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エーテルファイター!(未完)  作者: 鎮静の女神
8/10

悩める少年、とりあえず甘味に逃げる。

豹真は何だかんだ地道な努力を重ねてます。

本人は自分を女神チートだと思い込んでますが。

【転生者・蒼天寺 豹真】


 ついに現れた強敵。


 転生してから15年、いよいよ決断の時が来たか…ッ!


 と、大げさに言ってみたものの、選択肢は限られてるんだけどね。




「それでは兄さん、お願いします」


「おう。かかってきんさい」




 人死にが出るくらいなら精霊の力を“使う”という方針、これは揺るがない。


 もっとも、助ける人間は選ぶけどね。


 あいにく俺は聖人君主じゃなし、霊験庁もそれほど信用していない。


 民間人なら……嫌なヤツでも助けるかもしれなけど。




「……疾ッ!」


「破ッ」




 はぐれファイターであることがバレるのはダメだ。


 俺自身が制限かかるだけじゃなく、他のはぐれファイターにまで影響が出てしまう。


 完全な隠密行動をしていたのならともかく、人助けしてると、どうしても顔(というか仮面)を見られてしまう。


 これが中世系ファンタジーならワンチャンス誤魔化せるだろうが、ここは近代社会。


 俺の戦闘シーンも動画取られてアップロードされてるからね。


 まず間違いなく確定余裕されるでしょ。




「フッ! はッ! たぁぁぁッ!」


「おっとぉッ!」




 女神さまの力?


 勿論、論外です。


 相手がよほど…そうとうケタ違いの存在でもなければ使えない。


 “鎮静”の加護、名前は穏やかだけどさすがは女神の力、次元が違った。




「封縛風掌ッ!」


「風、水と混じりて氷壁を成せ」




 一応いろいろと備えはある。


 これでも転生者、凡人とはいえ考える頭はある。


 女神さまと精霊と、強力な協力者もいる。


 協力者だけに強力ってね。


(アタシはそういうの、キライじゃないよ? 布団が吹っ飛んだは名言)


 女神パワーの前ではプライバシーなど無意味。




「ふッ!」


「お…っと」


「―――ッ!」




 俺が体勢を崩したのに合わせて葵が構えを変えた。


 得意の太刀風から攻体の構え・轟嵐に。


 魔力のリソースは攻撃7割、防御3割。


 霊力のリソースは攻撃10割の完全に“攻める”スタイルだ。




「せぇぇぇぇいッ!!」




 霊撃ではなく、風の霊気を使った抜き手できたか。


 いい判断だ。


 霊撃を用意していたら俺の姿勢が戻っちゃうからな。


 もっとも。




「―――え?」




 そう思わせる作戦なんだけどね。


 氷の霊気を纏った腕で葵の風を受け止めて、もとい、受け流す。


 氷属性は風属性に対して有利に働く。


 日本のゲーム脳の俺としては不思議だが、この世界のルールだから仕方ない。


 風を取り込み氷の霊気に攻撃性が加わり、もちろんそのまま―――




「兄さん、ズルいです」


「努力の成果だよ」


 生き残るためにいろんな戦い方を研究してきたからね。


 文字通り死にそうな思いをしながら、な。


 精霊たちにはもっと命を大切にしろと説教されたりもした。


 女神さまは呆れつつも、


「アタシは知らなかったけど、一度死んだ転移者……転生者? はそういうトコ、あるみたいだね。まぁ一回死んでるから、どっかの感情が希薄になってるのかも。研究してる女神なんてハナシ聞いたこと無いから詳しくは知らないよ」


