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幸運な俺と悪魔憑きの乙女  作者: 双さん
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武具屋にて

「ふう、次はここだね!」


服屋での買い物を終え、多額の支払いを済ませたエリスは、荷物を全て俺に預けて一段目の街にある店へ俺たちを案内した。


「一体どれだけ服買ったんすか……重いなんて騒ぎじゃないぞこれ……」


長々と、それはもう長々と衣服を見比べ、吟味に吟味を重ねて購入した大量の衣服のセットにいくつかの靴と髪飾り。

我慢の限界を超えた俺が猫耳店員に持ってきてもらった自分の女体化時の為の服が二着。


総額不明のその荷物の全ては大きな布製の手提げ二つに分けて入れられ、俺が両手に提げて運んできたというわけだ。


俺はようやく得た休憩を喜び、張り詰めた腕を揉む。


「まあまあ、いいトレーニングになったって事で。やって来ました武具屋さん。私行きつけにしてこの街で一番ファッショナブルな武具のお店!その名も……」


「いや、別に良いですからそういうの、交渉お願いします。」


「ぐぬぬ、まあ、こっちは言わなくてもわかるか。」


そう言いながらエリスはドアを開け、クーの手を引いて中に入って行った。


っておいおいマジかよ、どんな店主がやってる店だ、異例にも程がある。

……と思って2人を追うが、後からよくよく考えてみれば、俺はクーを入れても問題のなかった店を一つ知っていた。


そう、豪奢なドレスに室内でも大きな帽子を被った、無駄に艶っぽく喋る女性の店だ。


「あらあらふふふ、いらっしゃいお兄さん。」

さしずめここはマリア武具店と言ったところか。


幅は無いが奥行きのある店内は、防具を置いた棚と棚の隙間にマネキンが並び、壁際にあるショーケースには武器が所狭しと並んでいた。


店内にあるマネキンは革製の防具を纏ったものや厚手のローブを纏ったものなど、どれもこれも軽装と言える程度の武具しか身につけておらず、頭の防具に至っては見た目のよい帽子しか置いていない。

また、壁際に置かれた棚には武器が飾られていて、中には盾や抜き身の剣もいくつか置いてある。


マリアさんが朝早くから服屋を休んでどこにいるのかと思えばこんな店で別の商いをしていたのか。


「どう?シンジ君、驚いた?」


エリスがわくわくとした表情でこちらに質問を投げかけてくる。


「そっすね、マリアさんの店が二つもあるとは思いませんでした。」


「ふふふ、素敵な武具が揃っていますわ、是非じっくりと見ていって下さいな。」


店内に置いてある商品はマリア服店や冒険者ギルドの地下にあった量を易々と越える程に多い。


「まあ、まずは防具だけど、クーちゃんはローブが良いんじゃないかな?クーちゃん位の背丈の子が着てると可愛いよね!」


「でも剣士にローブってどうなんですか?」

見た目は確かに可愛いだろうが、動きやすさを犠牲にする程ではないだろうと思い口を挟む。


「あー、それもそうだね。でもなあ、やっぱフード付きのローブにくるまったクーちゃんが見たいなあ。魔法の適性も十分だし魔法使いになれば良いんじゃないかな?どうよシンジ君!」


「いや、エリスさんがこの剣渡したんじゃないですか。俺はこの白い剣を片手に舞闘してるクーが見たいです。」


「ふぇ!?」


「あー、うーん、それもいいねえ、ユナなんかは大っきい剣ぶんぶん振り回す荒い剣術してるけど、クーちゃんの剣術とか軽やかで可愛いだろうしね。」


納得してくれたようだが、ここで一つ提案だ。


「そこで、クーにフード付きマントを贈呈することを提案する。どうかな?」


「おー!それいいね。あのローブ特有のだぼったい袖が見たいっていうのもあるけど、カッコいい系のクーちゃんもなかなかそれで……ふむふむ、マリアさん今の案で似合いそうなの何があるかな?」


「中に着るものはなんでもいいのかしら?」


この店の事だ、どうせ全ての売り物に呪いが付いているに違いない。


「暑さ寒さを考えつつ、痛み止めの効果があるのがいいかな。出来そう?」


「そうねえ、少し待ってて頂戴ね。」


マリアさんはそう言うと商品を眺めながらウロウロと歩き始めた。


「ついでにシンジ君も作ってもらえば?ここの武具は男女別あんまり無いから、要望は聞いてもらえるはずだよ。」


と言われた所で冒険者の装備に何が必要なのか分からない。


「俺も暑さ寒さと、あと何かいいかな、なるべく元気に素早く動いてられる事……くらいですかね?」


「だってさマリアさん。」


「はーい、分かったわー。」


既に何点か手元に集めたマリアさんが店の片隅で声を上げる。


というか、マリアさんは一体どうやって呪いのかかった武具の呪いの内容を見分けているんだろうか?

うろついている辺り完全丸暗記という訳でもなさそうだが……


「あ、もしかしてマリアさんの能力について考えてる?」


「そんなとこまで分かるもんか普通?」


「にゃはは、いや、普通はそういう思考に至るもんだよ。逆に装束店でその事を考えてなかったことが意外だね。」


まあ、確かに言われてみればそうだ、俺のペンダントを見ていた時も神業だの何だのと言っていた。

やはり目だろうか?異世界だし特殊な目を持っているという可能性はあるかもしれない


「マリアさん曰く読めるらしいよ?なんか、どんな加護がついていて、どんな呪いがかかっているのか分かるんだって。どうしてそんな力を持ってるのかについては教えてくれなかったけどね。」


まあ、異能力の一つや二つ持っている人間がいてもおかしくないだろうなとは思っていた。


それこそ、透視、霊視、気とかチャクラ的なのも見ることが出来る人間もいるかもしれない。


そう言えば、呪いが見えるわりには俺にペンダント外させようとしたよな……?


