第13章 揺れの輪郭
第二幕
【少女と歩む過去の足音】
第13章
『揺れの輪郭』
どうぞ、お楽しみください
予約投稿2026/1/9 16:00
町に朝が来た、ような気がした。
空は少し明るくなっていて、
昨日までよりも、色の境目がはっきりしている。
それでも太陽は見えない。
影の向きも、相変わらず定まらなかった。
縁側に座っていると、
家の中から、微かな物音がした。
「……起きてる?」
ゆうとが声をかけると、
少し間を置いて、障子が開く。
「起きてるよ」
おとはは、いつもより静かな声だった。
眠そう、というよりは、
夢の続きをまだ引きずっているみたいな顔。
「変な夢、見た?」
そう聞くと、おとはは少し考えてから首を振る。
「夢かどうか、分からない」
「どんな?」
「音がね」
それだけ言って、言葉を探す。
「鳴った気がしたんだけど……
起きたら、もう思い出せなくて」
ゆうとは、何も言えなかった。
風鈴の音、とは言わない。
言ってしまえば、それが“確定”してしまう気がした。
「でも、嫌な感じじゃなかった」
おとははそう付け足して、
ゆっくりと縁側に腰を下ろす。
二人の間に、少しだけ距離ができる。
触れられない距離じゃない。
でも、昨日よりは、ほんの少し遠い。
町の音が、戻り始めていた。
遠くで、何かが転がる音。
風に擦れる葉の気配。
それらは確かに“生活の音”なのに、
どこか作り物みたいにも聞こえる。
「……この町さ」
おとはが、不意に言った。
「前より、形がはっきりしてきてない?」
「どういう意味?」
「家とか、道とか。
ちゃんと“ある”感じがする」
言われてみれば、そんな気もした。
昨日まで、見えているのに、
触れたら消えそうだったものが。
今は、消える気配を見せない。
「安定してきた、ってこと?」
「ううん」
即答だった。
「たぶん、違う」
おとはは、膝の上で指を絡める。
「揺れてる。でも……
前より、大きく揺れてる」
それは、安心じゃない。
けれど、後退でもない。
進んでいる、という感覚。
「ねえ、ゆうと」
名前を呼ばれて、顔を向ける。
「もしさ」
少しだけ、間が空く。
「この町が、変わっていくとして」
言葉を選びながら、続ける。
「それでも、一緒に来てくれる?」
質問の形をしているのに、
答えはもう決まっているみたいだった。
「……来るよ」
迷いはなかった。
「理由、聞かないの?」
「聞かなくても分かる」
そう言うと、おとはは少し困ったように笑う。
「ずるいな」
「今さらだろ」
二人の間の距離が、少しだけ縮まる。
町は、まだ静かだった。
けれどその静けさは、
“何も起きていない”静けさじゃない。
何かが、動き始めている。
音になる前の、
かすかな振動だけが、残っている。
この場面、少しわかりにくい。
ここ、少し変じゃない?
ってところありましたら、ぜひ、コメントお願いいたします。
いいなと思ったら☆評価もいただけたら幸いです。
モチベがぐぐっと上がるので




