憧れの異世界学園・訓練のヒトコマ
学園都市。
イメージ的にはウィザー〇リィやと〇モノに近いかも?
【転生者・蒼天寺豹真】
ファイターが強くなるための方法は二つ。
一つ目、地道に魔力を集める訓練を続けること。
二つ目、魔獣から手に入る魔導水晶を取り込むこと。
どちらかの手段で魔力の器を高めることで戦闘力を高めるわけだ。
現在の主流は後者、魔獣を倒してレベルアップだ。
理由は単純、簡単で早いからだ。
まぁ俺はあんまりやらないけどね。
何故か?
魔力の器が広がると誤魔化すのが大変だから、というのが一つ。
それと、魔導水晶を取り込む方法が昔は主流じゃなかった、ということが気になった。
ゲーム脳というかラノベ脳というか、昔は使われなかった、でも今は便利なんでみんなやりますよー、っていう流れがね?
ちなみに精霊たちはこの件で相談はしてない。
だってあの子ら魔獣から水晶とって喰うの日常だし。
まぁそんなビビりな俺の事情はともかく。
経験値……もとい、水晶の稼ぎ場として学園が管理している迷宮がいくつかある。
外の魔獣と同様、素材の類いは採れないが、魔導水晶は学園内で使えるお金として買い取ってもらえる。
そしてそれを超える利点が一つ。
なんと、中で致命傷を受けても無傷で入り口に飛ばされるのだ!
いやー、すごいなー、なんて便利なんだー。
ええ、まぁ、俺は女神様に理由を教えてもらってます。
各地の学園が保有している迷宮は全部女神様たちの加護があるそうな。
人間の成長を願った女神様が残した秘宝、それが変化したもの、らしい。
それ以上詳しくは聞いてない。
人間が踏み込まない方がいい領域、あるいは踏み込んでも意味がない領域があるってもんだ。
まぁ迷宮の成り立ちはおいといて。
実技の授業で潜るので、当然クラスメイトとパーティー組んでの探索となる。
「さて、準備はよろしいでありますか?」
「問題ない。いつも通りだ」
「私もよ。がんばろうね? ウフフ♪」
いつもの4人のメンバーが揃い……4人?
「双葉さんや」
「なぁに? 豹真ちゃん」
「なして君がいるんだい?」
「えぇ~? その言い方、私がジャマってことぉ~?」
クスクスと笑う竜人族の美少女、御剣双葉。
こやつも音羽・鉄也と同じく、ともにはぐれファイターとして活動する仲間なんだけど…。
「いやいや、スキルアップのためにたまには違う子たちと~、って宮本君とこのグループに混ぜてもらってただろ? 今日はいいのか?」
「ああ。そうそう。確かにそうだったんだけどね~」
美しい銀髪をフワフワさせて色っぽく微笑む。
「彼ら~、途中から上手に動けなくなって、探索中断しちゃったの。前かがみになって。なんでだろうねぇ~?」
「「……なるほど」」
双葉は基本、近接タイプのファイターだ。
武闘棍を使った舞うような棒術で戦う。
当然、フワフワとめくれるわけだ。
スカートが。
スパッツをはいてはいるけど、ラインが出るから刺激が強いんだろうな。
でもなぁ。
「あいつら……双葉のこと知ってるだろうに」
煌めく銀髪、白い肌、紫色の蠱惑的な瞳。
どこからどう見ても美少女としか見えないがその正体はれっきとした男である。
男である。
出るとこ出てるし男ならあるべきはずのシルエットの気配もないので女に間違えるのも仕方ないっちゃそうなんだけど。
「命属性の霊気の使い方、間違ってんだろ……」
「まぁまぁ。華やかでよろしいのでは? 別に悪事に利用しているわでもないでありますからな」
付き合いの長い音羽はともかく、鉄也の方はまだ違和感あるようだ。
命属性。
特に生命活動に関する強い適正を持つ。
基本は治癒や強化に使うものだが、武器として扱えば非常に強力だ。
精霊曰く、かつては暗殺者たちがその力で肉体を変化させてターゲットに近付き、すれ違いざまに生命活動を強制停止させたりもしていたらしい。
身体変化という意味では双葉は間違ってないんだけど……うーん。
「俺は別にいいけどさ。前衛二人の安定感はいいものだ」
「ふふ。豹真ちゃん、音羽ちゃん、鉄也ちゃん。今日もよろしくね?」
迷宮の一階はエントランスになっている。
ありがたいことに他のパーティーと迷宮の中で会うことはない。
俺たちのように人前で力を使いたくない生徒にとっては非常に助かる。
「では豹真殿、指揮をお願いするであります!」
「指揮ってほど何かできるわけじゃないんだけどなぁ…ま、いっか。そんじゃ―――霊気兵装、展開」
「霊気兵装、展ッ! 開ッ!」
「霊気兵装、展開!」
「霊気兵装ぉ~、展かぁ~いッ♪」
戦闘濃度のさらに先、より霊気の密度を高めることで具現化されたエーテルファイターの武器。
音羽はハンドガンを2丁。
鉄也は両手に籠手。
双葉はシンプルな細工の武闘棍。
そして俺は日本の陰陽師なんかでお馴染みの術式符。
鉄也と双葉が前衛を担い、音羽が死角をサポート、俺が術式で攻撃・防御・補助を。
RPGでも安定感ありそうな戦士、武闘家、狩人、魔法使いのパーティーだね。
【霊闘士・真上 鉄也】
エーテルファイターの戦い方はいくつかある。
基本は霊気兵装での攻撃だ。
一応、普通の武器に霊気を纏わせて戦うこともできるが、エーテルファイターを名乗る以上、霊気兵装の具現化は前提条件みたいなもんだ。
……豹真みたいに何でも武器にするヤツもいるがな。
アイツ、タダのボールペンに術式纏わせて魔獣ぶち抜いてやがったからな。
……まぁ豹真みたいな例外は別枠だ。
で、普通に殴って倒せるだけの敵しかいない、なんてことはあるワケねぇ。
そういう防御の高いヤツに使うのが“霊撃”だ。
要は必殺技、切り札、奥の手ってヤツだ。
「―――旋掌・雷破ッ!」
螺旋状に雷撃を纏った一撃が魔獣を貫く!
