ふたりの旅
パチ、パチ、、、
光が見える。ここはどこだろう。木の壁が見える。ここって、、、僕の家?
ポト、ポト、、、
水の滴る音がする。、、、いや、水じゃない。これは、赤い。
シャキッ
剣を抜く音。大きな何か、、、人が、迫ってくる。直感的に、僕はこれから死ぬんだと思った。
「、、、!」
声がする。よく耳に馴染んだ、僕の大好きな声。あれ、でもここにあの娘がいるはずはない。とうとう幻聴までするようになっちゃったのかな。
「、、、ル!セル!早く!」
嬉しいなあ。最期まで君の声を聞きながら死ねるなんて。
「セル!起きなさい!」
バチン!
派手な音と衝撃と共に、僕は目が覚めた。
「そんなに叩かなくてもいいじゃんビア〜」
ブランケットの下で足を遊ばせた。
「良くない!ほら、早く支度して!」
僕がぐずっている間にも、ビアはてきぱきと荷物をまとめていく。『女の子は色々必要なのよ』って僕の倍ぐらいの荷物を持ってるのに、いつも彼女の方が支度は早い。
「今やるから〜」
あくびを噛みながら僕はやっと動き出した。
A.W.88年、ユーラシア騎士団団長のある言葉によって、世界は大きく揺れた。
『我々は、長年、多くの人民から要望を受けていた東の果ての国、ニホンの探索へ赴きました。結論からいえば、我らが住むに値する場所ではありません。非常に発展の遅れた国であり、仮にユーラシア国民が住める場所にしようとするならば、少なくとも50年はかかるでしょう。しかし、ニホン国王の申すところには、“ギダイボク”なる木があり、その木の実を食べた者は必ず幸せになるという逸話があるとのことです。』
その報告中継を見た多くの国民が、“ギダイボク”を見つける為ニホンへの旅にでた。ユーラシアは、二度の大戦を経て軍事力、技術力は大きく成長したものの、多大な人的被害を出し、環境汚染も進み、国の成長に国民がついていけなくなった。“ギダイボク”は、もはや絶滅の路を辿るのみと思われていたユーラシア民族にとっての、最後の希望だったと言えるだろう。
「今日はどこまで行けるかな?」
「うーん、、、。今日中には山脈を抜けたいわね。そうすればまたお金稼いで列車も使えるし。ちょっとキツいけど頑張りましょ!」
地図を見ながらビアが答える。
「早くニホンに行きたいなあ、、、」
「そうね。私も。早くみんなを幸せにしたいわ」
「みんな、、、そうだよね。よーっし!僕今日は頑張るよ!」
ビアの心は綺麗。だから僕はビアが好き。絶対に僕が、、、
ビアを幸せにする英雄になるんだ。