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World Link Online  作者: 霧凪
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〜始まりの鈴〜

第1話〜始まりの鈴〜


『7月24日今日のお天気をお伝えします。今日の山口県の天気は晴れ、気温は32℃を超えるでしょう。熱中症対策を万全に外出してください。では、次のニュースです...』


「......今日も暑いな~毎日毎日外出する気もおきないな」


そう言ってだるそうに冷蔵庫に向かう黒髪に眼鏡をかけた青年"霧嶺 凪"は、近くの高校に通う3年生だ。3年生と言うこともあり部活も引退して、夏休みを暇の一文字で過ごしていた。


「さて、確か12時からだったな、軽く何か食べるか」


11:37とデジタルで表示してある時計をチラッと見て冷蔵庫から卵などを取り出し、軽い昼食を作る。

今日、7月24日は新しく発売したゲームのサービスが始まる日だ。日本中のゲーマー達が、待ちに待って発狂しそうなぐらいだっただろう。俺もその中の1人だが。


『さて、本日の特集ですが今日はなんと! 一昨日から発売されているゲーム"ワールドリンク・オンライン"の正式サービスが始まります! 雑誌やインターネット内でもかなりの反響で発売日当日には物凄い行列で、ちょっとした傷害事件もあって各県の警察が慌ただしくしていましたね~。』


『そうですね~、さて、このワールドリンク・オンライン通称"WLO"はこの地球のどこかの国を舞台としたVRMMORPG(仮想大規模オンラインロールプレイングゲーム)です。どこかの国、と言っても正式サービス初日ですから舞台は日本とされています。日本列島の端から端までを衛星スキャンしているので、仮想世界に入ってもここは現実のままではないのか、と疑う声が開発者側で上がったそうです。』


と、ニュース番組のアナウンサーが興奮気味に説明していた。


「さてと、やるか!」


ゲーム特集が終わると同時に、自分に少し気合いを入れて机に置いてある小型端末"F-AW"(未来型腕時計端末)をつけて起動する。ヴォンッという音と共にホロパネルが出現する。そして、その中の1つのソフト"WLO"を選択する。

現時刻11時59分

調度いい時間だ。

椅子に座って一言


「アプリケーションスターティング」


アプリ起動用の固定ボイスコマンドを言って、アプリを立ち上げる。"F-AW"は人の手首にある脈、体温、脳に繋がる神経にダイレクトにリンクして意識をそのままコンピューターで創られた世界へ飛び立つ事ができる。どういった技術なのかは詳しくはしらないけど、簡単に説明すると"夢を見てる"状況に近いらしい。


「......」


直ぐに意識が体から切り離され、空中に浮いてるかの様な感覚になる。

つかの間の静寂の後に


『WLOへようこそ。ネットワークIDとパスワードを入力してください。』


機械的な音声でそう伝えた。


「......これで、よしっと」


IDとパスワードを入力して次に進む。


『生体スキャンを開始、キャラクターメイクを行います。しばらくお待ち下さい...』


このゲームでは残念なことに自分の思いどうりにキャラクターを作ることができない。つまり、現実の容姿そのままでゲームをプレイしなければならない、と言うことだ。


「まぁ、これからのアップデートで追加されることを願っとこうかな」


キャラクターメイクができない代わりにゲーム内容はこれまでとは比べ物にならないらしい。ゲーム内容を取るかキャラ作成を取るか、と天秤にかけたら確実にゲーム内容だろう。


