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エーテルファイター!(未完)  作者: 鎮静の女神
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その名はエーテルファイター

限りなく地球に近い雰囲気の惑星。

これ以上なく日本っぽい島国・天輪国は武蔵の地にて。

霊闘士(エーテルファイター)蒼天寺(そうてんじ) (あおい)


 いつもの朝、いつもの我が家、いつもの道場。


 道着姿で対峙するのは私の兄、蒼天寺豹真(ひょうま)


 間に立つのは私の祖父、蒼天寺竜麻(たつま)





「始め」




 いつものようにお祖父ちゃんの合図で訓練が始まりました。


 お互いに体内にため込んだ魔力を霊力に変換し、戦闘濃度にまで高めて全身に巡らせ、攻防一体の霊気として纏います。


 そう。


 これこそが私たちがエーテルファイターと呼ばれる所以です。


 霊力によって高められた身体能力と、霊気によって生み出される数々の技を用いて戦う闘士。



「……うむ。相変わらず葵は見事な霊力だな」



 静かな道場にお祖父ちゃんの呟きが響きました。


 小学生のころからコツコツと訓練を続けていたおかげで、私の霊力は他のファイターに比べてもかなり高い部類に入ります。


 ハッキリ言って、プロとして活躍している大人のファイターたちにだって負けません。


 魔獣だってどんとこい、です!





「………。」




 対して兄さんから感じる霊力はかなり低いです。


 戦闘濃度としてはギリギリといったところでしょう。


 霊力の高さとは即ちファイターとしての戦闘能力の高さでもあります。


 何も知らない者がこの光景を見れば、この勝負、私の圧勝と予測するでしょう。


 ですが、それはあくまで表面上の話です。


 兄さんの魔力の器は平凡なものですが、それを補って余りある技の数々を持っています。


 さらに言うなら見切りの技、特に霊気や妖気を用いた攻撃に対する読みの鋭さは畏怖の念を抱くレベルですね!


 ファイターとして百戦錬磨のお祖父ちゃんですら真似るのは不可能だと断言してましたし。




 さて。


 正直、かなり厳しいです。


 霊力を抑えられると次の一手が読みにくいからです。


 とはいえ、兄さん相手に待ちの手は悪手。


 ここはやはり私から仕掛けるべきでしょう!




「はぁ……ッ!」




 拳に霊気の風を纏わせ構えます。


 舞武・蒼天寺流の基本姿勢、太刀風。


 立ち回りと手数で翻弄しつつ、その真意は必殺の一撃に叩き込むことにあり!


 攻守ともにバランスのとれた構えであり、私が一番得意な構えでもあります。




「疾ッ!」




 出し惜しみはしません。

 

 というか出来ません。


 そんな舐めたマネをしようものならカウンターであっという間に手合わせ終了です。


 様子見のつもりで放った蹴り足を掴まれて、道場の外まで放り投げられた経験を忘れてはいけません。


 それに、時間制限もあります。


 タイムリミットはお母さんの朝食の用意ができるまで。


 ただ、区切られた時間という要素は考えようでは悪くありません。


 霊力の配分を強気に設定できますからね!




 遠慮なく、ガンガン攻めます。


 攻めます、が……。



「よッ」



 一撃も当たりません。


 今の私の拳は厚さ数センチの鉄板でも貫けるだけの破壊力を持っています。


 でも当たらなければ威力があっても無意味。


 ですがこの程度、予想済みです。


 全ては次の一撃のための準備。


 

 

 

 兄さんが私の攻撃をバックステップで回避したのに合わせ、私も後ろへ跳びます。


 同時に一気に霊力を高める!




「風刃羅刹ッ!!」




 これが私の本命! 


 霊気を幾重もの風の刃と変化させて放つ必殺技です!


 思い描いた攻撃のイメージを霊気で具現化させる、これこそがエーテルファイターの真骨頂でしょう!


 ちなみに私の風刃羅刹は並のファイター程度なら数人まとめて吹き飛ばす威力があります。


 まともな相手であればこれで終了でしょう。


 が、兄さんなら簡単に相殺できるはず。


 しかしそれも狙いのうち!


