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幸運な俺と悪魔憑きの乙女  作者: 双さん
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適性調査

「難しいもんだなぁ……」


鎖付きの鎌を棚に戻しながら、溜息とともに感想を述べる。


「シンジさん!これ楽しいです!」


なかなか使いやすい武器に出会えない俺に対して、クーは先程から手に持つ武器全てを笑顔で上手に振り回している。


「ヌンチャクを初見でそんなに振り回せる人なんて初めて見たよ。」

「どうですか!かっこいいですか!?」


ギュンギュンと目にも止まらぬ速さでヌンチャクを振り回し、最終的に脇に挟んでポーズを決める。


「……クーは凄いな。」

「えへへぇ……」


ぱちばちと拍手しながら素直な感想を述べると、顔を綻ばせて喜びはじめた。


「クーちゃんはなんでも使えるみたいだけど、シンジ君はからきしだね。なんでこんな職に就こうと思ったの?」

「いや誘ったのエリスさんじゃないですか……けどまあ、なんかイケそうな気がしたから……すかねえ?」


エリスの質問に答えるとバーボンが反応を示す。


「はっはっは、面白い奴だな。どうだ、変わり種でも触るか?」

「変わり種?」


バーボンに案内されたのは武器棚の中でも部屋の端っこに設置された場所。

武器棚の中には数本のオーソドックスな形の武器が置かれている。


「こいつらはみんな、何かの呪いで使い物にならないモンだ、試しにどれか触ってみろ。」


いつの間にか後を付いてきていたクーが手にしたのは白く細長い剣。

クーがその剣を引き抜くと、鏡のように美しく白銀に輝く刀身がその姿を露わにした。


「ほお、こいつぁ珍しい。」

バーボンがその様子に言葉を洩らす。


アレか、選ばれし者がどうのこうので伝説の云々みたいなノリか。


であればやっぱりこういうのは下手に剣を手に取るよりどう足掻いても安全なモノを選ぶのが鉄則だ。爆発とかしかねないからな。


その点でいえばこの真っ黒な盾は安全だろう……か?

まあいいや。


野球のホームベースのような偏った五角形をした、かなり大きな盾だ。確かカイトシールドって種類だった気がする。

敵に見える側は、光を反射しない煤けたような黒でありつつ、ともすれば光沢のある漆黒の様にも見える不思議な色をしている。

その裏側は闇と表現するのが適切そうな黒い靄が張り付いていて、表面の凹凸すら視認できない。


そんな盾を棚から取り出そうとした時、靄の中に手探りで見つけた取手が外れた。

正確には取手は柄で、十字架型の長い漆黒の剣が仕込まれていたようだ。


盾から出てきたのは諸刃の直剣、刃は薄く、幅は……八センチほど、刃渡り1メートルは有るだろう。

この部屋にある刀剣の中では大きい方だ。

光沢消しのされた、煤塗りのような黒色の柄と鍔を持ち、それとは対照的に漆塗りの如く輝く刃が光を放っている。


あれ?研磨されてる筈の部分ってこんなに綺麗になるもんなのか?

疑問は浮かぶが、ここまでの人生でまじまじと見た刃物などカッターくらいしかないので分からない。


盾側は剣の柄の他に幾つか取っ手があるようだ。

さらに盾の下端部は刃物のように薄く鋭利で、その部分だけ手触りが少し違う。

使い方としては、敵の攻撃を受ける時に下端部を地面に突き刺して固定するのが適当なのだろうが、上手く扱えばこの部分を敵に突き立てることでも十分に殺傷できるだろう。


長々と観察していた所にエリスの声が聞こえた。


「二人とも抜けるなんて……私の見る目凄くない?どうよバーボン?」


俺たちを褒める所じゃないんだ……

呆れ半分だが、どうやらここの棚の武器から剣が抜けるというのは凄いことらしい。


え、もしかしてあの魔法使い御用達っぽい杖も実は剣なの?


「この棚の武器はどれも使えた人間に渡す決まりになってるから、二人共それ持ってってね?」


そんなこと聞いてないし、クーのはまだいいとしても俺のは単純に取り回しが悪くて使われてないだけなんじゃないのか?


「ところが実は皆も抜ける、とかじゃないんですか?」

「ふふふ、それが抜けないんだよね。やってみようか?」


試しに剣を戻した盾を渡す。


「重っ……取手どこ?ここ?ふぬぬぬ……」


エリスが俺の盾を受け取ろうとして地面に落としてしまい。危うく足の上に落ちるところだったがなんとか回避し、そのまま倒れそうになる盾を掴み支える。

その状態で柄を握りエリスが剣を抜こうとするが握った手が少し動く程度で剣は出てこない。


「ほら、ね?ついでにクーちゃんのもやってあげるよ。えいえい、ほら、こっちも抜けない。」


クーの剣も同様でエリスが抜こうとしても五センチほどしか動かないが、クーが抜くとするりとその刀身を全て露わにする。


「不思議なもんだな……あれ?」


エリスから受け取った盾から剣が抜けない。

さっきは確かに抜けたのに今回はどんなに力を込めてもびくともしない。


「あはは!シンジ君の面白いね、機嫌がいい時と悪い時があるなんて。まあ、さっきは抜けたし、そのうちまた抜けるだろうから持って歩いてたらいいんじゃない?」


随分と面倒くさいものを貰ってしまった……


「クーはいいとしても、俺の武器は別に見つけないといけないってわけか……」

「そだね、それならまあ、いざって時のためにその盾と他の剣で戦うのに慣れておけばいいんじゃないかな?」


これといって得意な武器があった訳でもないしエリスの言う通りにするか。


「そういえば、こんな場所に保管してるぐらいなんだし、一品ものなら名前とかあるんじゃないですか?これ。」


「おっ、察しがいいね、実はそうなの。クーちゃんが持ってるのが《北の勇者の細腕(ノーサムヘイロー)》って武器で、シンジ君のは《武器屋(ウェポンメーカー)》って武器だよ。」