『座標確定。キャラクターメイクが完了しました。それではどうぞ、お楽しみ下さい。尚、最初のログインポイントはアプリケーションを起動した場所からとなります。』


そこで俺の目の前は真っ暗になった。


「......ぅん?」


目を開くとそこは自分の家のリビングだった。


「おぉ、ホントにアプリを起動したところからなんだな」


そう言って立ち上がり、俺は自分の体を見て両拳を握った。


「ここがWLOか、確かに現実と区別がつかないな」


周りの風景は元より、家具でさえもポリゴンを感じさせない。ここがコンピューターで創られた世界とは到底思えないだろう。


「さて、どうするかな?取り敢えず武器の調達だよな」


オンラインRPGなので武器が無ければ何も始まらない。ここは、近場のショップを目指すのが妥当だろう。

家を出て近くにあるショッピングモールに凪は向かった。


「へぇ~、本屋とかはあるけどスポーツショップとかは消えてそこに武具ショップを入れてるのか。他のプレイヤー達もいるな」


同時刻にログインしてきたプレイヤー達もこのショッピングモールに来ていた。


「ん~、やっぱり片手剣だよな」


そう言って一番安い片手剣を手に取った。


「やっぱり最初はこんな剣でいいかな?」


と、軽く剣を振ると


「おい、にいちゃん素振りなら奥に行きな」


突然、店員(NPC"ノンプレイヤーキャラクター")に言われた。


「奥で素振りができるのか、ありがたいな」


剣を元の場所に戻し奥の素振りできるスペースに移動した。


「お、さっきの剣があるな。」


先程展示してあった剣を取り上段に構えると


「ふっ!」


と、アクション映画の見よう見まねで右足を踏み込み斜め左に振り下ろす。


「.....重いな~個人的には軽い方が良いんだけどな」


剣を元の位置に戻し、2つ上に置いてある剣に目が止まる。


「ん? ......ライト、ソード?」


手にとって「おぉ、軽いな」と驚きの声を挙げる。


「これは、即決だろ」


武器を決めて値段を見ると


「2000!? 高いな! 買えないんじゃないか?」


すぐさまメニューウィンドウを開く(WLOでメニューウィンドウを開くには、左手を握った状態で前方または横に向け、手を勢いよく開くことによってウィンドウが表示されるようになっている。)

ウィンドウを開くと左上に所持金が表示されている。

その金額


「ご、5000円!? 結構あるんだな!」


と、また驚いていると「あ、そう言えば初回ログインキャンペーンで初期配布金額が+4000されるんだっけか?」と、思い出した。

店員に「これを下さい」と、武器を持って行き購入した。

武器購入を済ませ、外に出ると...


『武器購入を確認しました。これよりチュートリアルを開始します。』


突然、アナウンスが聞こえて目の前にファンタジー小説やゲームでも有名な亜人系のモンスター"ゴブリン"が出現する。


『では、購入した片手剣について説明いたします。』


1拍間が空いて


『片手剣は比較的取り回しのしやすい武器です。モンスターの攻撃を見極めスキを見て攻撃しましょう。』


「ヒット&アウェイか、定番だなー」


『尚、片手剣は両手剣ほどの頑丈さが無いため武器での防御パリィはオススメ致しません。ステップを使っての回避や、盾での防御をオススメします。』


『では、模擬戦闘を開始します。目の前に出現したモンスターを討伐してください。尚、この模擬戦闘ではHP並びに装備の耐久値は減少しませんので落ち着いて戦闘を行って下さい。』


『開始3秒前、2...1...スタートです。』


目の前に英語でスタートと表示されると同時に正式名"ゴブリン・ファイター"が一直線に突進してきた。


「うおっ!」


間一髪の所でモンスターの攻撃を避ける。しかし、すぐさま"ゴブリン・ファイター"は左脇下から俺の顔面目掛けて武骨な木の棍棒を振り抜く。


「くっそ!!」


直前で顔を後ろに仰け反らせ回避する。その間に、剣を抜き迎撃を開始する。


「おっと! くっ!? せあ!」


チュートリアルのとうりにヒット&アウェイを行おうとするがなかなか上手く行かずに剣は虚しく空を切り、木の棍棒が俺の背中を捉える。


「くっそ! 難しいな!」


文句を言いながらも剣を振るう。


「てか、いくらHPが減らないっていっても──ぅお!?」


足を払うように棍棒が振るわれ、これを飛んで避ける。


「怖いだろ!!」


と、棍棒を振り抜いた反動で体制が崩れたモンスターの体に剣を振り下ろし、初めてダメージを与える。

モンスターのHPゲージが半分まで減り緑色だったゲージの色が黄色く変化する。


「ギャウ!?」


モンスターの悲痛な声が耳に入るが無視して追撃に出る。


─40秒後─

地に伏せるモンスターを見下ろし


「なかなか、難しいな」


と、肩で息をしながら言って剣を鞘にしまう。


『モンスターの討伐を確認しました。これでチュートリアルを終了します。引き続きWLOの世界をお楽しみ下さい。』


アナウンスが終了を告げて、目の前にプレゼントマークが表示される。

ウィンドウを開き、プレゼントBOXを確認すると、チュートリアルクリア報酬のベルトポーチと経験値、お金が入っていた。

それらを受けとると、レベルアップを告げる音楽が流れた。


「Lv.2、か」


と、レベルアップしたキャラクターデータを見ながら言う。


「ステータスポイントも結構あるんだな」


キャラクターデータを見ながらそう呟く。

ステータスポイントとは、自分のキャラクターのステータスに追加で能力を割り振っていくことだ(ステ振り、と言われることが多い)追加で割り振れる能力は、STR(筋力)、DEX(命中と防御)、VIT(体力)、INT(知力)、AGI(敏捷)だ。