粉々になって光の粒に変わっていく様子をみると、ちょいとオーバーキルな気もする。
とはいえ、雷属性なんてこんなもんだ。
破壊力がありすぎて手加減が難しい。
他の連中は……。
「ハードポイント! ブラストッ!」
「連牙・穿ぃ~♪」
音羽は炸裂する弾丸、双葉は踊るような足さばきで次々と魔獣を倒している。
「風の矢、水の矢、炎の矢。っと」
豹真は次々と術式符に込められた術を歌い上げて攻撃している。
相手が弱い魔獣だからか、淡々と術式を歌っている。
一応、パーティーの魔力に応じた強さの魔獣が出るが、豹真以外は儀礼道具で抑えてるからか弱い連中ばかりだ。
「で、今日はどうすんだ? マジでやんのか?」
試合と違って迷宮なら本気を出しても誰かにバレる心配はない。
別に外の迷宮でやってもいいんだが、ついでにな。
「自分は構わないでありますよ!」
「私も、おっけー。豹真ちゃんは―――豹真ちゃん?」
「…どうした?」
豹真が真剣な表情で何か考えてる。
「もうすぐ、さ。水神家の奉納祭、あるじゃん?」
水神家。
水の大精霊の加護に護られた、武蔵地方のエーテルファイターでは最大勢力の家だ。
その大精霊さまへ感謝を奉げる祭りを毎年この時期にやってるんだが……。
「何かぁ、気になるの~?」
「最近、月の眷族が何かと騒がしいだろ? タイミング的にそろそろ来るかな、と」
「ふむ、言わんとすることはわかります。色んな施設に襲撃を仕掛けているようですが……」
「陽動作戦、か」
派手な襲撃にも関わらず死者どころか重傷者すら出てない。
知り合いのはぐれ同士で情報を共有した結果、徐々にファイターの警戒網を広げさせてるんじゃないか? という可能性に至った。
水神家が大精霊の宿る神器を祭っている神社。
そこを中心に広がってる、というのがはぐれの見解だ。
霊験庁や水神家でどう判断してるかは知らんがな。
「奉納祭、行ってみようかと思って。別に水神家はどうでもいいんだけどさ」
水神家はどうでもいいが、参拝客は守らなきゃ、ってところか。
「ま、そんなわけでさ。ちょっとでも慣らしておこうかな、と」
豹真の指先に霊気で作られた狐の面が現れる。
音羽も、双葉も、もちろんオレも。
それぞれ普段愛用している変装の道具を具現化させた。
そして、魔力封じの儀礼道具を外す。
開放された力に合わせて迷宮の空気も変化する。
こっから難易度ベリーハード……を、越えてエキスパート開始だ。
「リスポンありだから結局ベリーイージーでありますよ?」
「勝手に心読むんじゃねぇ」
「鉄也ちゃんがニヒルに笑ってる時って、ねぇ?」
「ほら、イケメンだから様になってるから……」
「……それはアレか? オレが痛いヤツだって言いたいのか?」
「「………。」」
この野郎。
~ちょっと補足~
・御剣双葉
・ふわっとした喋り方が特徴の竜人族の美少女……ではなく美少年
・命属性の他、棒術による打と突が得意。簡単な術式も使える。
・女装好きはタダの趣味。
・豹真、音羽とは長い付き合い。
・霊撃と術式
・イメージとしては霊撃は特技やスキル、術式は魔法。
・霊撃は霊気の強さ、攻撃力の影響が大きい。
・術式は霊気の属性、相性の影響が大きい。
・学園のダンジョン
・要はレベル継続制の不思議のダンジョン。
・挑戦者の能力に合わせて魔獣が変化する親切設計。