セリザの野望
傭兵団の団長セリザはアイリスと少年兵達が出て行った後、会議室でほくそ笑んでいた。
しかも、ワイングラスをゆらゆらと揺らしながら、中で転がるワインをずっと眺めているほどにご機嫌だった。
第一部隊隊長のニューシーが珍しく気味悪がるほどの、上機嫌さだ。
「セリザ団長、何かあったんですかい? やけに上機嫌じゃあないですか」
「ふふふ、分かるか?」
「えぇ、まぁ、確かに今回の仕事の報酬は破格ですし、俺達も有名になったもんだと感慨深いっちゃ感慨深いんですが」
「ふふ、そうだな。だが、私の機嫌が良いのは金貨百枚の使い道さ」
「金貨じゃなくて、使い道、ですかい?」
「新しい子供を買い付けた。これで妙な知恵をつけてきた奴らを廃棄できる。しかも廃棄処分も合同で手伝ってくれるそうだ」
「へぇ! サムド達を消すんですかい? そりゃあいい。あいつらいくら殴っても反応が無くてつまらなかったんで」
ニューシーが下卑た笑いをする。
だが、セリザはニューシーの言葉を聞いて、呆れた様子で首を横に振った。
それは我が本意では無い。もっと頭を使え。と言わんばかりの振る舞いに、ニューシーは笑いを止めて首を傾げた。
「団長、どうしたんですかい?」
「私はそんな趣味の悪い人間ではないよ。君は知らないのか? あのゴブリンどもがサムドを中心に独立しようとしているということを」
「独立ぅっ!? 本当ですかい?」
「あぁ、最近わざと高難易度任務に向かわせて、死んだゴブリンがいただろ。あいつが死ぬ前に尋問したら吐いた。考えてもみろ。いくら君に殴られても何かに必死に耐えているのだぞ。そこには必ず何かある。人は希望や目的があると辛い現実に耐えられるもんさ」
「あのクソガキども! 仕事を回して貰ってる恩を仇で返すってか!? ぶっ殺してやる!」
「まぁ、待て。そう急ぐな。だからこそ、その希望を徹底的に砕く。リーダーを失い、精鋭を失い、残された者だけで傭兵の仕事は真っ当に出来ない状況にする。そして、独立なんてしても無駄死にするだけ。そう実感をもって刻ませる。それにどうせアイリス姫と一緒に始末するんだ。今殺してしまったら仕事が台無しになる。俺達の仕事は事件現場を作ることだ」
あっさりとそう言い切ったセリザは転がしていたワインに口をつけた。
「美味い。さて、残りは灰色のゴブリン達の死を肴に頂くとしよう」
趣味の悪い人間ではないと言い張っていたセリザだが、優しい笑顔の下に隠されたどす黒さと計算高さにニューシーの顔がたまらず引きつった。
そして、セリザは徹底した冷酷さを以て、ニューシー率いる第一部隊に命令を下す。
「アイリス姫および灰鬼隊を始末しろ。神具の使用を許可する」
「へへ、本気ですね。了解しやした。副隊長と神具インドラを出しますぜ」
神具、神話の時代に作られた武具の使用許可が降りた。
それが意味するのは、相手を一体残らず殲滅しろというものだった。