 相殺と同時に一気に距離を詰めます!


 そう思い追撃の構えを取っていたのですが……。







「まさかアレをすり抜けてくるなんて……さすが、兄さんです……」



 相殺するまでもなく、兄さんは風の刃のすき間をぬって接近してきました。


 そのまま道場の壁に向かって投げられて手合わせは終了。


 霊気のガードがあったとはいえ、兄さんの力も霊力で強化されていたので背中がジンジンします。



「葵、おはよう。……どうしたの?」


「おはようございます。ちょっと朝の訓練で」



 どうやら表情に出ていたようです。


 クラスメイトに心配されていました。


 登校中はそこまででもなかったのですが、教室にたどり着いたあたりで地味に響いてきました。




 国立天輪学園・武蔵校。


 それが私と兄の通う学校であり、兄さんは中等部の三年生、私は二年生です。


 他の学校との大きな違いは、未来のエーテルファイター候補生を育てる闘士学科があることでしょう。



「あぁ、またお祖父さんとの特訓?」


「大変だねぇ、優秀な孫娘ってのもさ」


「お兄さんのほうはのんびりしてるのにねー」


「……そう、ですね」



 友人たちとは良好な関係を築けていますが、兄さんのことを言われると複雑な気分になります。




 兄さんは性格の部分では面倒見のよいおおらかな先輩としてそこそこ慕われています。


 ですが能力面では平均より下というのが大半の生徒の評価です。


 なぜならば兄さんは学校ではほとんど能力を使っていないから。


 優秀なほうで有名になっても面倒なだけだと、適度に……いや、かなり手抜きをしています。


 正直、私もそうすればよかったかなと後悔中。


 高い評価を受けた時は嬉しくて、大喜びで家族に報告したのですが、その時は兄さんとお祖父ちゃんの優しい微笑の意味がわかりませんでした……。


 友達はともかく、先輩後輩、あと教師陣からの干渉が非常に鬱陶しいです。


 おまけに表で有名になったせいで、迂闊に“狩り”にも出られません。


 ……兄さんは今夜も出かけるのでしょうか?


 うらやましいです……。






【記者・天野(あまの) (ひとみ)


 夜が危険な事くらい、知っている。


 これでもジャーナリスト、そこらの野次馬程度の危機管理では商売にならない。


 でも、それはただの思い上がりだったらしい。



「はぁ、はぁ、はぁ……ッ!」


「おやおや、なにやら苦しそうだが大丈夫かね? くっくっく……!」



 裏路地に入る前、何やら事件の匂い、ネタの気配とワクワクしていた自分をぶん殴ってやりたい気分。


 せめてもの救いは、私がまだ正気を保っていることだろうか。


 ニヤニヤしながら追ってくる竜人族の男に対して恐怖よりも苛立ちが先にくる。


 ただ、それもいつまでもつだろうか?




 今、私は暗い森の中を走っている。


 別に表通りから一歩逸れたら山の中、みたいな田舎に住んでるわけじゃない。


 むしろ武蔵地方は天輪国の中では相当にぎやかな……って、今はそれどころじゃないんだって。




 この森の正体は“結界”だ。


 後ろから追いかけてくるヤローはただの変質者なんかじゃない。


 人類の敵、月の眷族と呼ばれる連中の手先“ダークソルジャー”だ!




 連中が獲物を逃がさないように切り取った空間、それが結界。


 私のような一般人がここから出られる可能性は限りなく低い。


 護身用の儀礼道具があるならともかく、ファイターでない私では結界を破れない。


 その事実が少しづつ精神を削っていく。


 だからって、早々に諦めてたまるかっての!




「んん~? 良いですなぁ! 今回のは活きがよくて滾りますなぁッ! はっはっはァッ!」




 アイツ、この状況を楽しんでやがる。


 こっちに打つ手がないって気が付いてる!


