「錬金術師」
ルイスを取り巻く人々2、モノガタリの中心人物はこれ以降4話まで続きます。
5話から本筋に入る予定。
第二話
貴族の街、マモネットより東にある商人の町「リベット」
その一角にある宝石店「Disgleirio Mwyn」
丁寧に磨かれたショーケースに飾られた一見煌びやかな宝石達は視るものを店に引き込む。
・・・もっとも、その店の店主に気に入られなければ買うこともできないが。
今日もそうとは知らず金に物を言わせただけの貴族が中に入り、追い出された直後だった。
入れ替わりにルイスが中に入る。
「いらっしゃ・・・あ、よかった、ルイスさまぁ。」
黄緑色の髪を後ろで二つ結びにして水色の瞳に可愛らしいフリルのついた薄いピンク色の短いマントに深緑色の上着とスパッツを着た少女、リンジェント・キュロンが涙目ながらにホッとした様子でふええと泣きついてくる。
その様子にルイスは苦笑し。
「よしよし、ったく年頃の女の子困らせるなよなー。店主さん。」
カウンターの奥にいる長身の影に声をかける。
全身黒ずくめの人影は振りかえった。
タキシードのような燕尾服の上から黒い引きずるようなマントは羽織り、つり目で茶色の瞳。吸血鬼を思わせるような風貌の彼が店主のクリス・アーメイトだった。
「知らんな。それよりも、お前が頼んできたのはこれだろう?とりにきたのなら出来ている。」
ことんとカウンターの上に置いたのは藍色に輝く宝石の嵌めこまれた大きな指輪で。
「ありがとな、石が欠けてなくてよかった。」
「周りの銀細工は粉々だったがな。オレじゃなきゃ直せないところだったぞ。」
「店主様の錬金術には頭が上がりませんよーだ。」
宝石店を営むクリスは少しばかり有名な錬金術師でもあった。
なんでも石の声が聞こえるだとかの噂だが本当かどうかは定かではない。
「とにかく大事なものなら大切にしろ。」
「わーってるって。何回も同じこというなよ~。
そういや、リースさんは?」
この店で働くもう一人の女性の姿を探してきょろきょろと見渡す
「あいつは買い出しにいっている・・・・で、用事がないならさっさと帰れ。
騒がしいのは嫌いなんだ。」
「相変わらず冷たいやつぅ・・・ま、目的は果たしたしいっか。今回のお代は、シェン!」
「はい、先日地方を回った際に市場で見つけた原石です。」
カウンターの上にいくつかの大小さまざまな原石を置く。
この店としては基本的に代金を受け取らない、代わりに店主の興味を引くものかあるいは自らの大切なものを対価として払うことができた。
ソレを受け取る受け取らないも店主の気まぐれであったが、そこは割愛する。
「エメラルドにサファイア・・・・こっちはルビーか。
たしかに、対価として受け取った。」
「うっし、じゃあまたひょっとしたら近いうちに来るかもなー!」
「また指輪壊す気か!」
「さぁてね。じゃ、また~。」
ひらひらと手を振ってルイス達は去って行く。
カランカランと店のベルが鳴って閉じられたドアを見てクリスは溜息をついた。
「・・・クリス師匠。」
不安げにリンがクリスを見る。
「仕方ない、あれほど強い魔力の残り香があるならば・・・・今度は壊してくるかもしれんな。」