表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/130

5話 お金を手に入れましたわ

 ◆

 

 ここの領主――ギラン・ミール――私の祖父は好色で有名です。

 若くて美しい娘を見かけると、誰彼構わず手を付ける。

 その後、飽きると惨殺し、娘の両親には病死したと告げるのです。

 そうして攫われた村娘から生まれたのが母でした。

 その娘である私にも手を出そうとしていたとは、なんというド変態なのでしょうか。

 まあ、エロゲの世界なので仕方がありませんが。


「それであなたは、わたくしを非道で無道で好色かつ残虐な領主ハゲに引き渡そうというのですか? それが誇り高き自警団ニートの仕事だとでも言いますの?」


 簡素な皮の鎧を身に着けたパットが、剣の柄に手を掛けながらも一歩後ずさりました。

 これが尊大の効果なのか、それとも単に彼が後ろめたさを覚えたからなのかは判然としません。


「さっきから聞いていれば、ニートって何なんだ?」

「働かないで日々フラフラとしている若者のことですわ」


 パットが目を見開き、頭を振りました。


「ティファニー……俺は働いているっ!」

「そんなことは瑣末ごとです。わたくしが領主の下へいけば、どのような運命を辿るが理解してらっしゃるのでしょう?」

「そ、それは……女として扱われるのだろう、名誉なことだ。あと、俺の就労問題は瑣末ごとじゃない!」

「女として? ではお聞きしますが、領主ギラン・ミールにとって女とは、どのようなものなのでしょうか?」

「そ、それは……俺は働いている……」

「お答えなさい、パット! そして就労問題から離れなさいっ!」

「う……領主様にとって女は、遊び道具か家畜程度のものだろう……」

「ではどこに、わたくしの名誉があるのかしら? あなたの仰ることは理解できませんわ!」

「わかっている、わかっているからこそ俺は……!」


 奥歯を噛み締め、眉間に皺を寄せるパットは苦悩しているようです。


「まあいいですわ。どちらにしても、あなた方には罪を償ってもらわなければなりませんもの」


 私は呪文を唱え、左手の中に炎を生み出しました。

 きっと私は今、邪悪な笑みを浮かべていることでしょう。

 頬の筋肉が引き攣り、ヒクヒクと動いていますから。


「ねえ、パット。あなた、わたくしの家を焼いたでしょう? この家には、わたくしの大切な思い出が詰まっていましたの。ですから、ねえ――貴方の思い出も焼いて差し上げましてよ?」


 手の中で、炎がどんどん大きくなります。

 アイロスに与えられた力が私の全身を駆け巡り、今まさに爆発しようとしていました。


「これは……魔法?」


 パットが後ずさって、驚愕の表情を浮かべています。


「あははははっ! 焼けなさい! 死になさい!」


 パットの顔が恐怖に歪みます。

 私は炎を掌に乗せたまま、ゆっくりと前に進みました。

 ブランとボードはショックで地面に手をついたままです。

 それでも必至で「やめてくれ、ティファ!」「待ってくれ! 違うんだ!」などと騒いでいました。


 私は人々に恐怖や絶望を齎さなければなりません。

 その意味において、このように嗜虐的に振る舞うことは効果的です。

 とはいえ、彼等の罪が死に値するかといえば、多分きっと違うでしょう。

 元凶はギラン・ミールであって、彼等は従ったに過ぎないのですから。

 なので私は炎を収めると、三人を順番に見回しました。


「と、思いましたけれど……人が生きたまま焼けるのを見るのは気持ち悪いですわね」


 私の言葉を聞き、ブランがホッと息を吐きました。

 

「でも、安心して良いとは言ってませんわ」


 私はブランの顔を蹴り上げました。

 家を燃やした実行犯を、そのまま許す程お人好しでもありませんので。


「ぎゃっ!」


 ついでにボードの手をぐりぐりと踏みましょう。

 癖の悪い手です。骨を砕いて、二度と火を起こせないようにしなければなりません。


「い、いてぇ!」

「いいですわねぇ、いいですわねぇ! 豚共の悲鳴というのはっ! そうですわ! 生きたまま燃やすのは気持ち悪いですけれど、全員殺してから燃やせば気持ち悪くありませんもの! 我ながら名案ですわっ!」


 舌なめずりをして三人を見回すと、皆、恐怖に引き攣った良い目をしています。

 ていうか毒舌と悪徳が止まりません。パッシブスキルって恐いですね。

 それとも、嘘つきスキルの発動でしょうか? 