 ……一瞬、被害者たちの姿が頭の中に浮かぶ。


 ダークソルジャーが人間を襲うのは魔力を奪うため、と言われてる。


 奪った魔力を蓄えて、自身の力を高めるのだ。


 魔力を奪われるだけなら簡単に日常に戻ることができる。


 しばらくは自力で満足に動けないほど消耗しても、魔力欠乏で致命的な後遺症が残った事例は極めて稀だ。




 だが魔力を完全に奪われればそのまま死ぬことになる。


 万物を構成する魔力を失うということは、つまり消滅を意味するからだ。


 他にも“それ以外”を目的する犯行もある。


 それが金銭目的ならずいぶんと優しいほうだろう。


 そして後ろのアイツは明らかにそれ以外を楽しみにしているパターンだ……ッ!


 


(……こんな、こんなところで私は……?)




 足が重くなり、心が折れそうになったその時。







「……おや?」


「あ……ッ!?」







 延々と続いていた暗い森の先に、光―――ッ!!


 光がどんどん森を飲み込んでいくッ!!


 


 現金なもので、もう限界だと思っていた足に再び力が戻ってきた。


 光の正体には心当たりがある。


 結界を使えるのはダークソルジャーの専売特許じゃない。


 月の眷族と戦うエーテルファイターたちも結界が使える。


 


 ある者が言うには、それは果てしない海原の上であったと。




 ある者が言うには、それは霧の深い連山の社の中であったと。




 そしてある者が言うには、それは蒼穹の空が広がる草原の中であったと!



 

 森を抜け、草むらに倒れる。




 明るい…!


 温かい……ッ!!


 ちょっと泣きそう。




「……なんだね、キミは?」




 振り向くとそこには道着姿の何者かが立っていた。


 いかにも武術を使います、といった紺色の袴と狐のお面。


 肌と頭部に特徴がない感じ、たぶん只人族の男性だろうか?



「なんだね、ねぇ……のんきなもんだねオッサンも。この状況で俺が何なのか、そんなもん子どもだって想像くらいつくでしょうよ? テメェーの頭は飾りですかスカポンタン」



 声からしてかなり若そう。


 あとちょっと口が悪いかな?



「ほぅ……なるほど、キミはエーテルファイターか。しかし随分と若いようだが、目上に対する口の聞き方がなっておらんのは問題だなぁ?」


「バカかアンタ。戦いに目上もクソもないだろう」


「くっくっく。どうやらキミには少しキツめの躾が必要のようだねぇ?」



 竜人族の手元に赤黒い、鈍い光が集まりだす。


 エーテルファイターが霊気で戦うように、ダークソルジャーは妖気を使って戦う。


 物理的な破壊力だけではなく、精神の汚染も引き起こす恐るべき力ッ!! ……私のようなか弱い乙女には、だけど。







「この私に対する非礼を地獄で詫びぐぼへぇあッ!?」







 男が余裕の態度で妖気を集めているところに、少年の拳が突き刺さる!


 うーん、容赦なし。


 まぁ試合じゃないし、実戦だから油断するほうが悪いんだろうけど。



「ぶっ、ふっ! き、キサマッ! こんな、こんなマネをして、只では済まさんぞッ!!」


「只では済まさん、って言われてもなぁ。もう終わってるんだけど」


「……はッ? な、なんだッ!? なぜ私の体が崩れるゥッ!?」


「呆れた。一応こんなん程度とはいえ結界が使えるのに、その程度のこともわかんねーのか」



 少年が呆れるのも無理はない。


 なぜ男の体が崩れ始めたのか、その理由はファイターじゃない私だって知っている。


 霊力と妖力は反発しあうのだ。


 そしてどちらか一方があまりにも強力だった場合、その反動で物体が崩壊する……ッ!



「普通は最初に妖気のガード壊さなきゃ本体にダメージ通らないんだけど……ま、弱いものイジメにしか興味ないようなヤツじゃあな。一応基本中の基本なんだけどねぇ~」


「た、助けてくれッ! 少し調子にのってみたかっただけなんだ! 反省、反省する! ほんの出来心ッ! だから―――」


「いや、オッサン越えちゃいけないライン越えまくってるでしょ? 魔力が完全に変質してるからな。マジでほんの出来心程度なら治療できたんだけど。ま、殺したからには殺される覚悟も、ってね。いやはや、お互いに大変だねぇ」


「あ、あ、あぁぁ………ッ!?」



 男の身体が崩れ、砂山だけが残った。



 

 これはジャーナリストとして、ぜひともファイターに取材しなければ!


