⑥(ギル視点)俺の従者
お久し振りですーーー
大遅刻しました作者ですーーーー
最近はちょっと多忙だったり体調崩したりなんか色々とね。
あとなんか世界的に大変らしいので皆さまどうぞご自愛くださいましね。
俺の名前はギルベルト・フォン・カースレスト。
この国の第一王子、今は五歳だ。
今、母上が妊娠しているらしいのでもうすぐ兄にもなる素晴らしい人間だ。
誰もが俺を前にすると頭を垂れて跪く。
だが、そんな当たり前の俺の日常の中にも、例外も存在した。
それが、俺の従者であり宰相の息子でもあるテオフィル・シーラッハである。
コイツとは物心つく前から一緒だ。
いつから一緒にいたか?生まれたときからだと父上が言っていた。
そんな奴と俺は今現在チェスに興じている。
「ギル様、次の駒はまだですか?」
「う、うるさい!今考えているのだから待て!」
「その台詞、三回目なのですが」
「いいから待て!」
「はいはい」
「ぐう……」
そう…コイツが従者だ。
主の目の前で堂々と読書に興じるコイツが!俺の従者!!!
コイツは読書をしながら俺との勝負にさらりと勝利してくる調子者だ。
素直に言うとしたらなんで勝てないんだ?ってぐらい強い。
俺が必死に考えた手を「ふむ、考えましたね」の一言のあとにあしらうんだぞ?
お前は本当に俺と同い年か?と思ったことは数えきれないほどだ。
今俺はそんな逃避思考をしつつ盤面を睨んでいる。
素人が見れば、この勝負は今のところ俺が有利に見えるのだろう。
だが、一手でもしくじればその小さな隙を突きまくって勝利するのが俺の従者だ。
「うう…こ、ここだ!!」
「やっとですか…では私はここで」
「えっ早」
「次どうぞ」
「テオ!お前、盤面見てるか!?見てるのか!?」
「記憶しておりますので」
「完璧従者め!!!」
「いきなり褒められても照れますね」
「嫌味だよ!!!」
全然照れてないような何時もの澄ました無表情でこんなやり取りをする。
コイツは、どんなときでも表情が変わらない。
俺がいくら困らせても。
怒らせても。笑わせようとしても、くすぐっても。
淡々と、光のない双眸で俺を見透かすように見ては、斜め上の返事をしてくるのだ。
ノリは良い。
忠誠心もある、と思いたい。
学もあれば、あのセバスとやり合うぐらいの強者でもある。
ぜっっったいに本人には言わないが、自慢の従者だ。
だからこそ、ふとしたとき。
今も、本を見ているようで、どこか遠くを見ている。
そこらの変な貴族の大人より、大人びた顔で、泣いてるような気がする。
泣いてる…?うん?今の俺の思考は変だったな。
寂しそう、とも違う。ただ、今の俺では到底分からない感情ということしか分からない。
コイツは、いつも俺より優れていて、それでいて、それを鼻にかけない。
まあ、セバス曰く…
「テオフィル様のような従者が居られるからこそ、殿下は驕らず努力を惜しまないですね」とのことだが。
だってムカつくだろう?
俺がやっとの思いで覚えたムズカシイ歴史書を見せて自慢したら次のレベルのをどうぞ☆とか言って渡してくるんだぞ!?セバスの分身じゃないのか?って聞いたら鼻で笑われたこともある。クッソむかつく!
「チェックです」
「――っは!?え、今のありなのか!?」
「たかがポーンとでもお思いでしたか?一兵卒を侮るからこうなるのです」
「でも今確かに俺の駒が…ああ、でもぐぐぐ……俺の負けだ!!次は勝つ!!!」
「もう理解されましたか、そろそろ私も危ういですねぇー」
「棒読みで言われても嬉しくないからな!?」
「実際、ギル様はチェスの腕だけは私に引けを取らないと思いますので」
「何…?それは本当か?」
「ええ、まあ…最近は何回か私も負けておりますし……このマシュマロ脳の殿下に……悲しや。」
「今、馬鹿にしてなかったか?」
「いえいえそんな滅相もない」
「なら視線をこっちに寄越してみろ」
「はい」
「俺のこと、馬鹿にしてたろ?」
「はい」
「いいえって言わないのかよ!!」
「言って欲しかったんですか?」
「馬鹿正直め!!」
「お褒め戴き「褒めてない!!」…そうですか」
そんな感じで俺らの一日は終わる。
俺が就寝の時間になるとコイツは従者用の塔に行く。
でも、たまに俺が泊まっていけ、と我儘をいうと渋々一緒に寝てくれるのだ。
母上が妊娠してからは、数週間は一緒に寝ていた…のだろうか。
コイツ、俺より先に絶対起きるんだ。俺より後に寝てるはずなのに……。
いつも目の下にクマがあるし、「寝てるのか?」と聞いたことがある。
そのときのテオの顔は、ちょっと歪んでいて。
でも気のせいかと思うぐらいすぐいつもの無表情に戻っては、「ええ、それはぐっすりと」と偽物の笑いを浮かべるのだ。
コイツは、嘘をつくときしか笑わない。
そのことを、本人は自覚してるのだろう。
自覚した上で笑い、追随を許さぬよう、紫紺の瞳が壁を作る。
いつか、俺が立派な王子になったなら。
この従者が抱えているであろう秘密も、俺に分かるのだろうか。
いつもそばにいてくれて。
分からないことは教えてくれて。
間違ったら怒ってくれて、暇なときは相手をしてくれる。
俺の大事な従者、テオフィル。
お前は、なぜ…… … ?
五歳の殿下視点でしたーーー
五歳の視点じゃねえよってツッコミ知ってますーー
はいテンションがおかしい作者、現在40時間突破で起きてる。
久々の更新もこのノリといって過言ではない。プロット?バックキー?食べちゃいました。
最後、殿下はテオのことを何と言ったのでしょうね。