちゃんの方が痺れを切らせてさ、熊に向かって走っていったらさ、熊も走って来たよな。父ちゃんは2才くらいから喧嘩には自信があるからさ、熊の顔を目掛けて回し蹴りを20回も連発して倒したよな」
熊を倒した親父を持つ子供の気持ちも知らないでさ、同じ話を5万回くらいも聞いたわ。
本当に実際にあった話なんだわ。親父は倒した熊を引きずって知り合いの猟師に預けてさ、熊の肉を5キロ分も頂いたからね。命懸けの戦いで幼い俺を守ってくれたのは事実だからさ、今も深く感謝しているけどね。
俺も助太刀したかったけどね、当時の俺は5歳だから無理な話さ。
でもさ、親父の強さを認めざるおえないよな。大した武術や格闘技の経験がないのに、家の親父はやたらと強いんだわ。マジで謎だよな。
俺は冷蔵庫から炭酸水を取ると、その場で一気に飲み干し、そそくさと茶の間を出てから庭に向かった。
既に酸張流犬痔は庭に不法侵入していて腕を組み仁王立ちだった。
「川崎悠平よ、遅いじゃないか」酸張流犬痔は俺を睨んでいた。
「痔よ、質問がある」俺は庭の照明を付けた。
「痔じゃない! 犬痔だ!」
「痔よ、なぜ俺を狙うんだ?」
「犬痔だってよ! 噂のサンダー拳とやらを見てみたくてな。お手合わせを願おうとしたんだ」
「どうも臭い。何か引っ掛かる」
「何がだ?」
「痔よ、他に誰か黒幕がいるんじゃないのか?」
「黒幕?」明らかに酸張流犬痔は動揺した。
「そう、黒幕だ。痔よ、今すぐに吐けよ」
「犬痔だってばさ! 黒幕はいない」
「痔よ、本当か?」
「犬痔だって! 犬痔! 黒幕はいない」
「中沢芽蘇詞流己だろう?」と俺は言ってみた。鎌をかけたのさ。
「げっ!?」酸張流犬痔は分かりやすくバカだった。
つづくぜ
グッドナイト。
川崎悠平より




