表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/13

7戦目、かなしい夢は続きません。



『ねえ、瑞希。私ね、旗本君のことが好きなの』

 突然の告白だった。

 中学校に入ってから仲良しの、クラスメートの女の子。

 その時、どうしてわたしにそんなことを言ってくるのか解らなかった。

 その子は、可愛い子だった。

 おしゃれにもいち早く目覚めていて、だけど素直で甘え上手な可愛い子。

 あの時、わたしは何て答えただろう?

『ねえねえ、瑞希!私と旗本君が付き合ったらどうする?』

 別にいいんじゃないの。

 相変わらずへらへらしてて、つかみ所のないあんな奴。

 確かに顔はいい方だと思うし、頭だっていいよね。

 でもそれにマイナスがくるぐらい変な奴じゃない!



 数日後二人が寄り添うように歩いているのを見つけて、わたしの世界はひっくり返った。






「……雨、だ」

 懐かしいような、難しいような夢を見た気がする。

 頭がいたいのは、雨が降っているからかな。

 外の音は静かで、その静かさがわたしを夢へと誘う。

 ……夢の続きは見たくないのに。








『ウソツキ!』

 ある日、あの子はとても怒っていた。

 怒っているのにとても泣き出しそうな顔をしていて、わたしはとても困惑した。

『ど、どうしたの?』

『どうしたの、じゃないわよ!ウソツキ、そうやって馬鹿にして満足なの!?』

 何のことか、さっぱり解らなかった。

 顔に出ていたのか、あの子は苛立って益々睨みつけている。

 可愛かったあの子が、まるで般若みたいだ。

『聡里君のこと、そんなに独り占めしたいの!?』

『聡里?どうして、あいつが……』

 嫌な予感がして、ずっと頭の中で警報がなっているようで痛い。

 どうして、どうしてわたしが関係するの。

 どうしてこんなにも不安なのに、わたしは。


『アンタなんかいなくなっちゃえばいいのに!!』



 ……場所が悪かった。

 あの子はただちょっと肩を押しただけなのに、わたしの後ろは階段だったから。

 本当に世界が反転して、気付いたら病院のベットの上だった。

 痛いけど、これは自業自得だ。

 だってあの時、わたしは……。

 こんな思いは、もう何もかも蓋をしてなかったことにしよう。

 そしたらもう誰も傷つかない……わたしも含めて。



 それなのに、わたしの取り囲む世界も変わった。

 まずなにより聡里が『変わった』

 本心はもっと隠すようにして、どこか壊れたようにテンションが高くなった。

 それを見るたびに、わたしの『罪』が見せ付けられているようで。

 わたしは、聡里に向き合えないし受け入れることもできない。 








「……いやな夢」

 カーテンで覆われている窓の外は真っ暗で、すでに雨も止んでいるみたい。

 その時微かにだけど、こつっと窓を叩く音がした。

 まさか変質者でもいるのだろうか、恐る恐るカーテンを開ける。

「お、気付いてくれた?」

「……聡里」

 まあ、ある意味変質者の聡里が何故かわたしの部屋のベランダにいた。

 そりゃマンション隣だけど、壁を乗り越えていたのか……間違いなく不法侵入なんだけど。

 いつも通りへらへら笑って、今日は特に見ていてイライラする。

 窓を開けて、聡里を睨む。

「何よ」

「いや、突然ハニーに会いたかったのさ!」

 私は全く会いたくなかった。

 だから避けたいたし、高校も聡里とは違うところを受けた。

 聡里には他の進学校から推薦があったし、そっちの方が今のところより数倍もレベルは高い。

 多少言動が可笑しくても、秀才で先生からの期待も一身に受けている聡里がそこを受けないはずがなかった。

 だからわたしは別のところを受けて、結果受かった。

「……何、馬鹿なこと言ってるの?」

 でも、あいつは何故かいた。

 同じ学校の制服を纏って、不遜に笑っていた。

「何しに来たのよ?」

「だから、瑞希に会いに来たんだってば」

「あ、そう。暇だったのね」

 易々とそう簡単に嘘には騙されない。

 だってこいつは、わたしのことを本当はこれぽっちも思っていない。

 聡里がおかしくなって、すぐに気付いた。周りの空気を読んで、したたかに生きていることを。

「生憎だけど私は忙しいの」

「今まで寝てたのに?」

 な、何で知ってるの?

 図星を言い当てられて、一歩後ろに下がる。

 カーテンで締め切っているから中の様子は解るわけがないのに、まさか盗撮か!?

「そりゃ、愛してるハニーのことなら何でも分かりますよ?」

 にやにやと憎たらしく笑う。

 すごくそれが燗に触るけど、何となく言い返す気力がなかった。

 とりあえず盗撮疑惑は、幼馴染という最後の良心を信じよう……。

「で?本当に何の用、なの」

「つき」

 え、と聡里を見ると空を指差していた。

 さらにその先には、まばらに瞬く星と、ただ一つ煌々と光る満月。

 いつの間にかに、雨は上がって晴れていたみたいだ。

「…つ、き?」

「そう、綺麗な月だったから瑞希に教えようと思って」

 ぼんやりと、見上げる。

 聡里も、もう同じように月を見ている。

 どうして、こいつはわたしにそんなことを教えようと思ったのだろうか。

 本心を問おうとして、やっぱり止めた。

 月が綺麗だから、何だかどうでもよくなったのかも。



 ……そういえば、もう頭が痛くなくなっていた。







遅くなってしまい大変申し訳ございません。

久々の更新なのにテンションが上げられず、シリアス調になってしまいました。

そろそろラストに向けて話が進むと思います。

長くなってしまいそうですが、お付き合い頂けますと幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