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第八話 噂は空気と同じ


放課後。


俺は――如月に呼び出され、物理講義室に足を運んだ。




「……お待たせ」


「お、やっと来たねー」


如月が、いたずらっぽく笑う。





「ま、呼んだのには理由があるんだけどね。前に“放課後は物理講義室に集まる”って言ったの、覚えてる?」


「言ってたっけ……その間にいろいろありすぎて、すっかり忘れてたわ」


「でしょー? 私もうっかり忘れてたし。

 本当は、この集まりの趣旨について話したかったんだけど……」




そう言って、如月の表情が少し真剣になる。


「その前に、颯くん。あなたには、先に解決すべき問題がある。分かるよね?」



「……あの出来事の真相、か」


「そう。噂じゃ、もう三年生にも話が広まってるって。

 このままだと、先生たちも動き出して、取り返しのつかないことになるかもしれない」



「冗談だろ……? 俺、冤罪なのに……早く手を打たないと、」


「辛いのは分かるよ。でも、今は我慢するしかない。

 無実を証明できる証拠さえあれば、」




「……あ、そういえば――」


ふと思い出す。


「二年の海先輩が、何か知っていた気が、」


「その人、誰?」


「今日の昼、ちょっと色々あって……仲良くなったんだ。って、あっ……」


「……ふぅん?」


如月がじとっと俺を見つめてくる。

笑ってるのに、目が笑ってない。な、なんか怖いんだけど。 



「私との約束、破って――女の先輩と会ってたんだ?」


「いや、それは違うんだって! 偶然で、ほら、別にそういうのじゃ――」


「ふーん?」


やばい。完全に地雷踏んだ。



「で……その海先輩が言ってた。『三井は裏がある』……って」



如月の表情が一変する。目が鋭くなる。




「三井……確かに、あの事件のあとから様子がおかしいと思ってた。

 よくスマホをいじってるし、誰かとやたら連絡取ってるみたいだったし……




…この件、もう少し調べる必要がありそうだね」


教室に、静か緊張が走る。




そのとき、スマホが震えた。

通知を見ると――**『海先輩』**からのメッセージだった。


『昼のことなんだけどやっと確証をつかめた!今夜、少し時間ある?』


「……海先輩からだ。今日話した件について話したいって」



「へぇ、行動が早いね。――で、どうするの? 行く?」


「もちろん行くさ。情報は一つでも多い方がいい。

 それに、あの先輩……ちょっと気になるところもあるしな」


「ふーん……?」



如月がまたしても意味深な笑みを浮かべる。



「で、何時にどこって?」


「んー……駅前のカフェって言ってる。夜7時」


「分かった。じゃあ、私の方でも調べておく。」


「ありがとう、心強い」


「……お礼は、また今度ね?」


「え、何を?」


「ふふ。お楽しみに」


笑顔が怖いです如月さん。



俺は先輩に言われた通りに待ち合わせのカフェに着いた。


「あ!はやてくん!こっちこっち」



「話は掴めましたか?」




「うん、やっぱり、おかしいと思ったんだよね。あの事件」


海先輩は、そう言って俺にスマホの画面を見せてきた。


「これは三井のSNS裏アカ。」


そこには事件の直後に投稿された、こんな文があった。


《やっぱり男って、怖いね。》

《私の下着……なんであんなところに……怖い》

《やっぱり彼、怪しかったんだよね……》


「……わざとだな。世間に“私は被害者です”って印象付けるための演出だ」


「そう。でも決定打はそこじゃない」


海先輩がもう一枚、画像を表示する。


「これは私が見つけた三井と三年の男子先輩のやり取り。盗撮した動画なんだけど、音声もある」


そこには、誰もいない資料室で話す三井の声。


「これで完璧よ。颯くんがやったってことにすれば、全部済むでしょ?」

「……大丈夫なのか?」

「平気。あの豚野郎友達いないし、誰も信じないって笑」





「…………、」


手から血が出るくらい拳を握りしめた。


俺は、最初から狙われてた。ただ普通に生きていただけなのに


最初から“犯人に仕立て上げる”ための自作自演の罠だった。


「……ありがとう、海先輩がいなかったら、俺……」


「礼なんていい。私は事実が知りたかっただけ」



  海先輩はどこか不安そうな目をしていた。








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