灰色の奴隷
問い、狙撃手が深い森に隠れて、一方的に矢を放ってきます。しかも、矢は地面に刺さると地面に大穴を開けるほどの大爆発を起こします。
どうやって切り抜けたらよいでしょうか?
「簡単だよ。隠れている場所ごと焼き尽くせば良い」
灰色の髪と灰色の目を持つ少年、キオはその問いに対する答えを実行するために、大剣を横に振り抜いた。
すると、青い衝撃波が森を駆け抜け、森の木々が一瞬で黒く燃え尽きた。
五メートル先も見えなかった森が、百メートル先まで障害物の無い平地に変わったのだ。
そうなれば、狙撃手に隠れる場所は無い。
「見つけた」
キオは狙撃手である男を見つけてもう一度剣を構える。
その瞬間に狙撃手の男は、森を焼いたのがキオであることを見抜き、背を向けて逃げ出した。
「逃がさない」
今度は剣を縦に振りおろす。
すると、今度は青い炎の竜巻が発生し、狙撃手を飲み込んだ。
声を出す時間どころか、熱さも痛みも感じる暇もない速さで狙撃手は灰へと変わる。
圧倒的な力により敵が消滅したことで、キオの背後に隠れていた少女が顔を出した。
赤い長い髪に、垂れ目気味な宝石のような緑色の瞳、豊かな胸元には龍の紋章が象られた金のペンダントがぶら下がっている。
彼女こそが今回の騒動の原因となる皇女アイリス。先ほどキオが狙撃手に狙われた理由だ。
そんな騒動の中心にあるアイリスは信じられないモノでも見るような目でキオの剣を見た。
「キオ……。あなたは一体何者なのですか? たった一振りで森をなぎ倒すなんて……。私がいくらその剣を振っても何も出来なかったのに」
「何者って傭兵だよ。それと、この剣の力を引き出せたのは、俺が魔物の血を取り込んだ《アッシュ》だからだ」
魔物の血を取り込んだ人間は灰色の髪と瞳に変化し、魔法を使うことが出来るようになる。
そんな魔物の力を得た人間のことを、この世界では灰の奴隷と呼んだ。




