悩める少年、友人のために首を突っ込む
学生数の多い学園には変な部活や愛好会は定番。
【転生者・蒼天寺 豹真】
「ひ、豹真クン、今日は愛好会…い、くのかい?」
「一応、そのつもりだけど?」
「そ、それなら一緒に行こう、よ。コレ、持ってきたんだ。サムライダー村雨のDVD」
両手にパッケージをもってご機嫌のオタク君。
彼は同じ”特撮愛好会“のメンバーだ。
天輪学園では、放課後の部活動への参加がほぼ義務づけられている。
と、いっても活動してるかどうか怪しい愛好会でも所属していればオッケーなので、義務というわりにはかなりユルいのだが。
「おー、それ気になってたヤツじゃん。もしかしてわざわざ?」
「偶然だよ、偶然…フヒッ」
うむ。
これはわざわざ探してくれたパターンだな。
現実が特撮みたいな出来事だらけの異世界でも特撮番組は存在し、そしてコレがまた意外と面白いんだよねー。
「あ、いったん売店寄っていい? ポテ揚げ買ってこうぜ。部室の冷蔵庫って飲み物あったっけ?」
「え、あー、たしか烏龍茶とオレンジジュースと……炭酸系もあったか、な?」
「結局そろってんな。じゃ、お菓子だけでいいか」
特撮愛好会はメンバーが多いので備品も結構揃ってる。
5年くらい前の会長たちの世代が、みんなでお金を出しあって冷蔵庫を購入してくれたお陰で、下手な部活より快適な空間になっている。
ま、さすがにエアコンはムリだったらしいけど……充分ありがてぇ。
ちなみに部活も、愛好会も、初等部から高等部まで自由に入ることができる。
なので―――
「うーん、やっぱコンソメっしょ! オードーってヤツじゃーん!」
「王道ならのり塩なのでは?」
「……レモンペッパー」
「おうチミッコども、いつの間にわいて出た?」
男二人で売店で買い物中、唐突に現れた三姉妹。
「えー? だって豹兄ちゃんたちトクサツ見るんでしょ? ならワタシらも行くっしょ! 同じあいこーかいの仲間じゃーん?」
……と、まぁこんな感じに一緒になったりもする。
初等部の6年生の三つ子の姉妹、この子たちも特撮愛好会のメンバーだ。
「ま、まぁね、賑やかなのはいいことだよ。うん」
「そらまぁ、真面目に構えて見るようなアレじゃないけどさ……まぁいいや。ほれ、おごっちゃるから食いたいもん持ってきんさい」
「「はーい!」」
三姉妹ほか数名も合流して部室に向かう。
特撮愛好会は結構な人数が……50人くらい? 所属しているので、気がつけば常に10人くらいでDVDを眺めている。
「あ、天ちゃん天ちゃん。お客さん来てるよ?」
「お客さん?」
部室に入って開口一番、俺に来客?
「やぁ。お邪魔してるよ、豹真君」
「ユキ?」
巴雪之丞。
中等部生徒会の会長で、中等部の序列一位にして、槍術の名門・巴流槍兵術の跡取り息子だ。
「珍しいね、わざわざこんなとこまで顔出すなんて」
「えぇ、まぁ、少し…相談したいことがあってね」
DVD鑑賞会はひとまず中断、みんなでお菓子を食べながらユキの話を聞く流れに。
「実は、巴家で水の神器を預かることになりまして」
「「へー」」
「……僕、結構なこと口にしたつもりなんですが?」
「だって……」
「ねぇ……?」
そんなん知ってた、というのが正直なところだし。
普段から一生懸命ゴマすりしてた連中こそ、自分が後釜にと本気で思ってただろうけど。
水神の当主は評判はいまひとつでも変な信頼感あったから、大方の人は予測したんじゃないかな。
「正直なところ、皆さんの反応も想像していましたけれど。で、まぁそれに関してもうひとつありまして。実は僕が結びの儀式を行うことになりました」
「「へー……えぇッ!?」」
「さすがにこっちは驚きましたか」
そりゃ驚くよ!