なんでウェポンメーカーって英語なんだよ。


「ウェポンメーカーって何語の名前なんですかね?」

「さあ?ただの名前だし、何語とか無いと思うけど、何で?」

「いや、知ってる言語に同じ意味の単語があったんで。」

「じゃあその言語なんじゃないかな?」


うーん、マリアさんはこの世界に英語は無いって言っていたが……


「まあいいか。」

「そうそう、細かいことは気にしない!それじゃ次は得意魔法だね!」


そう言ってエリスが歩き始めたのは修練場の真ん中。

何も無い広間だ。


「これを持て。」


そんな場所に到着するなりバーボンがどこからか取り出した手のひらサイズのガラス玉を渡してくる。


「何すかこれ?」

「試験石という物だ、それに向けて魔力を込めると得意な魔法が分かる。」


魔力を込めるとか突然言われても分からないんだが……


「シンジ君、魔力を込めるのはね、こう、むむむー!ってなんか、気持ち的な?想像力的な?適当で大丈夫だよ。」


んなアバウトなやり方で出来る訳無いじゃ……

「むむむー!」

クーの持つガラス玉が四色で等分に染まっていった。え、マジなの?


「そうそう、クーちゃん上手いねー!えっと……バーボン、これってどう見るんだっけ?」

「一番太く塗られている色を言え。」

「うーん、赤……いや青?緑もいい勝負だし、茶色も大きそう……青かな!?」


エリスの言葉を聞き、バーボンが手元の紙に何かを記入していく。

適当……掌に力……


「むむむ……」

「お、出来るじゃんシンジ君。いいね。バーボン!シンジ君は白だよ。」

「白、と次はこれだ。扱いに気をつけろよ。」


次にバーボンが渡してきたのは厚さ一センチほどの直角二等辺三角形の石だ。


「右手でこう握って上を左手で押さえるの。いい?それで、あそこの土山に伸ばした指を向けた後に、バーンって言うの。」


エリスが示した手の形は、右手の小指の付け根と薬指で長辺と鋭角を支え、人差し指と中指は側面に添わせる。親指で手前側の短辺を押さえながら残りの面を左手で隠す……まるで拳銃……?でも拳銃は左手で上を押さえないよな。


「バーン!」


クーの手元からビームが出た。


「おー!すごいじゃん、結構凹んでるよ!」


部屋の隅の砂山に到達したビームが着弾によって起こした小爆発で作った凹みを確認しながら、エリスがこちらに叫ぶ。

その位置だとかなり危なそうだが大丈夫だろうか?


「シンジ君もはやくー!」


まあ、エリスが言うなら大丈夫か。

石を構えて、呟く。


「ばーん。」


声を出すと同時。

大きな破裂音と共に手の内の石が砕けた。


「は?」


幸いにも石が爆発することは無かったが、パラパラと粉になっていく残骸を眺めて呆然とするしかない。


「エリスさん!石が壊れちゃいました!」

クーが俺の代わりに叫ぶが、クーの言葉はエリスには通じないはずだ。


それでも何かを察して駆け寄ってきたエリスに事情を説明する。


「凄い握力だね……」

違わい。


「これは後日もう一回やるしかないね。この石って今の魔法撃つと使用者の魔力全部使うから二発目はすぐ撃てないんだよね。」


クーの石を借りてやってみてもうんともすんとも言わない辺り、たしかに魔力切れなのだろう。


「よし、おしまい!買い物行こうか!」


そういえばそんなことも言っていたな。

やることはやったと言わんばかりの満足気な表情で歩き出したエリスに取り残されながら、盾を楽に運ぶパーツがないか探す。


盾の内面を触って確認すると、盾の中央上端にベルトが見つかったため、いつか見たゲームの主人公のように斜めに背負い、扉を開けて待つクーのもとに急ぐ。


「ありがとうクー、その剣持とうか?」

「あ、いえ!大丈夫です!シンジさんにそんな!」

「いいっていいって、ほい。」


笑って手を差し出すと、少し迷った後、持ち辛そうに抱え込んでいた剣を渡してきた。

ひんやりとした冷たさを持つその剣はとても軽く、白い鞘から引き抜けば輝く刀身が姿を現す。

薄く細く、刃渡りは八十センチほどだろうか。

とても軽く、剣が自動で動いているのではないかと言うほど滑らかで扱いやすい。

なんてふざけていてはまた皆に遅れてしまう。

剣を鞘に戻して階段を駆け上がり、他の三人に合流すると、バーボンが口を開いた。


「あとはお前らの自由だ、こっちで手続きは進めておく。正式加入は明日以降だ。また来い。」

「じゃーねーバーボン、今日はありがと!」

「ありがとうございました。」


感謝を述べると、クーも頭を下げた。


「それじゃあ行こう!すぐ行こう!」


まるで子供のように催促するエリスの後に続いて、冒険者ギルドの建物を後にした。

転生したんですから勇者の資格くらい持ってないとやっぱり主人公力足りてないと思うんですよね。

あ、諸説ありますが今回の「魔力」はマジックポイントの意味で使ってます。

閲覧ありがとうございました。

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