第1話:異世界でも苦手は苦手
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ハッと目が覚めた。
「ここは……?」
「明らかに日本ではない街並み……でも書いてある文字は全て日本語。これはつまり……」
「本当に異世界転生したのか……!」
これから始まる前世(?)よりずっといいであろう異世界ライフに胸を躍らせる。
だが。
「どこへ行ったらいいものだか……」
土地勘もない、地図もない、スマホだってない今の俺は可愛い女の子と会う手段どころかまともに人と会うことさえ困難を極めていた。
そんな時だった。
「あのー、何か困ってます?」
悠人が振り向くと青い髪の可愛い女の子がいた。
「あ、ああ人のいそうなところを探していて……」
「うーん、鑑定場になら人は居そうですけど……」
「鑑定場?」
「はい、自分の能力を診断することができる場所です。人がいそうな建物の中ではそこが一番近いと思います」
「へー……ん?」
そんな会話の中で一つ疑問が生じた。
「そういえばどうやってここに現れたんだ?」
さっきまで誰もいなかった廃墟のような街に突然現れた。当然の疑問だった。
「ああ、飛んできたんですよ」
「飛んできた?」
「はい…… ってもしかしてルーフを知らなかったりするんですか!?」
「ルーフ? 一体なんだそりゃ」
青髪の女の子は驚いた表情で俺をを見てくる。
そんな中、近くでドンっという音がした。
「と、とりあえず鑑定場まで行きましょう。ここは危険です!」
「お、おう」
「さあ、掴まって」
「わっ」
グッと体を引き寄せられ、青髪の女の子に触れる。元の世界では女の子になんてほとんど触れたことのなかった俺は顔を真っ赤にしながら青髪の女の子の腰に手を回す。
「しっかり掴まってくださいね、危ないですから」
色んな意味でこっちが危ないよと思いながらも俺がより一層体を密着させたその瞬間だった。
ヒュンっと音がして
女の子から手が離れて、どんどん落下していく。
かすかに女の子がわーっと叫ぶ声がする。
薄れる意識の中で
「だからジェットコースターは苦手だって」
とボソッと呟いてまた、意識を失った。