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第二話 出会いと復讐


「――絶対に死なせない? ……なんだこれ」


突然スマホに届いた謎のメッセージに、俺は思わず眉をひそめた。


その直後、続けざまにもう一通。




「??さん、一度会いましょう。話はそれから。

日時は明日の午後4時。場所はふれあい公園で」




その場所を見た瞬間、俺は背筋に冷たいものが走るのを感じた。

まさか、俺のよく知ってる――馴染みの公園の名前がそこにあったから。




(どうせ……もうすぐ終わる命だし、どうでもいいか)




疑問も不安も放り投げて、俺はそのまま布団に潜り込んだ。







腹がグゥ、と鳴った音で目が覚めた。

時計を見ると午後2時を回っていた。


飯をかき込み、適当に着替えて準備を済ませると、あっという間に時刻は4時目前。




そして、俺は公園のベンチで座っていた。既に、待ち合わせ時刻を20分過ぎて。




「……結局、騙されたオチね。ほらな、俺ってこういう扱い」


そんな自嘲を呟いた、その時だった。




「――ごめんっ、待たせ!」




透き通った、だけどどこか懐かしさすら感じさせる声が、後ろから聞こえた。



振り返ると、思わず手足に緊張が走った。




「……君、確か如月さん、だよね?」


「えっ、うん! そうだよ、知ってくれてたんだね!」





如月(きさらぎ) 紫苑(しおん)俺のクラスメイトの“陽キャ女子グループ”の一人。俺は陽キャが特に嫌いだが如月さんにだけ嫌悪感が何故か抱かない。



感じる違和感、



彼女のことを俺が覚えているのには、理由がある。





入学して間もない頃。友達も、グループも、何もなかった俺が教室の窓際でボーッとしていたとき――


「ねえ、君。さっきから窓ばっか見てるけど、なんかあるの?」


彼女は、真っ先に俺に声をかけてきた唯一の人間だった。

だけどそのとき俺は、話しかけられるなんて思いもしなくて、ただ黙って無視した。



その彼女が、今、目の前にいる。


しかも――


(え、如月さん……めっちゃ美人じゃん)


身長は女子の平均くらいだけど、髪は艶があって、肌も綺麗で、顔立ちは完璧に整っている。

さらに、男子の話題でよく聞いた……その、まあ、胸もかなり……


そりゃ印象に残るってもんだ。


「そういえば、あのとき無視したでしょ~?」


「ご、ごめん……そ、それで、用事って何かな?」


思わず声がうわずる。正直、あの事件以来、クラスの人間と話すこと自体がキツい。


 

この場からも、すぐにでも逃げ出したい――



「用事がないなら、帰るね」




「――待って!」




不意に手を掴まれた。俺より細いはずの彼女の手が、強い力で俺を引き止める。




「昨日のこと……颯くん、やってないよね?」


「……え?」



「ずっと見てたんだよ。三井さんが他の女子と、こそこそ何か話してたの」


「……まあ、アイツらが裏でなんかやってたのは知ってるけど。

でも、俺がアイツらに何したって言うんだよ!」


「それも含めて、今日呼び出したんだ。……颯くんは、悔しくないの?」


「悔しいに決まってる! でも、俺にはどうしようもないんだよ。

顔は良くないし、勉強できないし、運動もダメ。アイツらに勝てるところなんて、何一つないんだよ!」


「でもそれって……逆に言えば、一個ずつ改善していけば、全部逆転できるってことじゃない?」


「は? なに言ってんだよ。じゃあ、顔は整形でもしろってのか? ……笑っちゃうだろ」


なんで俺はこんなにもムキになっているのか、馬鹿らしくなってきた。



「――颯くん、自分に気づいてないだけだよ」


「……は?」


「実は身長は175cm以上あるし、メガネ外せば目はぱっちり二重。肌も綺麗だし、髪もさらさらでクセがない。

それに体育、見てたけど……運動ができないっていうより、体力がついてきてないだけ。ポテンシャルはあるんだよ」



「嘘だろ……お前に言われても、信じられないって」




「……仕方ないなぁ。ほんとは見せるつもりなかったけど……これ、中学時代の私」



スマホに映し出された写真を見た瞬間、俺は絶句した。



「え、マジか……俺と瓜二つじゃん」



「一番言われたくなかったけど、まあ、自分でも思ってたしね。

でもさ、人生で一度くらい、本気で何かに挑戦してもよくない?」



君なら、やればできるって。私は、知ってるから。




その言葉が、心にじわりと染みていく。



たしかに、人生で本気になったことなんて、一度もなかった。

だけど――それを言葉にするのが怖い。過去のコンプレックスや視線の痛みが、言葉を詰まらせる。




「――そこで、君に提案!」



如月は勢いよく指を突き出して言った。




「私が、颯くんの先生であり、パートナーになる! やることは私が全部決めるから、最初はそれをこなすだけ!

説明は後回し! めんどくさいから! ――そして、何よりの証拠がこの私! どこをどう見ても完璧でしょ?」


俺は、冷たい視線を向ける。




「……まあ笑、そんなことより大事なのは一つ。

颯くん――復讐、したくない? 小中で奪われた青春、取り戻したくない?

バカにしてきた奴らに、“俺は変わった”って見せつけて……言ってやるの。

『お前らのおかげで、ここまで強くなれた』ってさ。

下にいた自分が、上から見下す側になった時の気持ち……くぅ~~言ってみたいねぇ、そういうセリフ」










「……たい」




「ん?」




「……したい。復讐、したい!」





昨日まで、死のうとしていた自分が情けない。

けれど、今は――


怒りか、悲しみか、喜びか、自分でもわからない感情が渦巻いている。


だけど――ただ一つ。


アイツらが、絶望する姿を想像したときだけは――

胸が高鳴る。血が騒ぐ。アドレナリンが、一気に駆け巡る。




「そうだ。見返してやろう。


      そして必ず、復讐しよう」












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