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薄っぺらい会話

風の抜ける中庭、色とりどりの花たち、小鳥たちの鳴く声 ———

学園のカフェに併設されたオープンテラスで、ふたりの姿が目を引いていた。


リチャード王子と、その婚約者レティシア、

金と銀、柔らかい笑顔と氷の無表情、

その対比は、乙女ゲームのスチルのようだった。


「今日の紅茶は美味しいね。花の香りがして、君はどうだい?」

王子がティーカップを手に持ち微笑む。


「問題ありません。温度も香りもよく。」

レティシアは無表情で佇む。


「カフェの店員には感謝を伝えねばなりませんね」

そう語るレティシアに王子は少し困ったように笑いかけた。

「先日の薬学の授業の件を聞いたよ」

「えぇ、男子学生2人が薬品を危険扱った件と教師の管理怠慢の件ですね」

「表現が厳しかったと聞いているよ」


「私の発言に問題があったとお考えですか?」

レティシアの表情も瞳にも揺らぎは無い。


「小さな問題が大きな問題になる事があります。

平民の特待生が入学してきてから、浮ついた空気が学園に流れていますから。

この段階で注意を促すのが適切だと考えたのです」

レティシアは淡々と言葉を重ねた。


「──そうか。わかったよ」

「君の言うとおりだよ、レティシア。感謝している」

王子は柔らかく笑って、紅茶を飲んだ。

レティシアも…それに対して何も返答せず紅茶に視線を落とし優雅に飲み始めた。


(……うわ、なんだこれ。きしょ……)

つまり、何が分かったというのか?

これっぽっちも分からない。


王子と悪役令嬢は子供の頃からの婚約者同士と聞いている。

こんな中身のない会話…お互いに踏み込まずに…10年近い付き合いがあるのに?


(本当に好きなの???)


少なくとも、この仮面具合…レティシアが王子を好きなようには全く見えない


(泣いてたよね??)

(こりゃ、ヒロインに取られても文句言えないわ)


だけど、私の頭にはレティシアの涙が浮かんで剝がれなかった。

あの涙を見て、ホンモノの愛だと思って私の胸は高鳴っていた。

例え、普段のレティシアからはそれが欠片も感じられなくても…

あの涙だけは信じられるとそう思ったんだ。


その時、ある考えが私の頭に浮かんだ。

私が2人の間をかき乱せば…どうなるんだろう。

レティシアの涙がホンモノの愛か確かめられるのでは?


王子は攻略対象、レティシアは悪役令嬢、

どうせ攻略ルートはあるのだし。

なら「乙女ゲーム」に相応しい展開を見せて貰えるのだろう。


…めんどくさい…とても、凄く、めんどくさいけど…

私はどうしても”それ”が見てみたい


打算や下心、世間体…そして他の女への嫉妬、

愛とか恋とか信頼とか幻想なんだ。

自分の求める理想像から相手が外れた時、勝手に人は裏切られたと牙を剥く。


変わらない気持ち…ホンモノの愛…そんなの現実世界にはありはしない。

でも、

ここは乙女ゲーム「トゥルー・ピュア・ガーデン」夢と青春の物語………


なら想いを壊そうとしても、私が王子を奪っても、

ホンモノならばレティシアの気持ちは壊れないはず


”それ”を私に見せて!!


「王子さま、レティシア様」

「少し、お話よろしいですか?」

私はさっそく2人の間に割って入った。


「アリシア嬢?どうしたんだい?」

「…………」

王子が穏やかに、レティシアは無反応に対応した。


まずは…乙女ゲームのテンプレで王子と距離をつめて試してみよう。

”公平で優しい”王子ならそれで十分そうだし…


「王子様にお願いがあるんです」

私はとびきりの笑顔の仮面をつけて微笑んだ。

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