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re: High School  作者: *kei
第一学年
14/17

この現象を検証してみる act.3

鏡の前に立って、あたしはため息を吐いた。


「元に戻ってる…」


しばらくは何事もなく過ごしていたのに、土曜日の朝、またもや二十代の姿に戻っていた。

二回目とあって、それほど驚きや動揺はなかった。

この異常事態に適用している自分自身を褒めてあげたい。


仕方がないので、あたしは例のごとく急いで出かける準備をし、皆に見つからないよう家を出た。

さて、どうやって時間を潰そう。

朝早くからすることもないので、どうしようと思っていると、日向くんの顔が頭に浮かんだ。

起きているかな?

朝早くから家に押し掛けるのは…と迷ったけど、はっきり言って頼れる存在が日向くんしかいないので、彼の家に向かうことにした。

せっかくだから朝食でも作ってあげようかな。






マンション一階にあるインターホンを押してしばし待つ。

…応答無し。

やっぱりまだ寝ているのかな?

応えがないので帰ろうかなと思ったとき、返事が来た。


「…はい」

「遥です」

一言言うと、すぐに自動ドアが開いた。



玄関前に立ったあたしの姿を見て、日向くんは少し驚いた表情をしたけど、何も言わず部屋に入れてくれた。

「朝ご飯食べた?」

「いや、まだ」

「それじゃ、何か作るよ。キッチン借りてもいい?」

「ああ、かまわない」


キッチンで忙しく動き回っていると、

「…また戻ったのか?」

日向くんが尋ねる。

「うん。今朝起きたらこの姿だった」

「二度目?」

「うん」

彼は少し考え込んで、思い立ったように口を開いた。

「前回も土曜日だったよな」

「そう…だね」

「まだ二度目だから何とも言えないが、もしかして土曜日になると元の姿に戻るんじゃないか?」

「それなら、明日の朝には十代に戻って、更に土曜日が来るとまた元の姿になるってことだよね?」

「そうだな。その姿に気づいたのは今朝何時頃だ?」

「んーっと、起きてすぐだから、6時くらいかな」

「昨日は何時に寝た?」

「いつもと変わらなかったから、多分23時過ぎくらい。その時はまだ変わってなかったよ」

「…なぁ、遥。ちょっと試してみないか?」

「試す?」

「自分でいつ姿が変わるのか把握しておいた方がいいだろ?」

「うん」

「だから、もし明日また元に戻るのであれば、何時に変化するのか、明日まで起きて調べた方がいいと思う」

「それって…徹夜、だよね?もちろん」

「当然だろ」

「寝不足ってお肌の大敵なんだよね…」

「…俺も手伝ってやるから」



日向くんが一日付き合ってくれるって言うから、外出してデートでもしようと思ったんだけど、いつまた姿が変わるか判らなかったので、仕方なく日向くんの家で過ごすことになった。

DVDでもレンタルして映画でも観ようかと言ったんだけど、リビングにあるテレビはネットには繋げてないし、借りるために外に出るとなると本末転倒。

映画ならいくつか持ってるって言うから見せてもらったら、クラシックなものから、80年代、90年代の恋愛映画ばかり。

まさかね、と思いながら、日向くんの趣味なのかと聞いてみたら、母親の友人の趣味らしい。

お母様のお友達のDVDが何故ここにあるのかは突っ込まないことにして、二人で今日は映画三昧決定!


映画って良いよね。

二人っきりでも会話しなくて良いし。

気まずい思いも心配なし!


いや、会話しようよ、会話。

せっかく一緒に居るんだからさ。


「ねぇ、蓮。中学の頃ってどんな子だったの?」

画面を見つめたまま口を開くと、

「…変わらない、今と」

意外にも答えが返って来た。


今と変わらない?

それじゃ、中学の頃から昼寝好きでマイペースだったわけ?


「じゃあ、友達は?蓮は中学も『飛鷹』でしょ?」

「クラスメイトならいる」

変な回答に首を傾げる。

「クラスメイトって括りなら、あたしもかなりいるけど…」

聞くと、日向くんの表情が曇った。

「…話すの、苦手なんだ」


それは何となく感じる。

先週の土曜日も、女の子に囲まれながら困っているふうなのに、嫌がるとか、離して欲しいとか、何かを自分で主張しているようではなかったし…。


「あのさ、あたしにとって、蓮は友達第一号だったんだけど、もしかして蓮にとってもあたしがそうだったりする?」

「……」

返事がないってことは、図星かな。


最近よく話をするようになって判ったんだけど、日向くんは自分から独りになるクセがあるみたい。

教室でも独特の存在感醸し出しているせいか、人気があるのに彼に話し掛ける女の子は実際のところ少ない。

よく話すタイプではないだろうけど、あたしは彼と話をしていると楽しいし、何より彼の雰囲気が好きだ。

傍にいると落ち着くと言うか。

時々生意気なツッコミも入ったり、意外に照れ屋でそこが結構可愛かったりもするんだけど、彼とそんなふうに学校で話している人を見たことがない。

リツが「何を考えているのか判らない」って言っていたけど、話せば真面目に応えてくれるし、意思疎通もしっかりしている。


学校では、皆との間に見えない壁があるように思えて仕方がないのは、何故なんだろう……。


「あのさ、あたしは蓮と友達になれて嬉しいよ」

「え?」

「あたしが本当に困っているこの瞬間、一緒に居てくれるのが凄く嬉しい」


自分でも何となく照れ臭くて、テレビの画面を見つめたままそう伝える。


「友達、だからな…」


日向くんがそう小さく言った言葉も、何だか嬉しそうだったのは、決してあたしの思い込みではないと思う。



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