金田悠矢
退屈な世界史の授業が始まり、25分が経つ。
この25分間、注意を引く方法を色々と考えていた。なんだかんだで、やはり無難なものが一番だろう。
とりあえず、教科書を落としてみる。
「パサン」
静かな教室に、音を発信した。
音が小さいせいなのか、とてもみんなの注目を集めたとは言えない。
「どうしよう?」内心で焦る。
何食わぬ顔で、落とした教科書を拾いながら、思う。出来れば二度と故意に教科書を落としたくないと。
そんなことを思いながら、教科書を拾い上げたとき、
「ガッシャーン、カラカラカラカラ。」
さっきより、激しい音が発信された。発信源は、再びここだ。
どうやら、教科書を拾い上げたとき、机の上にあった筆箱を落としてしまったらしい。
みんなが、こっちを向いた。みんなの注目を集めたと言えるだろう。
池田広木の方を見る。池田広木の隣の席の佐藤秋文もこっちを向いている。
池田広木が、佐藤秋文の机に何枚かの紙を素早く置くのが目に入った。置いた後に池田広木がオーケーサインをしながら、こっちに笑いかけてきた。思わず俺も笑ってしまう。
にやけた顔のまま筆箱と飛び出てしまったいくつかのペンを拾いあげ、そして、寝た。