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勇者だけど聖剣が持てない。 作者:鹿
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1 勇者だろうが重いものは重い。

「これより、第十八回聖剣授与式を始める」
 アルドリア王国アルド城。その壮麗かつ荘厳な王宮が、今日はさらに威厳を増している。大臣の言葉で始まった聖剣授与式は、国王が話し終え、場にいる人々の緊張が高まっていく。
「では、これから聖剣授与を行う。第十八代『勇者』は―」
 その場の全員が息を呑み、五賢者の代表を見つめる。
「―刃金優介!」
 優介はさっと立ち上がり、拍手と共に聖剣の刺さった岩へと進む。そして、ついに聖剣の前へ。
 ふぅと息を吐き、優介はふっと笑う。
 ついにこの時が来た……!
 もう一度息を吐き、優介は聖剣を握る。聖剣は光り輝き、そして―
「うわ重ッ!なにこの聖剣抜けないんだけど⁈」
 一瞬誰もが顔を見合わせ、王宮内がざわざわと騒がしくなる。
 勇者が聖剣を扱えないという事は、魔王を倒せないということを意味する。まさに人類レベルの一大事なのだ。
「え、その剣はワシでも抜けるのじゃぞ?」と国王が駆け寄り、ひょいと聖剣を持ち上げる。
「いやおかしいでしょ⁈ それ人が持てる物じゃないって!」
 国王が半信半疑で優介を見つめる。
「お主の力が無いのではないか?」
「そんなわけあるか!どんだけ力無えんだよ!ほら、見てろよ―」
 優介は聖剣の刺さった岩を引き剥がして持ち上げた。
「嘘じゃろ……台座は王宮と接続しているはずなのに……」
 ありえない光景に国王すら絶句する。
「ほら、やっぱり―」
「『やっぱり』じゃない!」
 聖剣から少女が飛び出す。
「は、誰?」
「ボクの台座を壊しておいてその言い草!何なのキミは⁈」
「『ボクの台座』?お前、聖剣の化身か。もっと巨乳なお姉さんが良かったなぁ……」
「しょうがないでしょ!ずっとこの姿なんだから!はぁ……」
 聖剣の化身はため息をつく。
「……ところで、キミが何故これ(聖剣)を持てないか分かるかい?」
「理由?そんなの知らねぇ―あ!まさか、勇者になる為に五賢者を買収したことバレてたのか⁈」
 王宮内が再び騒がしくなる。国王も五賢者を睨んでいる。
「嘘だろ……ロリの癖に……」
「『ロリの癖に』は要らないよ!というか、キミならボクがいなくても魔王くらい簡単に倒せるんじゃないの?」
「それがさ、俺も簡単に倒せると思って魔王城行ったんだけどダメージが全く入らなかったんだよ。やっぱ聖剣が必要なんだなって」
「でも、『八魔将』の結界によって魔王城は入ることすら出来ないじゃないか」
 不満げに話す優介に一人の騎士が問いかける。だが、
「魔王如きの結界なんて簡単にこじ開けられるからな」と、ドヤ顔で話す優介に宮廷魔道士が肩を落とす。
「でも、聖剣は持てないしロリコンでもないし、どうしよっかな……」
 優介はひとしきり唸る。
「またロリって言ったよ!さっきからボクのこと馬鹿にしすぎ―」
「そうだ!聖剣を叩き割れば重さ半減で持てるようになる!」
「ならないから!しかもボク死んじゃうよ!」
「今すぐ叩き割ってやろうか?」
「暴力反対!うーん……そうだね、キミにボクを使わせてあげても良いよ」
「お、マジか」
「ただし!ボクがこれから言う試練をこなしたら、ね。それまでは使わせない」
「良いねぇ試練。何でもこいよ」
「キミは強すぎるからね……」
 聖剣の化身は呆れ顔で優介を見つめる。優介は顔を輝かせて聖剣の化身を見ている。
 本当に試練が楽しみで仕方ないみたいだね。ボクも出し甲斐があるよ。
「じゃあまずは、『八魔将』を全員倒してもらうよ」
「『八魔将』か、楽勝だな。余裕一匹二十分で考えると……」
 一匹二十分⁈というか‘匹’で数えるんだね……。さすがのボクでも驚いちゃうよ。
「移動時間合わせて三時間はかからないな。じゃあ行ってくるわ」