 と、思ったんだけどその後のことはよく覚えていない。


 なぜかって?


 安心しちゃて気絶しちゃったから。


 気が付いたら病院のベットの上だったわ。



「と、いうワケで編集長。これからはぐれファイターに関する記事をメインにしてみようかと思いまして」


「唐突だね君。と、いうか昨日あんな目にあったばかりでよくまぁ……タフだね?」


「私は足で稼ぐタイプのジャーナリストですから! 体力には自信あります!」


「タフで気まぐれなあたりは実に猫人族の女性だね。しかし、はぐれファイターかい……」



 はぐれファイター。


 国が発行するライセンスを持たない、自由と独立を保った闘士たち。


 彼らはそれぞれの流儀と方法で人々を護っている。



「私個人としては彼らの存在には肯定的だが……君も知っての通り、政府を始めとする公的機関は嫌う傾向にあるからさ。取材も難航するかもしれんよ?」


「もちろん承知の上ですよ。もっとも、そういう場所に取材に行くことはそうそう無いかと」


「それもそうだが。ただ、彼らの性質…性格かな? を、考えると素直に取材には応じてくれないだろう。中には積極的にSNSに映る者もいるけど、君が追いたいのはそういうファイターではないんだろう?」


「ですね。昨日助けてくれたファイターも野次馬に愛想を振りまくタイプではないです」



 ただ昨日の狐面のファイターはマニアの間では結構有名だったらしく、映像データは割と簡単に探せた。


 他のはぐれファイターに比べて戦い方が地味だけど、静かな動きでダークソルジャーを圧倒する様は見ていてゾクリとするものがあった。



「ふむ。このところダークソルジャーの活動も活発になってきているし、はぐれファイターの活躍を書けば読者の不安解消にも多少は繋がるか…うむ。いいだろう、ひとまず自由にやってみたまえ。ただし! 報告・連絡・相談はちゃんとすること! それと……無茶は、しないようにな?」


「命大事に、ですね! ありがとうございますッ!」



 さて、無事に編集長に許可をもらったのはいいんだけど。



「……さすがに、都合よくはぐれファイターの知り合いなんていないのよね」



 あるいは、いるけども正体を隠しているか、だ。


 大抵のはぐれファイターは自分がはぐれであることを明かさない。


 せいぜい家族か、よほど仲のいい知り合いや一緒に戦う仲間くらいにしか教えない。


 ま、じっとしててもしょうがないし、まずは行動してみましょうか!



「となると……正規のファイターは手続きは面倒だから……天輪学園あたりから始めてみる?」



 これはただの直感。


 とりあえず簡単に会えるエーテルファイター候補生にでも会ってみよう、それだけのつもりだったんだけど。


 まさか天輪国の未来を左右するような戦いに巻き込まれるとは……ね。

~ちょっと補足~


・蒼天寺葵

 ・天輪学園中等部の二年生。その高い能力から注目されている。

 ・豹真のことを多分一番尊敬してる。健全なブラコン。

 ・得意属性は風、雷、治癒、武器全般、次いで自然系属性あたり。

 ・はぐれファイターに憧れているものの、学園で有名なので自重してる。

 ・口調は丁寧だが性格はかなりパッション。


・天野瞳

 ・猫人族のジャーナリスト。年齢は20前半くらい。

 ・好奇心旺盛で時々やらかすが常識はあるほう。

 ・戦闘能力はほぼない。逃げ足はそこそこ。

 ・はぐれファイター肯定派。

 ・一般人では魔力が高めなので多少の結界には耐えられる。


・魔力と霊力と霊気

 ・イメージとしては魔力が燃料の材料。原油。

 ・霊力は精製された燃料。ガソリンなど。

 ・霊気は燃料を燃やして発生した炎。

 ・霊力だけでも身体能力上昇が可能。


・戦闘濃度

 ・霊力の密度を上げること。

 ・霊気が物理的な干渉が可能になる。


・儀礼道具

 ・いわゆるマジックアイテム。

 ・基本誰でも使える。

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