結びの儀式とは、人と精霊の魔力を繋ぐことで精霊の力を使えるようにすることだ。
結果、ファイターとして大幅にパワーアップできる。
元の能力が低いとどうにもならないけど。
この前に襲撃事件がいい例だな。
「そういうのは普通、当主が行うものでは? この場合は風雪さんですか」
「だよねー? 学生が結びの儀式なんて聞いたことないよね?」
「それもよりによって大精霊かよ。スゲェな」
皆もザワザワしてる。
普通に考えたら現当主、この場合はユキの親父さんである風雪さんが結びの儀式を行うのが当たり前だ。
「僕もそう思っていたのですが、どうやら大人の事情は想像していたより面倒なようで」
どうやら何かしらの政治的な面倒があるらしい。
風雪さんは当主としての役目を果たす中で、やはり色々なしがらみというヤツで自由に動けないのだそうだ。
水神家の当主は本気で巴家に神器を託すつもりらしいが、他の家の当主たちが黙っていない可能性が高い、と。
それならいっそのことユキに結びの儀式を任せたほうが柔軟な対応ができると判断したそうだ。
「うん、風雪さんちょっちギャンブラー過ぎやしないかい?」
そら学生だからこその自由もあるだろうけど、身を護る手段も限られてるべよ。
つーか、権力や政治力で搦め手使われたらアウトじゃん。
「父さんも何か狙いがあるようなのですが、教えてもらえなかったんですよ。その、僕はごまかしとかそういうの…苦手、なもので……」
「「あ、あぁー……」」
ユキは正統派真面目タイプだからなー。
ま、風雪さんも海千山千乗り越えたベテランファイターだ。
俺じゃ思いつかないような手札があるんだろう。
で。
「本命の相談したいことって何?」
「次の土曜に結びの儀式を行うのですが、その式典に豹真君にも出席して欲しいんです。僕の招待客として、です」
「それは…別にいいけど、なんでまた?」
「他家へのけん制、ですね。良からぬことを考えてる家の同級生たちが取り巻く前に、僕自身が信頼できる人間としっかりつながりを持っておけ…と言われました」
「それで俺に? 嬉しいこと言ってくれるじゃないか」
確かに面倒ごとは遠慮したい。
でも友人に頼られるのは嬉しいもんだ。
「ねーねーユキちゃーん!それってワタシたちも行ってもイイ系ー?」
三つ子の長女がワクワクしていらっしゃる。
「紅緒、お前アレか。精霊見たいんだな?」
「あたりー♪ さすが兄ちゃん、ワカってますな~。こないだのほーのー祭は用事があって行けなかったんだよー」
「それ、正解だと思うけどなぁ。ヤバかったぞ、マジで」
(……それ、兄ちゃんがはぐれモードでも?)
(はぐれモードでも。ガチの強キャラ)
なんで紅緒が俺がはぐれなのを知ってるかって?
三姉妹もはぐれファイターだからです。
「構いませんよ。僕のほうにも打算的な部分がありますから。興味本位でも来てくれるのは助かります」
「音羽には?」
「まだです。彼は豹真君が引き受けてくれるなら大丈夫だろうと思って」
わかられてるな~音羽のヤツも。
幼馴染は伊達じゃないね。
とりあえずこの場にいたメンバーはお邪魔することに決定した。
これに音羽と……鉄也と双葉はどうだろうな~。
葵もだけど、アイツらも水神家絡みを避けたいほうだからな~。
この前の祭だって、屋台が出てなかったら俺らが誘っても来なかっただろうし。
しかし、襲撃だけでも大変なのに獅子身中の虫もいるとか……結びの儀式、大丈夫なのかな?
~ちょっと補足~
・巴雪之丞
・天輪学園中等部3年生のトップ。エルフ。
・豹真、音羽とは幼馴染。
・二人が本当は強いことは知ってる。でもはぐれなのは知らない。
・三姉妹
・長女 紅緒。近接型のにぎやか士。
・次女 静梨。クールな狙撃手。
・三女 日向。情報支援系の能力。でも寡黙。
・特撮愛好会
・読んで字のごとく特撮好きの集まり。
・普通学科も闘士学科も関係なく所属している。
・ファイターの身体能力を生かして、ヒーローショーにボランティアとして参加したりも。