異世界へ行けると夢見た男
雑魚の人生は終了しましたーーー
俺の名は遠山悠人。特に地獄でも天国でもないフツーの生活を送っていたのだが……交通事故で死んでしまった。
死、とは案外あっさりと単純なものだったんだな。とは思えども死んだらどうなるんだろうという哲学がついに自分の死で解明されるのか……! と思ったりもしながらどんどんと俺の体は上へ上へと浮き上がっていくのだった。
そして……突如声が耳に飛んでくる。
「よっ! 元気ィ?」
振り向くざまに見えたのは神々しいオーラをまとった神……ではなく俺と似たような格好をした人間っぽいやつだった。
「誰だよお前」
「失礼しちゃうなぁ、天使様だよ天使!」
ヤバい。死後いきなりめんどくさそうな奴に絡まれた。
「まーたうさんくさい……」
「はぁ!? せっかく君を第2の人生に送ってあげようとしてるのにその態度は頂けないね!」
「第2の人生?」
「そうだよ! 君は今から……異世界転生!」
「するんだよ!」
異世界転生ーーー
それは俺の憧れだった。平凡な人生を抜け出して光り輝く人生を送る。異世界ならきっととんでも魔法やチート能力がバンバン使えて。男たちからも信頼されて。女の子たちにモテて! まさに俺が望んでいたユートピアだ。
「でもお前がどうやって……」
天使は言う。
「あーもううるさい! こっちはブラックで神員削減されてんのに捌く量は年々増えてんだよ! とっとと異世界行って来い!」
ドンッと天使に押された瞬間。俺は暗闇に突き落とされるのだった。
「うわあああああああああ」
「待て待て待て!修学旅行のジェットコースターも苦手組だったからゆっくり進む方しか乗ったことないって!ヤバあああああああああ」
その瞬間。死んだ時のようにフッと意識がなくなってしまった。