商品として買取りたいとか思ったんだろうか?


「不思議なもんですね。」


「でしよー?あの帽子の力みたいな気もするし、ドレスのせいとか口紅のせいみたいな可能性もあるじゃない?なんて言ってもこんなお店の店主だからさ、理由がわからなくて凄い気になるんだよねえ。」


「ふふふ、企業秘密ですわエリス様。」


まさかの様付けに俺の名前じゃないのに冷たい汗が背中を走る。


見れば両手にいくつかの服を抱えたマリアさんが立っていた。


「あはは……ありがとうマリアさん。どんな防具を選んだのか見せてほしいなー。」


「ええ、まずはクーちゃんの物から言うわね。まずはこの革鎧。運動能力の向上の加護の代わりに感覚が鋭くなる呪いがかかっているわ。次にこの靴ね、出血を減らす代わりに寂しがり屋になるわ。それでこのベルトが暑さに強くなって寒さに鈍くなるもの、マントは寒さに強くなって暑さに鈍くなるわ。」


強くなる、鈍くなるで加護と呪いが対応しているのは分かるが、感覚が鋭くなる事が呪いというのがあまり理解できないのだが……


「ごめんマリアさん今なんて?」


クーが理解し、エリスが聞き返したということは、今のはクーの言葉で喋っていたということか……

そろそろクーにもこの国の公用語の練習をさせないと、いざ俺から独立した後に一人で行動することが増えた時が大変だ。


とは思うのだが、それにはやはり悪魔憑きだなんだと無意味に騒ぐ悪習を取り払う必要があるだろう。


「そこら辺に国家を揺るがす大事件でもあればいいのになあ。」


とは思うものの、地道に地域貢献して知名度を上げていくしか無いだろう。


「あー、シンジ君そういうタイプかあ……」


マリアさんの説明が終わり、クーに装着方法を教えている中、他愛ない俺の独り言に反応を示したのはエリスだった。


「そういうタイプってどういう意味ですかそれ?」


「んーとね、冒険者の仕事はピンキリだって話を前にしたと思うんだけど、覚えてる?」


確か、近場の魔物の退治から大型魔物の討伐までと言っていたような気がする。


「まあ、確かに魔物相手のお仕事ではあるんだけど、魔物を狩る私達と同じくらいの身体能力を持っていて、悪事を働く人を捕獲したり処刑したりするのも私達の仕事になったりするの。」


逮捕は分かる、が。

「処刑……?」


「そ、ジンドウテキハイリョってやつ?凶悪殺人鬼をようやく捕まえて死刑を宣告したは良いけど、いざ執行しても一般的な処刑方法では死に至らないほどタフな奴ってたまにいるんだよねぇ。」


「それで、なんで冒険者が?」


「相手を手早く確実に殺す行為に慣れてるのなんてこの国では冒険者ギルドと国王様の護衛の人くらいしか居ないからねぇ……」


真面目な涼しい顔をして殺すなんて言葉が出てくるのは正直な所怖いと感じる。

確かに俺たちも日本では殺すだの何だのと口走ることがあったが、この場の雰囲気は似ているにも関わらず、感じ方が違うのはやはり彼女の力を見ているからだろうか。


「まあ、そんな訳で冒険者登場ってわけ。他には、天災クラスの魔物の討伐依頼が来ることもあるね。これは国からだったり貴族様からの依頼だったり。まあシンジ君の事だからそっちの想像でもしてたんでしょ?」


「最早なんでもお見通しって感じだな……」


「いやあ、シンジ君わかりやすいからねぇ。」


こりゃクーが言葉を習っているうちに俺もポーカーフェイスの練習しないといけないかもしれないな……


「そうだ、その天災クラスの魔物の討伐依頼、もしかしたら明日にでもギルドの掲示板に張り出されるかもしれないから、見に行くといいよ。」


はて、あの建物に掲示板などあっただろうか?

入口の無い酒場風の店内にそのようなものは無かった気がするのだが……


「ああ、冒険者ギルド初めてだっけ?ごめんごめん、通りに面したふつーの入口から入れば、受付中、進行中の二つの掲示板があるから、受付中の依頼からめぼしいもの見つけて進行中に移せばいいよ。」


結構大雑把な方法で依頼受けしているらしい。


「明日はまた一緒にギルド行けるけど、それ以降は二人で頑張ってほしいかな。」


「勿論、エリスさんに頼ってばかりも居られないですし、ここまで何から何までありがとうございました。」


「いやいや、初めて出来た可愛い後輩だもん、これくらいお安い御用だよ。」


「お安い御用ついでに一つ聞いてもいいですかね?」


「何かな?なんでも聞いて?」


「泊まれる場所を探してるんですけど。」


「それは……マリアさんに泊めて貰えば良いんじゃないかな?」


まあ、予想していた答えだ。

が、俺は女体化して客引きしたくない。

そしてマリアさんに泊めてもらえば客引きさせられるのは必然。


「でも私はお家あるから宿屋とか使わないし、私がシンジ君を家に連れていったら厄介なことになりそうだから駄目でしょ?ギルドも夜は完全封鎖だし……やっぱマリアさんのところが一番だよ。まあ、スラムの方に下りるって言うのも手だけど……それじゃクーちゃんが危ないもん。ダメダメ。」


手の打ちようがないと悟った俺は諦めてマリアさんに頭を下げ、それを見たマリアさんは悪戯っぽい笑みを浮かべて口を開いた。


「ふふふ、歓迎するわ。」

書くのってやっぱり大変ですね。

楽しんで頂けたら幸いです。


閲覧ありがとうございました。

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