 少なくとも私は彼等を殺す気なんて、ないのですけれど。


「や、やめてくれ! 見逃してくれ!」


 ようやくパットが折れて、私に土下座をしました。

 剣も投げ捨て、ただただ平謝りの状態です。


「ティファが魔法を使えるなんて知らなかった。いや、それ以前の問題だ。俺達は自警団を名乗っておきながら、お前を守るどころか苦しめていた……本当にすまない!」

 

「そうですわね……ただ謝って済むのなら、人の世に殺人事件はなくなりますわ。ですが、今回だけは見逃してあげてもよろしくてよ」

「ほ、本当か?」

「ええ、ですから取引をしましょう――あなた方、持っているお金を全部出しなさい、それで命だけは助けてあげますわ」


 私は目を細めながら、笑みを浮かべて言いました。

 流石にかつあげはどうかと思いましたが、昨日から粉もひけず、収入がありません。

 私の暮らしは本当にその日暮らしでしたので、日本円で言えば今、三十円くらいしか持っていないのです。


 パットは後ずさりながら、懐から麻布の袋を取り出しました。財布でしょう。

 それを投げて地面に放ると、ジャラリと音がしました。

 拾い上げて中身を確認すると、銀貨が二枚と銅貨が数枚入っています。

 日本円で二千三百円くらいでしょうか。大人の財布としては、残念極まりないかと思われます。

 ブランとボードも同じく懐から麻布の袋を取り出し、私に差し出しました。その中身もお察しです。


「あははは……無様ね、無様! これがあなた達の命の値段という訳ね! あははははは!」


 三人は互いの顔を見合わせ、そそくさとその場を去りました。

 恐怖に引き攣りつつも、妙に決意を秘めた眼差しをしていたのが気になります。

 まあいいでしょう。

 彼等が私を憎み復讐をするというのなら、受けて立ちます。

 そもそも復讐というのは連鎖します。それを断ち切ろうなどという正義の考えは、持ち合わせておりませんので。

  

 さて、余計な時間をとられたせいで、眠くなってしまいました。

 どこかゆっくり眠れる所へ行きたいものです。

 どうせ暗殺者になろとしていたところですし、夜まで待った方が良いですからね。

 だとすれば、ええと、こんな私が安心して眠れる場所は……あそこしかありません。


 私はユラユラと揺れる身体を何とか動かし、村で一番仲の良いミコットの下へ向かうことにしました。

 正確に言えば一番の仲良しは、彼女の娘――ミズホ・バーグマンの方なのですが。

 どちらにしても彼女の家は宿屋なので、身を隠して身体を休めるには好都合なのです。

 

 もっともゲーム中のミズホは、私の敵となります。

 それは私が村を滅ぼしてミコットを殺し、ついでに彼女の夫のグレイも殺した結果ですが……。

 当然、村に関しては配慮していますし、今の私は滅ぼすつもりもありません。

 ですがミズホは非常に一途な性格ですので、何かあったら手遅れです。

 なので、なるべく関わらない方がいいでしょう。


 たしかミズホは昼間、森に行って薪を取ったり動物を狩ったりしているはず。

 だから夕方までに宿を出れば、彼女に会うこともないでしょう。


 昼寝て夕方起きる。


 ええ、我ながら完璧な作戦ですね。

 さあ、ミコットの宿へ向かいましょう。

 ティファニーのレベルが上がった!

 ――――――――

 ティファニー・バルバトス 

 年齢 12 職業 村人 Lv3→4

 スキル 

 悪徳F→D 強権C 毒舌S 嘘つきS 尊大C 大魔導B 肉体強化C 鑑定B 

 ステータス 

 統率90 武力54↑ 魔力112↑ 知謀88→89 内政63 魅力90↓

 ――――――――

 悪徳のスキルが上がってしまいましたわ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