プロローグ 風鈴の音に導かれ
久々の投稿
リハビリと方向の模索がてらの作品
多分、続く可能性もあり
第一幕
【風鈴導く再会の音】
プロローグ
『風鈴の音に導かれ』
どうぞ、お楽しみください
仕事終わり、いつものように会社からカバンを持ち、いつものように人ごみに紛れ、帰路につく。
そんな日常の一幕のなかでふと思った。
ーー風の声が聞こえなくなってもうどれくらい経つだろうか……。
コンクリートの隙間から伸びる草たちのざわめきも、
誰かがはしゃぐ声も、車の騒音も……
どれもただの”無機質なノイズ”にしか聞こえない。
いつから、こんなふうに音のない世界で生きるようになってしまったのか。
仕事は順調だ、残業もそれなりにあるが、それでもやりがいはある。
上司や同僚とも特別仲がいいというわけではないが、うまくやれていると思う。
こちらでできた友人も、いないわけじゃない。
けれどーーなぜか心のどこかが空白だった。
毎日が、砂のように指の隙間から零れ落ちていく、そんな感覚。
確かなものは、何も残っていない。
***************
ある朝、ふと目が覚めたとき。
何の前触れもなく、ただふと
私は思った。
ーー風、鳴ってたな。
夢の中で聞こえた。
風に揺れるあの、軽やかで、切なくて懐かしい
……風鈴の音。
それは、遠い昔。
まだ私が子供だった頃、少しの間だけ過ごしたある町で聞いた音だった。
……けれど、町の名前は思い出せない。
地図にも記録も残っていない。
けれど、確かに風鈴が揺れていた記憶だけは残っている。
その音を覚えているのは、私がそこで何かを失ってしまったからだろうか……
それとも、私の中で忘れてはいけない、大切なものが、今もどこかに残っているからだろうか……
ただ、あれは本当に現実だったのだろうか。
それすら確かめようがない。
***************
気が付けば私はカバンを手に、駅へと向かっていた。
計画なんて何もなかった。
定期に残っている運賃だけ確認して、
ただ、電車に乗っていた。
「次は......停車駅、......」
アナウンスは途中でかすれて、聞き取れなかった。
電車は緩やかに停まり、
私は、何かに導かれるように、ホームへ降り立つ。
無人駅だった。
駅名は古びた看板にかすれていて、読めない。
電車が走り去る。
その音が遠ざかっていき、世界が静寂に包まれる。
降りたった町はとても静かだった。
そこは、誰もいない商店街。
空き家の並ぶ通り。
町の空気は、どこか湿っぽく
まるで時間が停まっているような気がした。
音がなくなったせいか、自身の息を呑む音、心音でさえ響いているようだった。
……そして、
ーー風鈴の音が、聞こえた。
あぁ……あぁ、ここだ。
あの頃、私がほんの少しだけ過ごした町。
名も知らぬ、けれど確かに存在していた、記憶の町。
人の姿は見えず、時間の感覚はどこかぼやけていて。
現実とも、夢ともつかない、けれど「懐かしい」とだけは思える場所。
ふと口からこぼれていた。
「……風鈴町。」
それは、あの頃の私が、心の中で勝手に呼んでいたその名前だった。
町の名前も、場所もわからず、でもその音だけが記憶に残っていて。
だから私は、そう呼んでいた。
風鈴の町
誰にも知られず、
誰かの記憶の奥底にだけ、そっと息づく町。
その町に今、私はいる。
ーーあの風鈴の音に導かれるように
この場面、少しわかりにくい。
ここ、少し変じゃない?
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モチベがぐぐっと上がるので