石の記憶 家族の絆
家族の絆
「見てくれ真紀!」
休日の昼下がり。
買い物袋を抱えた山下健が、妙に嬉しそうな顔でリビングへ入ってきた。
「……また?」
ソファで雑誌を読んでいた真紀が、半分呆れた声を出す。
健はそんな反応など気にした様子もなく、袋の中から布に包まれたものを取り出した。
ころん、と丸みを帯びた紫色の石。
「アメジストだ」
「へぇ」
和紗はテーブル越しにちらりと見る。
透き通った紫の奥に、細かな結晶がきらきら光っていた。
「なんか……ぶどうみたい」
「お前なぁ。アメジストはな、昔から酒の神様とも関係がある石なんだぞ」
始まった。
真紀と和紗は小さく視線を合わせる。
健は昔からこうだった。
歴史だの神話だの、好きなものになると止まらない。
「ギリシャ神話では――」
「はいはい」
真紀が苦笑混じりにお茶を置く。
和紗も最初は、また父の変な趣味が増えたくらいにしか思わなかった。
けれど。
その石は、いつの間にかリビングの棚へ自然に置かれるようになった。
テレビの横。
観葉植物の近く。
派手ではないが、不思議と部屋には馴染んでいた。
健は時々、その石を嬉しそうに眺めている。
仕事帰りにふと足を止めたり、休日の朝に光へ透かしたり。
和紗にはその楽しさはよく分からない。
けれど、紫色の結晶は前より少し綺麗に見えた。
ある日の夕食後。
健はまたアメジストを眺めながら、何やら古代文明の話を始めていた。
「ほんと好きよねぇ、そういうの」
真紀は呆れたように笑う。
和紗もつられて笑った。
けれどその時、健の横顔は少しだけ楽しそうで。
真紀も和紗も、父を見る目がほんの少しだけ変わった気がした。
アメジストは、相変わらず棚の上で静かに光っていた。
あなたはどの石が気になりましたか?