 とのこと。


 何となくだけど、わかる。




「それでもズルいです。卑怯です。妹の心を傷つけた責任をとってください」


「ほう。具体的には?」


「私にもあの技術、教えてください」


「属性カウンターをか……まぁ、いいけど」


 ちょっと悩んだけど、葵なら大丈夫だろう。


 一応、属性のカウンターは高等技術、らしい。


 複数の属性を“同時に”扱わないといけないからだ。


 葵は昔から俺の特訓に付き合ってたので問題ないだろうが……また注目を集めることになるだろう。


 本人はそれに気づいてないみたいだけど、可愛い妹の頼みだからな。




 さて、今日は前回の水神家の奉納祭から一週間ほど経過した土曜の休日。


 事後処理のことを考えても水神家がそろそろ動く、ハズ。


 たぶん。


 霊験庁や特務機関がどれほど情報統制を行ったところでSNS全てを監視はできない。


 実際、水神家にとってあまりよろしくない発言などアレコレがネット上に出回ってる。


 あの当主は政治的な行動力はあるから、炎上前にいい具合に収めるだろう。




 で。


「豹真くん、槇原さんのところにお使いをお願いしていいかしら?」


 義母・陽子さんから用事を頼まれた。


 槇原さんというのは甘味処の女将さんだ。


 両親が子供のころから姿が変わらず美少女のままの、ある意味恐ろしい女性だ。


 年齢について尋ねると困ったように微笑んではぐらかされるらしい。


「いいですよ。俺も何か食べに行こうと思ってたんで」


「ありがとうね。それじゃあこれ、お駄賃ね」


 そういって2000円を渡してくる陽子さん。


「別に自分の小遣いで―――」


 充分、という俺のセリフを遮って後方を指さす義母。


 そこにいるのは出かける用意をする我が義妹。




「あら、二人ともいらっしゃい。相変わらず仲がいいですね」


 甘味処・桔梗の虹菓子。


 年齢不詳の和装美少女が出迎えてくれた。


「槇原さんこんちわっす。これ、母から」


「まぁ、お野菜。ふふ、後でお礼に伺いましょうか」


 我が家の裏手にある、ちょっとした農場の野菜はご近所さんにも評判である。


「俺、いつもので」


「私も同じものを」


「かしこまりました。すぐにお持ちいたしますね」




 運ばれてきた玄米茶と団子3種のセットを楽しみつつ、葵とのんびり。


 していたところ。


≪―――では、ダークソルジャー相手に不手際があったことを認めるのですか?≫


≪認めるも何も、事実です。七星家の名を賜る身でありながら情けない話ですが―――≫


 ちょうどニュースで水神家やってら。


 オークみたいなエルフだけど、ちゃんとした格好をしてるとそれなりに見てくれは整うな。




≪―――というわけで、水神家は七星の名を返上し、神器を次の世代に託すことにしました≫




「……兄さん、私、耳の調子が良くないようです。あの水神家が権力を手放すような発言をするなんて、幻聴に決まってます」


「大丈夫だ。お前の耳は問題ない」


 気持ちはすごくわかるぞ、妹よ。




 発言の内容はこんな感じ。


 今回のことに責任を感じた当主はエーテルファイターの重鎮としての地位を徐々に返上する。


 一つの家が長く居座り続けたことが慢心を呼び、今回のミスにつながったのだと。


 だから分家のいずれか相応しい家に七星家の役目を譲るらしい。


 ただ、一度にすべてを押し付けても混乱するだろうと、しばらくは現状維持。


 そこでまずは神器を護る役目だけを任せる、と。




 なかなか考えたな。


 権力は手放さず、危険物だけ押し付けるか。


 だがあの当主のことだ、ヘタな家には任せないだろう。


 欲に目がくらんだ連中がすり寄るだろうが、私情はすべて無視して純粋な実力だけで選ぶだろう。


 それができるところは尊敬している。


 割とマジで。




「神器の引継ぎ、ね。どこが選ばれるんだろうな」


「……兄さん、それ、本気で言ってますか?」


「ん?」


「純粋な実力で選ぶなら、一つしかないでしょう?」


「……あぁ」


 うん。


 そういえばそうだった。




 水神家の分家は多数あるが、そのなかでも屈指の実力者が当主を務めている家がある。


 ただ分家の中では真っ当な側の人物なので煙たがられていた。


 感情抜きなら間違いなくあそこが選ばれるだろう。




 本当に、イヤな予感がヒシヒシとしてきた。


 そこの跡取り息子、俺の小学生時代からの友だちなんだよなぁ。

~ちょっと補足~


・蒼天寺陽子

 ・豹真の義母、葵の実母の只人族。

 ・戦闘能力はない。

 ・が、多少霊力を扱えるので見た目は若い。


・槇原さん

 ・年齢不詳の美少女。狐人族。コーン。

 ・いつでも和装。洋服姿を見た者はいない。

 ・もしかしたらスゴイ実力者のはぐれファイターかもしれない。


・甘味処・桔梗の虹菓子

 ・蒼天寺家から歩いて数分の場所にある和菓子系専門店。

 ・ご近所の一番年配の人曰く「自分が子どものころにはもうあった」

 ・密かに魔導水晶の買取も行っている。

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