失恋の特効薬
実に破壊的な美少女だった。一目見るなり恋に落ちるというのはよく聞く話だが、有無を言わさず、圧倒的なパワーで、極めて暴力的に・・・叩き落とされてしまった。
それはありふれた水曜日の朝、可燃ゴミの袋を出しに近所の集積場に行った時の事である。いきなり大事件が起こった。
「おはようございます。」
「あっ・・・・(絶句)・・・」
凄まじい衝撃で僕は動けなくなった。金縛りって現象だ。
「あっ、今度、そこの堀越さんの家に引っ越してきた広瀬です。よろしく。」
僕の前にゴミ袋を持って軽く会釈し微笑む少女、肩くらいまでのショートヘアーで整った顔立ちだと思える20歳前後の紺のワンピースの、恐ろしい目力に僕は暫く動けなくなった。大事件の全容はこんなモンだが
これはタダのプロローグに過ぎなかった。
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自己紹介が遅れたが、僕?と言うには少しばかり歳を取っている。今年の6月に50歳になる紛れもないオッサンだ。もちろん50歳でも格好いい男はいるが、僕はそうではない。この年までいい話が無かった訳でも無いが、生来の面食いなので結婚までまとまらなかった。贅沢かなって思うがときめかないから仕方ない。
「冗談じゃ無い、一目惚れなんて身分不相応だ・・・」
僕は強烈な胸のドキドキ感と顔が紅潮するのを感じながら美少女を見送った。