ステータスの振り分けで自分の思いどうりにキャラクターを鍛えていけるという機能だ。


「ひとまずはSTRとDEX、VIT、AGIを均等に割り振っとくか」


現在の総ステータスポイントは20ポイントなので、5ずつ割り振っていく。


「これからどうするかな」


ステータスを振り終えて呟くが答えは出て来ない。


「ひとまずはレベリングだよな~エリアボス討伐はまだまだ先だ

しな」


エリアボス、それは1つの県に1体ずつ存在するモンスターだ。WLOでは各県にプレイヤーがいるが、どこの県でも現在いる県のエリアボスを討伐しなければ別の県に移動できない仕組みになっている。


「レベリングものんびりやるわけにはいかないだろうしな」


このゲームではモンスターのレベルが全ての県で一定化しているが、ここからがこのゲームのハードさだ。モンスターのレベルは日によって強くなっていく。つまり、従来のゲームみたいにのんびりレベリングをしていてはモンスターのレベルが上がり、取り残されてしまうわけだ。モンスターの強さが変わるのは1ヶ月ごとだと公式サイトには書いてあった。この1ヶ月のうちにレベルアップしたモンスターに対抗できるだけの力を身に付けなければならない。


「......よし、レベリングしに行くか!」


気合いを入れて座っていた長椅子から立ち上がり、その隣に立て

掛けてあった剣を取ってチュートリアルクリア報酬のベルトポーチの左腰にカチリッという音と共に装着する。

「取り敢えず、そこの国道2号線で戦闘になれないとな」

今日中にLv.4になりたいな、と思いながら国道に向かっていった。


─────────


「はぁ! 」


ザンッと気持ちのいい音と共にチュートリアルでも出てきた木の棍棒を持ったモンスター"ゴブリン・ファイター"を切り伏せる。


「大分慣れたな」


言うと同時にレベルアップを知らせる音楽が流れた。


『Lv.3到達おめでとうございます。Lv.3に到達したことによりスキル習得のロックを解除します。』


「やっとスキルが習得できるのか。長かったな~」


ちょっとした愚痴をこぼしつつ、ウィンドウを開きスキル習得画面を出す。


「......えーっと? まぁ、片手剣スキルは確定だな。後はー、索敵スキルと~ん? 運動能力スキル? なんだこれ? ......なになに? スキル習得者の身体能力を向上する? へぇ~」


見たこともないスキルに興味を抱き習得のボタンをタッチする。


「......修得してよかったのかな? 索敵とか盾スキルの方が良かったかな~? まぁ、覚えたもんは仕方ないか」


「取り敢えずは、このくらいでいいだろうな。レベルが上がれば習得できるスキルも増えるだろうし」


スキル習得を終了しメニューを閉じたところで、突然どこからか風鈴の様な音が響いてきた。


「なんだ?」


その音は俺の耳にすぐ入り、風鈴の響いてくる方向に振り向く。俺が振り向くと同時に、周りのプレイヤーからも なんだ? との疑問と驚きの混じった声が聞こえる。


「......ん? 」


少し、辺りの声が静まったところでメールの受信を告げるアイコンが右上に点滅する。


「メール? フレンドがまだ居ないから運営からか?」


メールの送信者が運営だと分かり、メールBOXを開く。そこには、無題名のメールが1件ボイスメールで届いていた。ボイスメールを開くとすぐに録音された音声が再生される。


『WLOという名の牢獄にようこそプレイヤー諸君』


と、人を上から見下ろし嘲笑うかのように声の主は言った。


『突然ですが~、あなた達はこのゲームの中に捕らえられることになりましたぁ~イェーイ!』


いやに高いテンションで話す声の主。「──っ!?」他のプレイヤーもボイスメールを開いて聞いているのであろう誰かが何かを叫ぼうと声を出そうとしたが、ボイスメールの声によってかき消される。


『あはは~、突然過ぎて理解できませんか~? まぁ、いいでしょう。理解できるできないは問題ではありません。あなた方はこのゲームから出ることは出来ない、そう! これが重要なんですよ!!』


既に、他のプレイヤー達はこの声の主が運営ではないことを悟っているだろう。


「なにを......なにを言ってるんだ?」


この場にいるプレイヤーを代表するかのようにボイスメールに向かって俺は疑問をぶつけた。

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