豹真、ディスられる
功刀君の喋り方がクッソ難しいです。
安易なキャラ付けは、してはいけない(戒め)
【霊闘士・功刀 音羽】
豹真殿と雪之丞殿に誘われて式典の参加を承諾し、今日こうして雪之丞殿の自宅兼巴流の道場まで来たでありますが……
「これ、全部今日のゲストでありますかね?」
「たぶん、なぁ。まぁ結びの儀式だし、大精霊だし、わからなくはないけどさぁ……」
さすがの豹真殿も言葉がでないようですな。
雪之丞殿の家には何度かお邪魔したことがありますが、この、いかにも高級な黒塗りの車が並んでいる様は初めてであります。
「蒼天寺君、功刀君、此方へ」
「あれ? 師範代? どうしてこんなところに?」
「もちろん君たちを出迎えるためですよ。若からお二人を始めに御学友を招待したと聞いていたのでね」
「ですが、わざわざ師範代殿がそのようなことを?」
「仕方ないでしょう。迂闊に他の門下生には任せることができませんからね」
「「……あぁ」」
なるほど、確かに師範代殿の言うとおりでありますな。
「ねー豹兄ちゃん、どゆことさ?」
「あー、うん、まぁ、入ればわかるよ。うん」
豹真殿も実に答えにくそうであります。
「とにかく、君たちのバイクは本宅の方へ停めてください。そこなら悪戯をされることもないでしょう」
「さて、と。静梨殿、降りても大丈夫でありますよ」
「はい。功刀先輩、ありがとうございました」
初めから三姉妹の皆さんを迎えに行くと知っていれば、自分もサイドカーを用意したのでありますが。
何分、豹真殿に合流してから聞かされましたからなぁ。
さすがに豹真殿もサイドカーを複数所持はしておりません。
「よーし、紅緒、日向、お前らも降りな」
「はーい!あんがとね、豹兄ちゃん!」
「……ん。ありがと」
後部席から紅緒殿が、サイドカーから日向殿が。
……自分がバイクを出さなかったら、どうやって3人を輸送するつもりだったでありましょうか?
「みんな、今日は愚息のために御足労いただいてすまないね。式典まで、まだ時間もある。うちでしばらく寛いでいてくれたまえ」
巴家の現当主にして巴流槍兵術皆伝、巴風雪殿。
肩書きに恥じぬ存在感を有する実力派ファイターであります……が、今は我々を歓迎するためか、友人の父親という空気をまとっておられます。
これがいわゆるTPOに則った装いというヤツでありますな!
ちなみに集まったのは、自分を含めた特撮愛好会のメンバーが13人ほど。
いつもの鉄也殿、双葉殿、そして葵殿は不参加であります。
前者の二人は自分や豹真殿ほど雪之丞殿に思い入れがありませんですし、葵殿は水神家だけでなく巴家も嫌っておりますからな。
嫌っているといっても、風雪殿や雪之丞殿に対しては好意的でありますが。
なぜそこまで嫌っているのかというと……
「これはこれは。わざわざ兄貴の晴れ舞台に顔を出してくれるとは。霊力の扱いは三流でもご機嫌取りは一流だなぁ?」
「兄さま、そのような言い方は失礼ですよ。無能が無能なりに世渡りに真剣になっているのです、その努力を否定してはいけませんよ」
出ました。
現れたるエルフの双子、彼らは雪之丞殿の弟妹であります。
「大雪、吹雪、それはお客さんにとるべき態度ではないよ?」
やんわりと嗜める風雪殿。
「あぁ? 客だぁ? 親父、本気で言ってんのか? 兄貴の権力のおこぼれにあずかってイキがってるようなヤツだぞ?」
本気で嫌そうに顔をしかめる大雪殿。
何も口にしなくとも、妹君の吹雪殿も同じことを考えているのでしょう、そういう表情をしておられます。
「……お前たちがどう思おうと、蒼天寺君も功刀君も、もちろん他のみんなも、雪之丞が招待したお客さんに変わりないよ」
「……そうかよ。ったく、兄貴も甘いんだよな~。付き合い長いからって甘い顔してっと、そのうちゼッテー面倒なことやらかすに決まってんのによ~」
「無能なら無能なりに、せめて雪之丞兄さまの邪魔だけはしないで欲しいのですがね。あぁ、そういう気遣いも先輩がたには難しいかもしれませんが」
最後までキッチリと嫌味を口にしてから退場するお二人。
「……ちょー! ナニッ!? なにさあのフゴ」
「はいストップ。落ち着け落ち着け」
あー、やはりこうなりましたか。
怒り心頭の紅緒殿を豹真殿がなだめております。
紅緒殿は豹真殿を大変慕っておりますからなぁ。
「はぁ~、そーゆー噂は聞いたことあるけど、巴がアレだし、そんなにとは思ってたけどよ~」
「イヤイヤ、露骨すぎない? ってかさ、あの目! ついでにアタシらのこともディスってたよね?」
同行していた特撮愛好会のメンバーも驚いているようですな。
雪之丞殿は礼節を重んじるので、彼の普段を知る者にしてみれば、あの双子の態度は想定不可でも致し方ないでしょう。
「みんな、本当に申し訳ない。私も子どもたちには礼儀の大切さを説いてきたつもりなんだが……雪之丞のために休日を潰してくれたというのに、本当になんと詫びたものか」
「まぁまぁ。今さら今さら、ですよ。別に実害があるわけじゃないですし、そんな頭下げなくていいですよ」
このやり取りも何度見たことかわかりませんなー。
「ね、ね、音ちゃん。天ちゃんの対応、なれすぎじゃない? いつもこんなんなの?」
「ええ。いつものことであります。いつもの二人や葵殿が来たがらない理由でもありますな」
ちなみに豹真殿もなにも思わないわけでもないらしく。
曰く、「そりゃイライラするけどさ、それで怒るのは違うだろ? だってわざと力隠してんだから、ナメられるのも我慢しないと」とのこと。
実際たまにいるのです。
我慢できずに力を使ってしまう者が。
その後の展開は、まぁ、当人の人間性次第では悲惨なことにもなり得るわけでありますが。
「トータル序列、大雪殿は22位、吹雪殿は31位でありますからな。ファイターとしての才能はありますゆえ、低ランクの者に対する評価が厳しいのも―――」
「仕方ない、と済ませてくれるうちに改めてくれると助かるのだけどね。蒼天寺君や功刀君みたいに誰もがなぁなぁで許してくれるわけではないのだから。さ、せめてのお詫びにお茶でも出そう。妻も楽しみにしていたから」
~ちょっと補足~
・巴大雪・吹雪
・雪之丞の弟と妹。双子。
・序列の評価を過信している。
・日々の訓練に真面目に取り組む努力家だが、性格に難あり。
・どうやって三人を~
・当作品の登場人物は特殊な訓練を積んでいます。
・自動二輪車の複数の搭乗は大変危険なのでマネしないでください。