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第4話 魂装と魂操

 教会を出たあと、二人は並んで坂道を下りていった。


 空は淡いオレンジ色に染まりはじめていて、街並みに長い影を落としていた。吹き抜ける風が、昼間の熱気を少しずつ攫っていく。


 しばらく無言で歩いていたリザが、ふっと笑って蓮を見た。


 「チート級の魂装かと思ったけどさ……まさか“人”だったとはねー」


 その言い方は、驚きよりもどこか同情に近かった。


 「いや、なんか、ごめん……?」


 「いや、謝ることじゃないよ。ただ、驚いたんだ。だって“人間”って、この世界の生き物の中じゃかなり弱い方だからさ」


 「確かに、人間って狼みたいに牙や爪もなければ、筋力だってたいしたことは無いか…」

 (チワワよりはマシだと思うんだけど……)


 「にしても、不思議だな……あのときの攻撃。あの“破裂音”みたいなやつ、あれ、どうなってるの?」


 ベンチの並ぶ広場に差しかかったところで、リザが足を止めた。蓮も同じように立ち止まる。


 「んー……たぶん、兵隊さんの魂が銃の形になって出てきた感じ?だった気が……まぁそんな感じ」


 「”ジュウの形”って何なの?」


 「ん?だから出てきた銃をとっさに構えて、撃ったから先端から“パン”って音が鳴って……」


 「”ジュウ”って武器か何か?」


 「う…うん…そんなところ」(この世界にはまだ銃がないのか……)


 リザは目を丸くした。”ジュウ”がどんな武器か分からないが、魂装で武器を具現化できるなんて、聞いたことがなかったからだ。


 「普通、魂装って爪とか牙みたいな動物の一部を形にして戦うんだよ。動物の本能とか武器的な部位を具現化するんだけど……人間にそんなのないじゃん。だから、弱いって思ってたんだけど……あんた、武器出してるよね、それ」


 「もしかして、俺もチワワーズみたいに、何人も人間を出せるようになったりして?」


 蓮が笑って言うと、リザは「それはちょっと違うな」と首を振った。


 「チワワーズは“魂操”。魂装から派生した技のひとつ。訓練しないと無理だよ」


 「……魂操? ややこし……」


 「魂装はね、呼び寄せた魂の力を自分の体に宿して戦うもの。でも魂操は、その中でも特に相性のいい魂を、体の外に“独立して”動かすように訓練していく技術なの」


 「……なるほど……わからん」


 蓮が頭をかくと、リザは小さく笑って右手を前に出した。


 「じゃ、見せるよ。あたしの魂装」


 そう言うと、右手の甲からスッと何かが伸びてきた。透明感のある、光を帯びたナイフのような爪。全部で四本、まるで猛禽の鉤爪のようだった。


 「これが、あたしの魂装。爪に見えるけど、実はこれ犬の牙なんだよね。きっと犬の魂と私の意思がこの形で表れているんだと思う。」


 「チワワーズたちは?」


 「何度も魂装を使っていくうちに、その中から波長の合う魂を選んで、体の外に出して動かせるようにしたんだよ。けっこう時間かかったけどね」


 リザはしばらく無言になって、少し空を見上げた。


 「このチワワーズたちも……自然界で魔力を得てたら、今ごろモンスターになってたのかもね……」


 その言葉は、どこか感傷的だった。


 「モンスターがどうして生まれるかって話、今日初めて聞いた。学校でも、教えてもらえなかったし……」


 「もしかしたら、あまり公表されてない情報なのかもな。司祭様が話してくれたのは、俺たちを守るためだったんじゃないかって、そう思う」


 蓮が真剣な表情で言うと、リザは小さくうなずいた。


 「そうね、セリオ司祭は信用していいと思う」


 食事を終えた二人は、ゴミをまとめて立ち上がる。夕暮れの街は少しずつ夜の顔に変わっていった。


 「俺も、仕事探さないと……」


 宿へ向かう帰り道、蓮がぽつりとつぶやいた。


 「食事代を出してもらって、宿も泊めてもらって……さすがに、申し訳ないよ」


 リザは立ち止まって、蓮の顔をじっと見た。


 「……命、助けられたから。気にしなくていいよ」


 少し照れくさそうに顔をそらしながら、リザは続けた。


 「特に仕事、決めてないんだったら……その、冒険者がいいと思うよ。ちょうど、ソロでやるのも限界かなーって思ってたところだし……しょうがないから、あたしがパーティー組んであげるわよ」


その口ぶりは「仕方なく」と言っているが、どこか嬉しそうにも見えた。


 「……ありがとう。リザ。よろしくな」


 蓮のその一言に、リザはそっぽを向いたまま「ええ」と小さく返した。

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(人´ω`*)♡ ★★★☆☆

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