 スケールの大きすぎる話に王宮全体が唖然としている中、優介が外に出ようとすると国王が呼び止める。
「ちょっと待ちなさい」
「え、何すか?」
 優介は面倒臭そうに立ち止まって国王の方を振り返る。、
「おい、国王陛下に敬意を払え!」
 大臣が声を上げる。
「別に良いじゃろ。間宮殿、貴方は化身様から正式に勇者と認められたが、式はまだ続いておる。この王宮の中から冒険の仲間を選ぶという使命が残っておるのじゃ」
「あー、仲間か」
「歴代の勇者もそれぞれこの王宮で腕に自信のある魔道士や剣士を魔王討伐の仲間として選んでいったのじゃ」
「へぇ、代々受け継がれる伝統なのか。ならちゃんと選ぶか」
 優介は周りの王宮内の剣士や魔道士を眺める。
「宮廷所属はフリー冒険者よりレベルは低いけど技は熟練されてんだよな……お!」
 優介は奥の方から遠目に自分を見ている少女―リリアを指差す。
「え、私⁈」
「何故ですか⁈」
 優介が頷く前に近くの宮廷魔道士が叫ぶ。
「こいつはつい三ヶ月前に宮廷魔道士になった新入りですよ⁈ しかも女!勇者の役に立つとは思えないです!」
 魔法は基本体力を消費する。一部例外はあるが必然的に男が有利なのだ。
「可愛いから良いんだけどなぁ……それならお前、こいつと勝負して見ろよ。勝った方を仲間にする」
 と言って優介がパチンと指を鳴らすと、黒い円が現れる。
「本当ですか!」
「おう。見た感じお前も宮廷魔道士なんだろ?まあまあ強そうだし」
 自信満々に魔道士が立つ。
 あの人は宮廷魔道士の中でも五本の指に入る程の実力者。私が勝てるわけない……。
 リリアは絶望する。
「二人共円の中に入ったか。じゃあ周りを囲うから思う存分やっちゃって良いよ。ほい!」
 優介の合図と共に魔道士が魔法を放ち、リリアは目を閉じる。ところが……
「魔法が……入らない⁈」
 魔道士の攻撃がリリアの目の前で見えない壁のようなものに阻まれ消えていく。
 何で……?
「あれぇ?何か不思議なことが起こって魔法が消えていくぞー」
 優介のあからさまな挑発に魔道士が憤る。
「これはイカサマだ!俺を嵌めたな⁉︎」
「あれ?敬語外れてるよ、大丈夫?」
「黙れ!」
「ていうかイカサマの何が悪いんだ?俺が審判なんだから何も関係無ぇんだよ!」
 優介がハハハと楽しそうに笑う。
「元々可愛い子だったら誰でも良いんだよなぁ。むさい男とか要らねえし。大体お前だって名誉と金が欲しいだけだろ」
「なっ……」
「ぶっちゃけ宮廷魔道士弱すぎだろ!そんなショボい魔法しか出せねえの?無い知恵絞って考えろよバ―」
「やめて下さい!」
 リリアが叫ぶ。
「言い過ぎです!私達だって王国を守る為に必死で戦っているんです!貴方に何がわかるんですか!とにかく先輩達を悪く言わないで下さい!」
 リリアが涙目で怒鳴る姿を見て、優介は魔道士を見る。
「って事で、宮廷魔道士団についてもうちょっと愚痴りたかったけどやめとくわ。お前もちゃんとこいつに礼を言っとけ。今さっきボコされそうになった先輩の弁明をしたんだからな」
「あ、あぁ。ありがとう。それと、さっきは言い過ぎた。ごめん」
 よく分からないまま魔道士はリリアに謝る。
「あと、さっきは宮廷魔道士団のことめっちゃ侮辱したけど宮廷魔道士が国の為に必死で働いてるのは分かってるんで。ほんと献身的な仕事だよね。俺には出来ないわ」
 優介は最後に国王の方を向く。
「じゃあこいつ借りていくんで。待ってろよロリ、ちゃんとボコして来るから。じゃ、また」
 そう言い残し、優介はリリアを連れてそそくさと王宮を出て行く。一瞬の出来事に一同は口をぽかんと開けたままだ。
「何だったんじゃ……」
 国王はため息をついて、それからあることを思い出す。
「おお、そうじゃった。五賢者、全員クビな」
「ですよねー!」
 優介に道連れにされた五賢者は、とぼとぼと王宮を出て行った。
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