【女侯爵(マーキオネス)】
貴族関係のお話。
三話
貴族の仕事は夜も続く
とある晩、ルイスはある貴族の夜会に呼ばれていた。
煌びやかな調度品と豪華な食事・・・・というのはもうさんざん見飽きてきたところだった。気分がすぐれないフリをして壁の花を決め込んでいる。
「ごきげんよう、ルイス様。」
優雅に一礼する女性にルイスは思わず苦笑する、なにせ彼女のドレス姿は久方ぶりにみるからだ。
「ごきげんよう、レディ・エリザベス。」
「まぁ、ルイス様ったら私の衣装そんなにもおかしいかしら?」
「いえいえ、久方ぶりに夜会でお会いするなと思っただけですよ。」
エリザベス・コーリッド、19歳。
腰まである薄い水色の髪を先でロールしており、瞳は水色。
貴族階級としては「女侯爵」の位を継いでいるが本人は堅苦しいものが大の苦手であった、ゆえにルイスが会うのはこうした夜会よりも町で庶民の服装をした彼女が多いからであった。
「先日に町に行ったのがおばあさまにバレて大目玉を食らいましたのよ。」
「それで今日の夜会に出席ですか。」
「息が詰まるコルセットも着せられて散々ですわ。」
「それはそれは・・・災難でしたね。っと、夜会の主賓がきたみたいですよ。」
会場が薄暗くなるとダンスフロアの中心に一人の初老の男性が現れる。
タキシードに白い顎鬚をたくわえたその人物が今宵の夜会の主賓
ラウルフ・コンビナート・・・・【男爵】の位を授かっている男であった。
「えー・・・コホン。お集まりの紳士淑女の皆さま、今宵はこの私めの最期の夜会にお越しくださいまして大変有り難く存じます。」
ざわざわと会場がどよめく、彼の言葉どおりならばほぼ「隠居」というのが想像されるからだ。
「皆さまの想像のとおり、私は今宵で男爵の位を継承することにいたしました。
そして新しき男爵は既に引き継ぎをいたしました・・・さぁ、こちらに。」
ラウルフが呼びかけると一人の男性が前に出てくる。
銀色に輝く腰まである長髪、白に金色の飾り紐がついた服、雪のように白い肌。
それらとは対照的に真っ赤な瞳。
「皆さま、お初にお目にかかります。私が先日男爵の位をいただいた。
レミレオ・システィアルと申します。」
更に会場がどよめいた、皆口々に「そんな名前が聞いたことがない」という
「ご静粛に、システィアル殿は普段は病弱なお方であります。故に満足に夜会なども出られず今日までお会いできずじまいでした。
しかし、本日は貴重な挨拶の機会であるとして・・・・。」
ラウルフの言葉が続く中、ルイスはレミレオと目があった気がした。
そして彼は・・・ルイスを見て微笑んだ。
「・・・して、来る生誕日の前日にシスティアル殿の初の夜会を開くとのことですので、是非皆さまご出席くださいますよう、お願い申し上げます。」
少しのざわつきのあるまま、レミレオは退場してその数時間の後に夜会もお開きになった。
「・・・あれ。」
夜会に付けてきた直したての指輪にキズが入っているのにルイスは気付く
「参ったな、ホントにすぐにでもクリスんとこいかなきゃならなさそうだ。
・・・にしても、あのレミレオってやつなんか何処かで会ったような気が・・・・。」